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名なしの森

名なしの森

主人公の章は、中学二年生にして倒錯した考え方が身に付き、生きにくさを感じていた。
そんな章は、同じ塾に通う一つ上の先輩・宮沢に憧れ、話したいとずっと思っていた。
宮沢は成績優秀だが友人を作らず、医者の息子であり180cm以上ある体を持て余していたが、意外にも読書家であることを章は知り、話してみたいと感じたからだ。

夏休みに宮沢と汽車で一緒になり、話す機会が訪れる。
「今度、お前を”おれたちの村”へ連れていってやる」と宮沢は言う。
そこは少年少女が独自の国家を形成した、秘密結社のような集団で…

二人の関係性が危うく、とても素晴らしいです…!!

変身譜

貞子は、今やシャンソン評論家として憧れの的である千晶の顧問的存在である。
最近、千晶に纏わりつく一人の老女がおり、千晶から「私の代わりに、辞めるように説得してほしい」と貞子は頼まれる。
貞子は女と二人で話をしてみると、女は「千晶のせいで女に目覚めてしまった」と言って…
レズビアンのお話です。

干からびた犯罪

四十年前に亡くなった、かつての恋人の死の真相を探しに、多佳子は田端を訪れる。
そこで旧い友人の好子と、その仲間に偶然出会い、お茶会に誘われる。

実はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を模した奇妙なお茶会で、仲間の一人は霊媒師であるという。
霊媒師はかつての多佳子の恋人の霊をおろし、多佳子の名を呼び、死の真相を語り始める…

盲目の薔薇

独り暮らしの女の家には、たくさんの薔薇が植えられている。
だが、今年は蕾が開かない。

ある日女の家にやって来た研ぎ屋の青年は、園芸が専門だというので、薔薇を診てもらうことに。
女は薔薇の心配もしていたが、青年を何とか引き止めたいと、今後も来て欲しいと頼む。
青年との交わりの中で、女は自分がなぜ独りでここにいるかを思い出す。

青年が…めちゃくちゃいいです…

一粒の葡萄もし…

食べるとセックスに関することだけ、他人の感情が読み取れる葡萄。
それを食べた女性二人の巡りあわせのお話。

花火闇

真奈は仕事仲間の澄人と、架空の男女を造り遊んでいた。
真奈にはまた、『甘美な姉』と自分に熱い視線を送る叔父の存在があった…

関係性がもつれあう、お耽美なお話です。レズ描写あり。

あるふぁべてぃっく

資産家で年を取ってきた伯母が、親族を集める。
親族たちは、遺産相続についてそれぞれ思惑を持っており…

男色家の朝の歌

主人公は、自分の意思と関係なく体や時間を行ったり来たりしてしまう、特殊な能力を持っている。
長野さんの「あめふらし」的な雰囲気です。

男色家の切ない感情が、読んでいて悲しかったです…

孤島の鬼

「諸戸道雄がヤバイ」という方々を多く見ていたので、いつかは読まなきゃと思っておりました。
確かにこれは…すごい…
でも想像よりいい人で安心?しました。

犯人が怖すぎて途中泣きそうになりましたが、推理小説としても大変面白かったです。

でもやっぱり、諸戸さんには幸せになってほしかったですね。
主人公も少しは受け入れてくれればいいのに、思わせぶりな感じだから…
正直、諸戸のあの不幸な感じが、乱歩先生の好みなのかな?とも…

諸戸にほくろがあったり、途中で突然和服を着ているのとかも、必要ないのに差し込まれているので、ありがとうございますという感じですね。当時の女性がたも好きだったのかな…

少年ミステリー倶楽部

●村山槐多「二少年図」※絵画:乱歩が所有していたとされる、二人の少年を描いた絵。
●江戸川乱歩「槐多『二少年図』」:乱歩先生が槐多最高!!と褒め称える。
●森村誠一「魔少年」:母親視点で書かれる、小4息子の同級生(ガキ大将)が恐ろしいって話。この恐ろしい子が「魔少年」かと思いきや…
●南條範夫「誰かが――父を」:主人公の少年は、実父が死んだのは継父のせいだと考え、復讐を企てるが…。ラストまで読むと、やるせなさで悶え苦しみます。
●戸板康二「美少年の死」:歌舞伎俳優・中村雅楽シリーズの一作のようです。歌舞伎の美少年子役が何者かに殺されてしまうのですが、その殺人動機が切なくて…
●太田忠司「奇妙な等式」:中学生探偵・狩野俊介シリーズの一作のようです。俊介は孤児で、妻を亡くした探偵・野上が親代わり。このシリーズも気になります…
●大下宇陀児「凧」:神童と呼ばれた天才少年が、実父を殺した犯人を推理する。トリックも驚きだけど、切ない…
●福永武彦「サンタクロースの贈物」:箸休め的なタイミングで福永武彦…!!少し怖いけど、可愛いお話です。
●日影丈吉「かむなぎうた」:実母を亡くし田舎暮らしをする少年と、周りからガキ大将的に恐れられている少年の話。ガキ大将も母親を亡くしており、二人は仲良くしているが…
●日下圭介「鶯を呼ぶ少年」:鶯を呼ぶことができる不思議な少年。その母親は、夫と別れ違う男と体の関係を持っており…(色々込み合っているので、説明が難しいです…泣)
●伴野朗「少年の証言」:銀行のお金が輸送中に盗まれた。自供したのは、花言葉が好きな17歳の少年。犯行動機は金が欲しかったとされている。記者は、その少年にもっと深い動機があるとみて調査を進めると、交友関係や異性関係に問題があったようで…
●土屋隆夫「七歳の告白」:7歳の少年が、警察に事情聴取されているという体裁のお話。実母を亡くして悲しいと言う話から、だんだん事件の全容が分かっていき、こちらもまた切ない。
●仁木悦子「誘拐者たち」:友達のバイクを傷付けてしまい、弁償することになった少年2人。お金持ちのお婆さんのネコを誘拐して、身代金をもらおうとすると…

殺人行者

先日読んだ「悪魔の舌」がいたく刺さって、青空文庫で読めるもう一作を読みました。
こちらの方が長めで、「悪魔の舌」同様に危険だけど耽美な文章。
怖いと思いながらも引き込まれ、一気に読んでしまいました。

主人公(おそらく村山槐多本人?)が、周りから狂人と呼ばれている男に会うところから始まります。
男がなぜ狂人と言われるようになったのかが明かされていきます。

この狂人と呼ばれている男、昔は美少年だったとのこと。
そして、不良と呼ばれている先輩と恋仲で、兄弟の契りを交わしている…!!
この先輩、美少年以外には恐れられている「ヤバイ奴」なんですが、美少年には優しかったようです。
でも、催眠術にハマってしまい美少年によくかけていて、美少年が眠っている間何していたのか不明。そんなの決まっているじゃない(膨れ上がる妄想)
でもこの先輩、学校を卒業するときには美少年と別れるのが辛くて泣いてしまい、本気で好きだったんだと思うと切ないです。

いろいろあって先輩と再会することになるのですが、数年ぶりに会った先輩は人を殺すことに喜びを覚える、殺人行者になっていました―――…

「霊能ゲーム」など、『ヤバイほど相思相愛』『危険だけど逃げられない』感じが好きな人にオススメ…すごく怖いし悲しいけど…

村山槐多さんのことが完全に好きになってしまったので、他の作品も読みたいです…!!

霊能ゲーム

学生時代にジャケット買いし、衝撃を受けました。
ガキ大将的な少年が、主人公くんをいじめる奴を次々と呪いで消していく…という…

後半はそのように物騒ですが、途中までは夏休みに別荘に二人で泊まったりして、ちゃんと蜜月シーンもありますよ!!

給仕の室-日本近代プレBL短篇選

Twitterで見てずっと読みたいなと狙っていた本です。
本当に全作品よくって、読むのに体力が要りました(1つ読むごとにクソデカため息&床突っ伏しを余儀なくされるため)
個人的に特に好きなものを…

Ⅰ部は「若衆歌舞伎」からの「執念」が好きです。
「執念」は「若衆歌舞伎」の作者(原稿を偽装して実刑判決受けてるとのこと)をモデルにしていて、順番に読むと2作品の繋がりが分かります。
「執念」の主人公は、「若衆歌舞伎」の作者が危ない人だと分かってるのに、離れられない美少年という設定で、なんて切ない話なんでしょう…好きすぎる。
終わり方も切ないのですが、最後の一文で完全に落とされてのたうち回りました。

Ⅱ部は「過去世」ですかね…
母親不在の特殊な家族(父・兄・弟)で、衝撃のラストです。弟が女嫌いのお耽美美少年で、父や兄とのやり取りが妖艶に描かれています。
たぶん、長野さん作品の初期お耽美兄弟(夜啼く~、夏至南風、魚たちの離宮とか)が好きな人は絶対好きなんじゃないかな…と勝手に思います(私が好きなため)
女性作者というのも影響しているかもしれません。

また、「泥棒と若殿」は読みながら泣いてしまいました。身分差と人情とで胸がいっぱいになり…最後にふさわしい作品でした。

【個人的印象メモ】
Ⅰ部:衆道、小姓・稚児、男色、少年愛など
秋田雨雀「同性の恋」:病死した美しい友人との思い出を追想する。友人が主人公を傍に置くのは理由があって…
日下シン「給仕の室」:美男子純太への、主人公の止められない愛情と劣情
倉田啓明「若衆歌舞伎」:美少年2人が美を探求
山崎俊夫「執念」:上記「若衆歌舞伎」作者モデル。暴力と嘘から逃れられない主人公。
木下杢太郎「船室の夜」:田舎から上京した主人公の、美少年への恋と身の破滅(不良と仲良くなってしまう)
室生犀星「お小姓児太郎」+「美小童」:お小姓児太郎と、それに仕える髪結少年+美しい童が忘れられない主人公
綿貫六輔「小松林」:お爺さんを愛する軍人、お爺さんの愛人との関係でも悩む
Ⅱ部:友愛
国木田独歩「画の悲しみ」:自分より絵が上手い美少年への嫉妬と友情
田中貢太郎「野薔薇」:敵国同士のおじいさんと青年の友情
小川未明「ある神主の話」:漁師の男と、突然現れた小柄な男との友情。実は小柄な男は人外で…
岡本かの子「過去世」:女性の作者が友人から過去の話を聞くという語り口。昔、母親のいない家に預けられていた時の話。父:癇癪持ちで女嫌い、弟を可愛がりずっと傍に置いている・兄:父と弟から使用人に近い扱いを受けている・弟:美男子だが女嫌い
豊島与志雄「死ね!」:貧乏なため働き詰めの主人公と、働かずに借金をしている友人の話。
太宰治「駈け込み訴え」:イエスへの嫉妬心から裏切るユダの独白
山本周五郎「泥棒と若殿」:お家騒動で幽閉された若殿と、そこへやってきた泥棒の友情

編集の方のツイートで「少年愛文学選」(平凡社)を意識されていたというのを見て、なるほどなと思いました。
「少年愛文学選」から漏れてしまったような、どうしようもない加虐性・被虐性を中心にまとめられていると…
なのでハードめな作品が多いのですが、それもまた切ないというかやるせない気持ちを誘って、読むのに体力が要ったのだろうと感じます。

(「執念」は権利がどこにあるか分からなかったっぽくて、裁判所で確認までしていただいて…文庫で気軽に読めるようにしていただいて有難さしかないです…)