タグ: <span>サナトリウム</span>

海猫宿舎

少年たちが暮らす海辺の療養所が舞台の、心あたたまるお話です。
少年たちの苦悩に対してのパスカル先生の助言に、大人の私もハッとさせられます。

療養所で最年長のユンクは、本来は四人兄弟の末っ子。でも、クラスのみんなが気持ちよく過ごせるよう、兄のように振る舞う。同じ年のリリンはそれを煙たく思っていて、諍いが怒ってしまう…それで思い悩むユンクの姿が切ないです。
また、ショウマさんを兄のように慕い独占したいと思うけど、みんなに見られないように早起きをして二人きりの時間を楽しむユンク。その控えめな甘えも、とっても可愛いです。

【登場人物】
ユンク:12歳で最年長。背が高い。四人兄弟の末っ子。
リリン:12歳。町に来たばかり。好奇心旺盛。意見を云うのが好き。
ネリ:10歳で、クラス最年少。気弱。声が小さく、アッピ以外は聞き取れない。
アッピ:双子の兄。悧巧。ピアノを弾くのが好き。ネリの言葉が分かる。左利き。
イッパ:双子の弟。アッピとは逆の症状が同時に出る(片方が熱を出すと、片方が真っ蒼)。

パスカル・ジュリアン・アンブローズ(パスカル先生):《海猫宿舎》に新しくやって来た、青い睛の先生。
ヒバ先生:《海猫宿舎》で先生をする町のお医者さん。
ショウマ:ヒバの息子。勉強のために大学へ進学予定。
ホドヤのお爺さん:《海猫宿舎》でストーヴ番をしていたが、亡くなってしまった。
イヴン船長:パスカル先生の傍にいるが、ネリにしか見えない。→ユンクも見えるようになる。ナイルも見えている?

【動物】
ナイル:ショウマが拾ってきた猫。
シリカ:イヴン船長の鳶。
アンケ:人慣れしている片脚の海猫。

最初はネリにしか見えなかったイヴン船長が見えたり、声が聞こえるようになったのは、ユンクが真に耳を傾けられるようになったから?ネリは「最初から声を出していた」と…

夢みる少年の昼と夜

短編集です。
お気に入りは『死神の馭者』。とりあえず叫びのツイート貼っときます…。最近で一番キュンとした。

『死神の馭者』の少年がよくて🤦‍♀️

主人公の男性が焼き芋を買って帰ると、顔色の悪い少年が独りでいたので、焼き芋を1個分けてあげる。少年は「いらない!」と焼き芋を地面に叩きつけて逃げる。

後日、男性の家に少年が訪ねて来て、紙袋を差し出す。中には焼き芋…!
お小遣いで買って来たんだと😭— かまくら (@lutub0) October 29, 2022

①夢みる少年の昼と夜:母を亡くし、父も帰りが遅い、寂しい少年の心情。少年の宝箱の中には、鉱物や自作の辞典のようなものが入っていて美しいです。終始どこか悲しいけれど…
②秋の嘆き:十年前に兄を亡くした主人公の女性は、兄が亡くなった理由を考え始める。
③沼:「長野まゆみの偏愛耽美作品集」にも収録。
④風景:療養所で出会った、自分勝手で元気そうだが、どこか寂しげな青年の過去について。
⑤死神の馭者:主人公男性と、近所に住む顔色の悪い少年との話。この家庭には問題があるようで…
⑥幻影:かつては心中を誓った男女が、男性の出兵を機に、関係性が変わってしまうお話。
⑦一時間の航海:大学生男子が、同じ船に乗った少女に恋をしてしまうお話。この少女の境遇が切ない。
⑧鏡の中の少女:絵描きの女性の恋と葛藤。
⑨鬼:平安時代もの。男女の恋と、それを阻む女性たちの恨みと、それを見ている童。
⑩死後:男性の死の概念について。
⑪世界の終わり:気を病んでしまった妻と、それを見つめる夫。

夏帽子

臨時の理科教師・紺野先生が、いろいろな生徒と巡り合うお話。長野さんで大人が主人公の作品は珍しいです。一話完結が18つ詰まっている形式なので、毎日少しずつ読むのもオススメ。
紺野先生が生徒想いのいい人で、こんな先生がいたらよかったなと思いました。特にサナトリウムに赴任した時のお話が好きです。子狐からもらった碧い電球を使うのもまた…

紺野先生は麦茶に砂糖を入れて甘くしますが(「夏至祭」の黒蜜糖も)、ムックP99によると長野さんがそうされていた、というかお母さまが入れてくれたらしいです。

11話でポプラの綿毛が耳に入る、という話も「耳猫風信社」のうさぎ草のようだなと。