全5巻のSFシリーズ。時間がかかるかなと思って二の足を踏んでいたんですが、読み始めるとあっという間でした。
イッキ読み推奨です…
「テレヴィジョン・シティ」では表現がやんわりしていたセクシャルな部分が、本作ではハッキリ書かれています。長野さんが植物や昆虫の生殖ブームだったらしく、擬人化したらどうなるだろう?というところから始まったとのこと(文庫の巻末インタビューなどにあります)。
登場人物は我々のような人間ではなく、昆虫・植物の擬人化(少年化)という理解の方がいいのでしょうか…
以下、的外れなところはあろうかと思いますが、忘れないようにまとめておきたいと思います。
文庫版巻末
文庫版の各巻末に付録があります。すべて5thまでの内容を含みますので、読了後に読んだ方が分かりやすいです。ただ、読む前にざっと目を通しておくと、ストーリーの理解がしやすいと思います(ただしネタバレがあります)。私は読む前にムックに目を通していたので、ぼんやり内容が入った状態で読み始めました。
2nd~4thは「文藝1998秋号」に掲載のものの再録で、インタビューとQAはムック「文藝別冊 三日月少年の作り方」にも掲載あり。ムックには図解はないですが、巻頭にカラーで全巻の表紙の掲載があり、それぞれ文藝1998秋号とは違うコメントがついています(ムックは解説というより制作秘話に近いです)。
1st:田野倉康一さん解説
2nd/3rd:ロング・インタビュー
4th:新世界』をめぐるQ&A、図解・カバーイラスト集
5tn:文庫版のあとがき
『新世界』を一読しただけでは何の話か分かりにくいのですが、これらを読むと少し理解が深まります(と私は思っています…)。
文藝に小特集が組まれるなんて、当時の人気すごかったんだなと想像しています。
単行本と文庫
単行本と文庫では、表紙が少し違います。
単行本の1stは、螺旋階段をイオとシュイがのぼっているシーンですが、文庫本は少年(ハル?)になっています。他の巻がすべて少年のイラストのため、文庫版にするにあたり統一感をもたせたそうです。
また、ロゴも一新されています。
単行本は儚い感じがしますが、文庫はスタイリッシュな印象です。
登場人物
※ネタバレしかないです※
とりあえず、作中の流れのままのメモと、その後に「結局何だったの?」という表です。
本作では夢や幻覚が挟まれて、人物名が出てこない場合があります。その際には人物の特徴(特に睛の色)で判別しますので、色を覚えておくのが大切です。
人物一覧
イオ
太陽(ソル)の光に弱いため、夜間学校に通っている。碧の睛。名は「自我」という意味。ラシート?蒸留器官を持つ。→ソレンセンとエヴァの子だが、提供者(女になるための器官の培養者)となるためシュイの弟として育てられる。→ソレンセン(ラシートの女)がラシートの女として産んだ子供。後継者となる。
シュイ
イオの兄。灰色(銀色・白銀)の睛。アスオン→ミュラーの子で、HALASSの男から女にされようとしていた。
ミンク
ラシート。美しい顔で、話は出来ない。銀杏(ヒスイ)の睛。鳶色の髪(オーバーン)の毛先だけ蜜色に光る。名は「脳」という意味。
→イオが変光睛(ルシアス)しているとされる(躰を共有しているかは不明)。
ソレンセン
医師。淡青色(みずいろ)の睛。母星化した際に睛を《TRAN》している。
→ミュラーによって母星化されたラシートの女。夢で出てくる繃帯の少年。
ジャウ
ハルに仕える亜人。榛色(ヘーゼル)の睛。蜂の巣にいたところを、ソレンセンが機関構成員(メンバー)に入れた。蒸留器官を持つ。→HALASSとラシートの混血で両性、肌の色が亜人に近かった。ミュラーとラシート(ソレンセンに似ている)の間にできた子。
ハル
イオの学校の上級生。ライスーン。
→P.U.S.に罹り《女》になる途中。治療のためにゼルを欲しがっていた。→母星化され女にシフトしたが、躰はライスーンのまま。
レト
病院の少年=ラシート。シュイとソレンセンの連絡係。意思疎通は出来ないが、意志はあるため、シュイと睛で会話する。
セシェン
ハルの長兄。→ライスーンでP.U.S.に罹り《女》なので《姉》。1stで子がいるが、シュイとの子?
ミーモ
P.U.S.のため太り出して夜間部に移動してきた生徒。
ラルゥ
シグリ系で、ミーモの《姉》=《女》。シュイと対(ペア)。
リュカ
アスオンで優等生だったが、脳を歪められ今は病院にいる。→母星化され躰も女にシフトした。
エヴァ・フランカ
ソレンセンの妻。医療局。黒髪で睛は緑。→実は双子の姉妹。
イゾアール
マザーワート植民政府参事、アイスの会長→ラシートの女。正式な後継者ではない。
ミュラー
マザーワート植民政府副参事。→HALASS。
最終種族・性別
※親については後ほど書きます。
人物名 | 母星化 | ラシート | HALASS | ライスーン | ※親 |
---|
イオ | | ★女 | ? | | ソレンセンとシュイの子 |
シュイ | ★(もともと) | | ★男 | | ミュラーの子 |
ソレンセン | ★ | ★女 | | | |
ジャウ | | ★ | ★両性 | | ミュラーとソレンセンの兄との子 |
ミュラー | ★(もともと) | | ★男 | | |
イゾアール | | ★女 | | | |
ハル | ★女 | | | ★ | |
特徴 | 成長する | 女は匂いがある | 太陽光アレルギイがある | | |
用語
地名
新世界
母星と夏星の間の人工集合天体。行くには許可証と資金が必要。身体機能が向上するという。
マザーワート
母星系の人々が多く住むところ。
夏星(シアシン)
かつてラシートを頂点とした砂丘地帯の都市がある小さな星だったが、母星系に侵略された。ここに住んでいた種族は別の球体(オーブ)=新世界の人工天体?に移される。今は滅んでマザーワートとなっている。
オシキャット
作品の舞台。夏星系の種族が移り住んだ場所。
蜂の巣(ルシエ)
亜人の居住区。
チュンハ
港町。闇市がある。
カピシオン
ラシートは「夏海(マーレ)」と呼ぶ。太陽(ソル)ではなく白色煌燈(オーロライト)が光源。
※全体的な印象
漢字名とカタカナ名があるが、夏星が使う呼び名では漢字名で、母星系はカタカナという印象。
母星が気象変化で住めなくなり、代わりの居住区を探したところ、夏星の種族を追い出してマザーワートとする(「侵略の時代」)。夏星の種族はオシキャットへ。これが、数多くの天体が集まる新世界の一部の地域。
組織
医療局(オス)
マザーワート植民政府管轄の医療組織。
ICE Inc.
母星系の人々の法人組織。オシキャットで珍しい物質を手に入れて利益を得ている。
種族・階級
ラシート
ゼルを持つ特別な種族で、唯一P.U.S.に罹らない。今はない夏星(シアシン)では最上位階級だったが、脳が退化させられ現在はオシキャットの病院に収容されており、“永い眠り人(スリーピング・ビューティ)”と呼ばれる。
※ラシートの女:一世代に一人だけ法的に認められた者が後継者となり、覚醒した時にだけ記憶装置のゼルを生成する。先天的に女の匂いが分かる。覚醒するにはHALASSの男が必要。
アスオン
最下層の階級。哈蜜(ハミ)を蒸留し、恩寵の注入(アンフュージョン)を強いられる。
ライスーン
特定のアスオンを動けなくする。哈蜜(ハミ)を蒸留するが、恩寵の注入(アンフュージョン)は地位の低いアスオンに押し付け、自分たちの哈蜜は高く売りつける。
シグリ系
P.U.S.の発症率が高く、ゼルを受け付けない体質のこと。
母星系
侵略してきた種族。生殖システムは一元的。人口減少のため、男性は結婚が義務付けられている。→人間に近いと考えると分かりやすいかも。老化と生殖対策のため侵略し、オシキャットから利益を得ようとしている。
※母星化(フォーミング):夏星系の躰を母星系の種族のものへ作り替えること。夏星系の種族は成長が一定時期で止まるが、母星化すると成長が始まる。
HALASS(ハラス)
母星系の少数民族で、男しか生まれない。とても長生き。女性器官の退化した部分にゼルを注入できる。身体能力は優れているが、引き換えに光に弱いなどのアレルギイを発症する。
亜人(アジヤン)
顔以外を布で隠し、年老いた容姿。躰は人口でなくても修復できる。母星系の種族が人工交配する過程で生まれた。哈蜜を取り出すことができる。
船員
身体はほぼ人造。
生殖システム等
《PRES(プレ)》:躰の一部を様々な素材で模ったもの。欲望を満たす。
《TRAN(トラン)》:躰の部位・器官を交換する。
紅瓊(ルビオ):唇
哈蜜(ハミ):アスオンやライスーンだけが持つ蒸留塔で生成され、ラシートや《女》の糧となる。燐光と断食の後に生成されるが、ゼルに触れるとすぐに生成される。
恩寵の注入(アンフュージョン):哈蜜の注入。母星系は余暇(レク)と呼ぶ。
燐光(スパアク):14~15歳で初めてするのが一般的。躰の下位器官を蒸留塔に変える。
断食(ジヨルノ):燐光の後、哈蜜を生成するための数日間の絶食。
ゼル:ゼラチン質の透明な塊。P.U.S.による《女》化を防ぐ効果がある。未分化の状態でラシートの体内で生成され、自身の意志でA型かS型に転化(トランス)させる。記憶が込められている。
ASSE(アス):ライスーンに合うゼルの型。翠緑色(マラカイト)になる。
SIAL(シアル):アスオンに合うゼルの型。海王碧(ネプチュン)になる。
P.U.S.:《女》になる病気で、14~15歳で発症。超肥満で膨張し続ける。アスオンやライスーンの子を産む。
《女》:肉塊(マツス)となり、脳が溶けて記憶が無くなる。母星系(≒人間)の性別としての「女」とは異なるので《》が付いている。
花唇(フィオル):《女》の交配に関わる部位。
蛋白粉(オーパル):《PRES(プレ)》する気があると買い手に知らせる粉。
貝蛸の船(ノーチラス):哈蜜を求める亜人の目印。
“小さい子”:11~12歳から燐光(スパアク)を経験するまでの呼称。胸腺があり、燐光すると脂肪に変わる。→インタビューより、胸腺は昆虫の変態を司る部位にあたるとのこと。燐光することで変態し、蒸留塔ができるようなイメージ?
対(セット):提供者(ドナー)と《女》の交配ペア。17~18歳で通知が来る。
《融合》:一部のラシートが可能で、異なる機能を持つ個体へゼルを移す。→ソレンセンがシュイに行う
その他
CODA(コーダ):コンピュータのようなもの?
身体座標(フィスグラフ):躰の状態・履歴
人工水晶(モリオン):コンタクトレンズのようなもの
殻(シエル):鋼青(ワイヤ)の先に鉤のある武器。
歩行用具(カシエ):歩くことが出来ないラシートの歩行を補助する。
変光睛(ルシアス):周期的に目の色が変わる体質。
触角機能(アンテナ):オシキャットの視覚の弱いものに備わった、存在を感知する機能。
虫(ピス):飲ませることで、体内で悪さをする。→おそらく階級の上の者が下の者へ強制的に呑ませられる。
拘束寝台(サラマンダー):動きを抑える器具。
休眠(ケス):ミュラーがソレンセン夫妻と子、息子にかけた。
太陽(ソル):オシキャットの熱源。
里親制度:マザーワートがつくった制度で、円滑にするためにオシキャットの少年は11歳くらいまでの記憶を奪われる。
フリシア:暗紫色の花で、数年に一度だけ白い花を咲かせる。夏海では一年中白い花が咲く。(長野さんが造った架空の花だそうです)
焔の蝶(マンダリン):幻影に現れる蝶。砂丘に住んでいる。通常は南下の航路に夏海は入らない。
“R”電話:新世界の定点観測所を読み上げる。
時系列
シュイの夢か真実かも分からないので、時系列に整理しても無駄だと思いつつ箇条書きしてみます。主に過去に何が起こったかなので、後半しりすぼみに…
・イゾアールは夏星にやってきたHALASSにラシートの女の後継者を渡し、ゼルを奪って正式な後継者となろうとする。
・イゾアールはライスーンと結託して、HALASSに夏星を侵略するよう導く(=侵略の時代)。夏海で眠っていたラシートを”永い眠り人(スリーピング・ビューティ)”にする。
→この時、ミュラーはラシートのなかにいたソレンセンを、カピシオンに連れていく。シュイもここで静養しており、そこでソレンセンとシュイが出会う。※5th文庫P171はこのシーンだと思われ、ソレンセンがシュイを選んだのは偶然じゃないという。
・ソレンセンはミュラーによって母星化される。
・ソレンセンはシュイの躰へゼルを移す《融合》をし、ラシートの記憶がシュイに移る。《恩寵の注入(アンフュージョン)》もした?
・(成長した?)ソレンセンはシュイの担当医になる。
(・シュイがカピシオンの旅荘で過ごし、担当医のソレンセンに手紙を書く。)休眠明けかも
・患者のシュイ・ソレンセン夫妻と子がマザーワートで《休眠(ケス)》、妻子が行方不明になる
→先に起きたシュイはイオを連れ出して砂丘に逃げたが、倒れているところに焔の蝶マンダリン(=HALASSとラシートの出会いの目印)が群れているのを発見される。
※ここまでのシュイの(ソレンセンにとっても重要な)記憶は、その後のオシキャットでの治療でなくなっていた。ミュラーに言われて思い出す。→ゼルに組み込まれていた
・五年前:ソレンセンが収容所でオシキャットで患者(シュイ)を見つける。未分化のHALASSはオシキャットの”小さい子”に似ていたため、間違えて連れてこられた=前妻のゼルが必要
・ソレンセンがシュイを養子にする。
・2nd:シュイがイオを病院から連れ出す
・1st:イオがシュイに重症を負わせる
・ジャウ重症
・5th 5章:シュイはミュラーの息子としての記憶を植え付けられる(カピシオンの記憶がある)。
・すべてが終わる
焔の蝶(マンダリン)、信号音(シグナル)
QAやインタビューより、マンダリンのモデルは越冬のために南へ移動するオオカバマダラ。世代が変わっても、遺伝子に組み込まれている”記憶”によって、南へ移動し冬を越す。
ラシートの名前を読み上げ(記憶を呼び起こす信号音シグナル)、「集合せよ」「もう一度ここへ戻ってこよう」というのは、故郷・夏星へ戻ろうという記憶がオオカバマダラのように潜在的に組み込まれているもの?
ちなみにソレンセン本人登場前に、ラシート名前読み上げのなかに入っているんですよね…伏線わい…
ラシートの名前を読み上げは、インタビューであるような「テレヴィジョン・シティ」や「天体議会」の無機質な音に近い印象です。
ラシートの女の覚醒
ラシートの女として覚醒するには、「HALASSの男」が必要。シュイ・ミュラーがHALASSの男です。ジャウはHALASSとラシートの混血で、男ではなく女にもシフトします。
①ソレンセンの覚醒
シュイとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。このときソレンセンは繃帯の少年の姿であり、《融合》を行ってシュイにゼル=記憶を移す。→この時点で、後継者としての機能も移る?
一世代に一人のため、イオが覚醒する時にはソレンセンは女としての機能を失っているかも。
②イゾアールの覚醒
ジャウとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。ただしイゾアールはHALASSの”男”が覚醒のカギになることを知らなかったので、ジャウが”女”にシフトしている時にのみ行っていたため、覚醒が不十分だった。
③イオの覚醒
シュイとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。ちょっとタイミングがあやふやですが…
・イオが完全に女として覚醒し、不完全なイゾアールに勝る
→これがソレンセンが意図していたことで、最後にイゾアールがイオに虫(ピス)を呑ませようとしても、躰が動かず押し返された。種族の力関係ではイオが勝っていたため。
・ソレンセンはミュラーに機能的に勝っていた
→上記はエヴァのセリフですが、覚醒したラシートの女がどの種族よりも強い?機能的にソレンセンがラシートの女と気付くはずがないというのが引っかかりますが…
ラシートの女の匂い
ラシートの女の匂いは、先天的にラシートの女が嗅ぎ分けることができる。HALASSの男もラシートの女の匂いが分かる。
ジャウ(ラシートの女):イゾアール・ソレンセン・イオの匂いを嗅ぎ分ける。
シュイ(HALASSの男):ソレンセン、イオ、ジャウの匂いを嗅ぎ分ける。
→当初からソレンセンの女の匂いをエヴァのものと思って落ち込んでいましたが、そもそもソレンセンが女であるという説…!
※ミュラーは匂いについて知らなかったので、嗅ぎ分けられなかったとソレンセンは言っている。
母親は誰か?:ジャウの場合
ジャウは最終的に、HALASSとラシートの混血で両性の子であると分かります。
父:HALASSの男であるミュラー
母:ラシートでソレンセンに似ているとミュラーは言う ※母体は別
「ソレンセンに似ている」と分かった後で、イゾアールがゼルを奪ったラシートの女が”ソレンセンの兄”であると分かります。このことから、ジャウはミュラーとソレンセンの兄の間に生まれた子ではないか?と思います。
ソレンセンとジャウの間に不思議なつながりがあったのは、血縁関係にあったからではないでしょうか。ジャウにとってソレンセンは叔父さんで、シュイは兄弟ということに…?
母親は誰か?:イオの場合
イオはソレンセンが父で、エヴァ(双子の妹)が母だとされてきました。見かけでいくと母星系×母星系の子ですが、イオにはラシートの特徴がありました。
→5thでエヴァが母親はソレンセンだと言います。ソレンセンがラシートの女とすれば母親になれるし、イオはラシートの特徴を引き継ぐことが出来る。
→となると父親は?ということなんですが、ソレンセンはHALASSの男であるシュイと出会って《恩寵の注入(アンフュージョン)》しているので、シュイが父親である可能性もアリかなと…
イオはシュイよりも軽いですが光アレルギイがあり、シュイのHALASSの特徴を受け継いでいるとすると合致します。
好色ミュラーがやらかしていたら悲しみですが笑、ミュラーは息子が二人と言っていますし、ラシートの女の匂いが分からずソレンセンを男とみなしていたのを信じれば、シュイが父親であれ!って感じですかね…
イゾアールが「ミュラーでなければ、誰がお前を女にしたんだ」とソレンセンに問いますが、残るHALASSの男はシュイですので、シュイがソレンセンをラシートの女に覚醒させて、イオを宿す。バレずに生む必要がありますので、どうやるのか分かりませんが母体はエヴァ?
ここでも謎が残るのですが、ソレンセンが「前妻のゼルが必要だから探している」と当初言っていたので、そこが分かりません…
HALASSは長生きだと言いますが、長い歴史の中でラシートの女であるソレンセンの子を宿し、次はイオの子も宿し…と繰り返しているような印象です。HALASSの男とラシートが夏海に還り、航路を変えた焔の蝶(マンダリン)の群れを目印に出会う連鎖?
→これが覚醒に必要な、重要な記憶
イオの記憶
3rdで「繃帯や紐は同化する」とミンクが誰かから聞いた、とありますがソレンセン?1stでイオは初めて会うソレンセンの睛に見覚えがあったことからも、会ったことがあり記憶の奥底に眠っているけど思い出せない状態かと思います。
機能・欲望・感情
生殖活動の比喩が多発しますが、それを突き動かすものは次の3つに分けられると考えています。
「機能」・「欲望」・「感情」
以下、ちょっとまとまらない考えですがメモ程度に…
機能
快楽を得ない、作業的にこなす。
夏星系の種族が母星系の種族と恩寵の注入=余暇しても快楽は得られないため、その行為は機能的。
母星系では接吻を儀礼的に身分照会のために行い、これも機能的なもの。
欲望
欲望は階級差がある場合「支配」とセットで語られ、階級によって下位の者の欲望は上位のものに支配される。また、欲望は《女》が持つもので、境界を失くさせる。行為には快楽を伴うのが、機能的なものとは違う。種族として「欲しい」という衝動というイメージ。
感情
種族としての衝動を超えて欲する。感情を感じるシーンは以下。
①エヴァ:ソレンセンが必要とする女でいたい
②ジャウ:ハミの交流で、ジャウはシュイに心理的な影響を受ける=情愛が生まれる
③シュイ:レオやレトに安らぎを感じていた
④ソレンセン:エヴァの口ぶりから、ソレンセンが愛してるもの=シュイであり、ソレンセンがシュイを捨てなかった理由
⑤シュイ:ソレンセンに対する感情は、ゼルなどとは関係なく、ただ惹かれているから(長野さんのQAより)。休眠前から何世紀も変わらないとミュラーは言っている。
→上記から、最も感情的なつながりがあるのは、シュイとソレンセンという印象。イオとシュイは次世代のためゼルの影響っぽく、私としてはシュイとソレンセンのほうが強いかな…?と思っています。ここが一番エモいです。
※メモ:5thでソレンセンがイオと対峙した際、「身体と意識、機能と欲望」がぐちゃぐちゃと考えるシーンがありました。
境界と浸透
他の作品でも「境界」がテーマとなっているわけですが、本作で気になったところを取り出してみます。
・哈蜜を共有することで、境界が無くなり浸透する
→熱で溶けて融合する印象
・躰の像(フォルム)=少年の姿を保つためには、抑制と知力が必要
vs欲望で動く《女》は境界線を維持できずに、際限なく広がっていく。
・5th P87:シュイは繋がっている少年(ソレンセン)の躰は、外の世界の端的な比喩に過ぎず、自分が広がっていた
5th P111:最高の快楽は、自分と外界の境界がなくなったときに訪れるとイオは云っている
→《融合》のことかと思いますが、境界が失くなる快楽とは…?
本作の境界を失った《女》は、「夏至南風」の最後の碧夏に近い印象。
残ってる疑問
第七頸椎=シュイの急所、龍骨の変化が何なのか?
※ジャウ・イオに蒸留器官がある
通常ラシートには蒸留器官が無いのですが、イオとジャウにはあります。二人の共通点といえば、ラシート(の女)ですが、その特徴なのか?ソレンセンやイゾアールがぞうなっているかを探しきらないと…