魂魄系の和風ファンタジー。四作目は『銀河電燈譜』『水迷宮』のような因果系の雰囲気もあります。
結局、全容を把握するにはどう読んでも頭数が足りないようです…
三作目まではさほど難しくないように思いますが、四作目が長野さんのなかでも難解度が高いです。文藝のインタビューで「新世界を読み返したら簡単すぎた」とおっしゃっていたので、そこから難易度が上がっている気が私はしています。
シリーズの順番
①左近の桜
桜蔵16歳・高校二年。
②咲くや、この花
③さくら、うるわし
④その花の名を知らず
桜蔵15歳・中学三年(祖父の三回忌)の回想。
登場人物
左近家
左近桜蔵(さこんさくら)︎︎ ♀:16歳/高二(一作目)。文系。死人と交わることができる。3月生まれ。
千菊(ちあき)♂:弟。中一(一作目)。
葉子(はこ):母。女将。
日子(ひなこ):母方の祖母。
辰彦(たつひこ):母方の祖父。ケモノに詳しい。柾の師匠。左近へ婿養子。桜蔵と千菊が通う高校の理科教師で、柾も卒業生。理科部。
桜生(さくらお):葉子の兄。拾い子。望月の養子になって家を出た。→望月(もちづき):質屋・八疋(はちひき)、二十代の若い男。柾の研修医時代の恋人で、今も引きずっている。
川路(かわじ):大叔父。祖母の弟。二十歳くらいに病没。
左近伊吹(いつき):日子の大伯父。黒髪峠で行方不明。=神岡茂:登山中に記憶を無くした。白鳥家の番頭となる。
芳子(かほるこ):伊吹の妹。
英尾(ふさを):芳子の娘。日子の母。
左近永門(ひさと):幸の夫。戦地へ行ったが帰還。
井川清志(いがわきよし):番頭。
茨(うばら):井川の母。産婆。
佐久間功(さくまこう):板前。四十代。十五歳のときに、番頭の母親が遠縁といって郷里から連れてきた。今も番頭の家で暮らす。
菊政(きくまさ):包丁研ぎ師。
シノブ:菊政の孫。→雨彦が宿った。佐久間を誘う。
白鳥家
柾(まさき)♂:母の夫。本妻とは子供を持たない約束。医者。旧姓白鳥。(女)を育てるのが上手い。四十歳すぎ。
遠子(とおこ):柾の正妻。母は産科の医師。
一師(かずし):父方の祖父。白鳥という姓をきらって、何人目かの妻の旧姓を名乗った。
師(つかさ):曽祖父。三度結婚、一男三女。姉妹の母は一緒だが、父は違う。辰彦の恩師。
幸(ゆき):江子と取り違えられた白鳥家の長女。
白鳥二紗(ふさ):大叔母。祖父の異母妹。
沖子(なかこ):二紗の母。旧姓白。父親の旧姓は樋口。
早久也:柾の従弟。一師の妹の息子。
白家
白清子(つくもさやこ):父方の祖父の縁者。祖父の妹。大叔母を名乗る。
白伸(つくものぼる):旅館三つ葉の息子?白鳥家の令嬢と婚約。
淳一(じゅんいち):女将の父親。
高見江子(たかみのぶこ):伸の伯母。
真央(まなか):江子の息子。
淳也(じゅんや):三つ葉の息子。
井茂治之(いしげはるゆき):白毛。茶人。永門と詰襟を連れていく。井茂は養家、父親は神岡。
早門(はやと):ハルエの元夫。遠子の同級生。白毛。
沖家
沖(おき):高校OB会の理事。自動車修理工場。
万智(まち):谷村の叔母。
千弥(ゆきや):万智の下の兄。茶碗ざくろを取り出そうそして、不発弾に逢う。
一都(かずと):万智の上の兄。千都子の父。永門の同級生。療養所にいた。
谷村千津子(ちづこ):沖の姉。沖モータースの事務員。
乾申彦(いぬいのぶひこ):一師の先輩。沖の従弟?桜蔵の大伯父。母方の祖父の兄。左近家の井戸の番人。→日子と縁談があったが、すでに白家の娘と子があった。清子?
樋口温門(はると):巨石があった商屋の姓。沖子の父親。
水門(みなと):温門の弟。永門の父親。
西方日帆(にしかたかほ):不動産屋。遠子に似ている。
一序(かずのぶ):日帆の父。
紅江(あきこ):日帆の従姉。
ハルエ:遠子の同級生。多仲亭の娘。早久也と再婚。
白鳥ヨハン:ハルエの息子。=シラカワヨフネ:学生。
桜蔵の関係者
真也(まや):桜蔵の一級上の女ともだち。予備校に通っている。医学部志望。両親は遠子と古い付き合い。
久生(ひさお):大柄な桜蔵の級友。理系。
隼人(はやと):久生の犬。
森本里(さと):久生が連れている小柄な女子。
柾の関係者
浜尾一史(はまおかずふみ)♂?:宿の常連客。社会心理学者。37~8歳。妻子持ち。柾は学生時代から知っている。
浜尾芳(かおる)︎︎ ♀:浜尾の従弟。十七歳で亡くなっている。浜尾の最初の女で、柾も知り合い。
清千舟(すがちふね)♂:三十代半ば。教授。桜蔵の担任、書字学研究室。柾の知り合い。妹と弟がいる。
日文(ひふみ):清の異母妹。
チャロ:柾が桜蔵に贈った犬のぬいぐるみ。Cのタグがある→千早の飼い犬。
船田千早(ふなだちはや)♀:医院の息子。柾の昔の女で、チャロと呼んでいた。
石堂加奈子(いしどうかなこ)
マナ:加奈子の娘。
チャイ:加奈子の飼い犬。
上原家
上原司(つかさ):婿入りした男。
弥子(ひろこ):司の娘。
弥(はるや):高三の司の義弟。どちらもいける。工学部志望。→蜃が乗り移る
門倉(かどくら):医師。
緑の月関連
関谷孝三郎(せきやこうざぶろう):三男。
洋二郎(ようじろう):孝三郎の次兄。頬に傷がある。
慶子(けいこ):孝三郎の姉。
佳央(よしお):慶子の息子。
日野千可琉(ひのちかる):詩集の作者。二十歳にならず戦死。姉の婚約者を奪ったことを告げ口される。
千波琉(ちはる):千可琉の姉。→真也の母方の曾祖母。
市川(いちかわ):関谷の運転手。
シュガー:関谷の猫。
その他
羽ノ浦昆(はのうらこん):千菊の担任。理科教師。養父が亡くなった?分厚い眼鏡をかけている。酒を飲むと人格が変わる。浜尾の知り合いが養子で亡くなった男と瓜二つ。
六月一日晴(クサカキヨシ):蝶捕り師。
萬来(うるき):学校の隣のうるさい小金持ち。
梶岡(かじおか):千菊の同じ組の祖母。
横笛:遠子が呼んだ茶人。
ざくろ・しろうづ・あけび
五十年前に亡くなった森:桜蔵は一師と行った
黒髪峠:白鳥家が所有する山の中。
巌のひび割れのなかに蛇黒(ざくろ)と白貴(しろうず)が棲み、魄を食べて百年生きる。
〈三つ葉〉みつは
もとは蔵元だったが、今は宿になっている。
蛇黒というお酒を造っていた。
幸と思われる女の祖父の家は醸造家
イモンジの家の焼け跡:アケビ、頭の無い白骨
→前の日に〈蛇黒〉を買い求める
蛇黒(ざくろ)
・黒い石榴
・お酒
イモンジが買い求めた
・茶碗
幸が持ち出したまま行方不明
沖家の庭
清子を名乗る女が探していた
空の函が白鳥家にあった
白貴(しろうず)
・白い石榴
・お酒
湧き水を髑髏で濾す
・茶碗
桜蔵が電車に乗った際に拾う
白鳥家の婚約祝いに登場
江子の息子の真央が持ち出して行方不明になる
黒白の石榴は実をつけない→男の化身
朱薇(あけび)
・茶碗
紅麴。
乾の家にある
・三百年の樹
イモンジの家
中華料理屋
ミナトビル
・左近家メス、柾の家オスで、現在は千菊が受粉
→女系の左近家と白鳥家のつながり?
巨石
・師が三陸の峠から持ってきた→白鳥家の墓となる
黒い石榴が植えられている
・多仲亭の紅吹
・沖家の庭
・乾家の石神
キーワード
女性は現実的なので魂をつかめない
魂は天へ、魄は地へ
現実の人と交わることで浄化される
風はや(ちはや):京都の紙卸売問屋。
枇杷:天神さま
黒い蝶:転写する→魄へ転写された
玉の緒:タマシイを繋ぐ紅い糸。
白雪コウを初雪に埋めると、タマシイが凍って結晶になる
ハマグリ:蜃。虹を吹く。
黒面(クロツラ):屍を喰う冥府の犬。
雨彦(あまびこ):ヤスデ。
タマシイを喰う鳥
蛟(みずち)
ギョク:未練があると重くなる
浄玻璃:罪を映す
カワホリ:ヌケガラの仕分けをする
石榴は魄で育つ
鵺(ぬえ):祖母の葬式に現れる。呪いを解くために黒い髪が必要。曾祖母の夫?が心を奪われたため封印された。
祖母が鏡を埋めた→水琴窟
ジャコウアゲハ
クチナシ:『箪笥のなか』と同じ説明
祖母の兄(大伯父):桜の季節に養子にきた
サネカズラ:あの世で逢う
辰⇔戌
☆左近解説境界があいまい
蛇の女
・左近家は女系(伊吹が行方不明になり、芳子が婿をもらう)
・女は女役のことではないらしい
・蛇の女は人間のからだを借りないと生まれない
『あめふらし』のさゆりも、女の躰で陸にあがって出産する蛇という話がありましたが、
蛇は女の躰でないと子を産めず、それを重宝がっている蛇性の家系?
桜蔵は女の蛇で、清子もうろこのようなものが見えていた。
蛇黒(ざくろ)と白貴(しろうず)
黒い石榴と白い石榴の異名でもあり、実をつけないことから男同士が絡み合っていることをほのめかしている?
→オスの蛇ならば、女のからだがないと子がつくれない
作中で柾のように男の恋人がいると思われるのは
・白家の伸、高見の真央(心中)
・井茂治之、左近永門、学生服の青年?
・桜生
概算年表
四作目の概算です。おおよそ目星をつけるためのもので、正確ではないです…
1881年:伊吹生まれる
1898年:伊吹が消息不明
1914~1915年:英尾11歳、母が伊吹を街で見る
1923年:江子と幸が取り違えられる
1934年:一師が生まれる
1942年:十六夜の茶会(幸、治之、永門、青年、老人)
1947~1948年:清子生まれる?江子が東京で伊吹を見かける。
1947年:半夏夜の茶会(申彦、千弥、淳一/永門)
1964年頃:柾生まれる
1977年:夜船で伸と真央が心中
2007年:江子が亡くなる?清子は58~9歳のはず。
家系図
手書きですみません…
※桜蔵の生い立ちのヒントのようなもの※
柾の祖母の着物を仕立て直した服を着る女性:顔が桜蔵に似ている。好きな男が桜生に夢中になり、カッとなって殺してしまった。男のときは警察官だった。
左近永門:沖家の人たちが桜蔵に似ているという。
「蔵」は醸造家?と聞かれていた→白家はもともと酒蔵で、左近伊吹(神岡茂)が仕えていた。
大元を辿れば左近家っぽいものの、永門が最終的にどうなったか(幸と婚約して、戻ってきたときどうしたか)、子供はどこにいるのかが不明なのでここかもしれないと思いつつ…
※幸の子供※
幸は永門と婚約していたけれども、恐らく白家の男との子を身ごもっている。男と交わった後に自分が白鳥ではないと気付いたのか、「因果の子」と云っている。男と幸は血が繋がっていて、おろそうと思ったが治之が引き取ると云っている?
本当に引き取って育てたかは不明。
謎
・最後に乾が言っていた愛人になりすましている男は?
→家系図的には一師がおさまりがいいんですけれども、出てくる女が少ない…
・乾の妻子
・十六夜の茶会にいた青年
→治之が永門と一緒に連れて行こうとした詰襟のこと?