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新・悦樂園園丁辭典

反歌を伴ふ瞬篇小説集

数ページの短い小説集。
数ページで決着がついてしまうので、書けることだけ書きます…

【収録タイトル】薪*/酢/漣*/凪*/蠍/菓*/臙/水*/雁/窖*/鳥*/贖*/螢*/樹/杉*/栂/樅/梢/針
*=男色表現あり(私的判断)

「薪」
【登場人物】
瑠璃生(るりお)
望月兵衛:古代美術専門、瑠璃生の父の愛弟子。
ドメニコ・フォッリ:シエナ出身。瑠璃生の父。
もゆら:瑠璃生の母。
七重:瑠璃生の従妹。

「酢」
塚本邦雄の、女性強い作品の極み。
【登場人物】
きりゑ:祖母。瓶細工と押絵の師匠。
みさ:母。一中節の名手。
麻利:姉。
桐人:27歳。

「漣」
「洪水で亡びた地には紫陽花が茂るといふ。」から始まり、氾濫の時に生き別れた友が、若い美貌のまま手招きをする。

「水」
父親×息子?切ない…

「鳥」
昔の男の忘れ形見(息子)が現れる。
【登場人物】
四方木(よもぎ):神主。
鷹合(たかあい)

「贖」
初読「少年愛文学選

「螢」
少年院の監視者が、変装して50人の少年の中に混ざろうとする。


悦樂園園丁辭典

小説と評論が入り乱れているような形式。

【収録タイトル】#狄*/巫/胎/#葩*/#渇/銀/釵/蘗/影/蛾/嬰/妹/蠱/#膚/蘂/獸*/笛*/銃/#臍*/星/香*/謎/色*/嚢*/菊*/罰/髭*/幹
*=男色表現あり(私的判断)
#=小説っぽい

「狄」
亡くなった妹の取り巻きの一人の男と、危ない関係になってしまう兄の小説。
男はデザイナーで、兄のアイデアで有名になった。
兄はいけないと思いながらも、沼から抜け出せない…クソデカ感情が最高です。
妹が病気で大変な時に、枕元で二人で話す時間によろこびを感じちゃう兄よ…

「胎」
写真に関する話。

「釵」
モナリザ、ダヴィンチの話。

「蛾」
紺青のわかれの「与那国蚕は~」にもつながるような、蛾嫌いの話。女性は蝶になるものもいれば、蛾になるものの方が多い、蛾は嫌いだ、と。

「嬰」
マザー・グース、カニバリズムの話。

「蘂」
花・両性具有の話。

「笛」
稚児・衆道の話。

「臍」
美丈夫が拷問に合い、大変なことになる小説。

「星」
十二神将変のような、星になぞらえた庭の構想。

「香」
香りについて。特に、男の腋の香りについての並々ならぬ…

「嚢」
男性の陰部の話…?

「菊」
後鳥羽院と菊(=男)の話。

「罰」
拷問の話。

「髭」
髭に対する並々ならぬ拘り。


彩辭學

【収録タイトル】酣/木/涼/荷/桐/颶/露/檻/燈/轉/映/沈

全編、実話のような小説のようなお話。最後には短歌が添えられています。
「露」が、切なくて一番好きでした。偶然出会った青年を、数年後に探す旅…


詞繪歳時記

【収録タイトル】馬/梅/桃/寂/菖/氷/扇/盆/陽/夢/錦/臘

美しい文章で一年を描く歳時記。


新・悦樂園園丁辭典 跋 薔薇落胤

あとがき、制作秘話のようなもの。

稚子法師

直接的な表現はないのですが、主人の「そういう意味での」稚児、みたいな表現があって、「あ、察し…」とひとりでニヤニヤしてしまいました。申し訳ございません。

この稚児さん、歳を重ねても美しく、聖人のようになってゆきます…

二人の稚児

青空文庫で読みました。
幼い頃から共にお寺で修行を積んだ二人の稚児が、俗世や女性への憧れから、葛藤するお話です。
稚児さんの描写から、いろいろと妄想が膨らみます…

少年愛文学選

(作成中)

国家的・家父長的暴力への抵抗として生まれた、少年愛文学のアンソロジー。

個人的には「燃ゆる頬」が特に好きなのですが、青空文庫でも読めますのでぜひに…
プレパラアト覗くシーンでいつも悶絶しています。

乱歩先生の日記も好きです。美少年とのプラトニックな関係を、乱歩先生が惜しげもなく語ってくれます。ありがとうございます。
机の穴を通して触れ合うシーンが好きすぎて、何回か読み返しています。ありがとうございます。

山崎俊夫「夕化粧」
折口信夫「口ぶえ」
江戸川乱歩「乱歩打明け話」:乱歩先生の恋日記。
倉田啓明「稚児殺し」
木下杢太郎「少年の死」:主人公の少年は、年上の先輩の稚児。でも先輩は、少年のお姉さんが好きみたいで…
武者小路実篤「彼」
稲垣足穂「RちゃんとSの話」
堀辰雄「燃ゆる頬」:男子、理科室、先輩…もう分かりますね…?
大手拓次「沈黙の人」:切ない失恋のお話…
村山槐多「ある美少年に贈る書」:槐多先生が好きな子に送った赤裸々すぎるお手紙。
川端康成「少年(抄)」※文庫あり
中井英夫「夕映少年」
塚本邦雄「贖」:1ページしかないのですが、破壊力がすごいです。続きどこ!!!! 父と関係を持った男が、息子のぼくにも手を出してきた、みたいな話…?
春日井建「未青年(抄)」
高原英理「青色夢硝子」

給仕の室-日本近代プレBL短篇選

Twitterで見てずっと読みたいなと狙っていた本です。
本当に全作品よくって、読むのに体力が要りました(1つ読むごとにクソデカため息&床突っ伏しを余儀なくされるため)
個人的に特に好きなものを…

Ⅰ部は「若衆歌舞伎」からの「執念」が好きです。
「執念」は「若衆歌舞伎」の作者(原稿を偽装して実刑判決受けてるとのこと)をモデルにしていて、順番に読むと2作品の繋がりが分かります。
「執念」の主人公は、「若衆歌舞伎」の作者が危ない人だと分かってるのに、離れられない美少年という設定で、なんて切ない話なんでしょう…好きすぎる。
終わり方も切ないのですが、最後の一文で完全に落とされてのたうち回りました。

Ⅱ部は「過去世」ですかね…
母親不在の特殊な家族(父・兄・弟)で、衝撃のラストです。弟が女嫌いのお耽美美少年で、父や兄とのやり取りが妖艶に描かれています。
たぶん、長野さん作品の初期お耽美兄弟(夜啼く~、夏至南風、魚たちの離宮とか)が好きな人は絶対好きなんじゃないかな…と勝手に思います(私が好きなため)
女性作者というのも影響しているかもしれません。

また、「泥棒と若殿」は読みながら泣いてしまいました。身分差と人情とで胸がいっぱいになり…最後にふさわしい作品でした。

【個人的印象メモ】
Ⅰ部:衆道、小姓・稚児、男色、少年愛など
秋田雨雀「同性の恋」:病死した美しい友人との思い出を追想する。友人が主人公を傍に置くのは理由があって…
日下シン「給仕の室」:美男子純太への、主人公の止められない愛情と劣情
倉田啓明「若衆歌舞伎」:美少年2人が美を探求
山崎俊夫「執念」:上記「若衆歌舞伎」作者モデル。暴力と嘘から逃れられない主人公。
木下杢太郎「船室の夜」:田舎から上京した主人公の、美少年への恋と身の破滅(不良と仲良くなってしまう)
室生犀星「お小姓児太郎」+「美小童」:お小姓児太郎と、それに仕える髪結少年+美しい童が忘れられない主人公
綿貫六輔「小松林」:お爺さんを愛する軍人、お爺さんの愛人との関係でも悩む
Ⅱ部:友愛
国木田独歩「画の悲しみ」:自分より絵が上手い美少年への嫉妬と友情
田中貢太郎「野薔薇」:敵国同士のおじいさんと青年の友情
小川未明「ある神主の話」:漁師の男と、突然現れた小柄な男との友情。実は小柄な男は人外で…
岡本かの子「過去世」:女性の作者が友人から過去の話を聞くという語り口。昔、母親のいない家に預けられていた時の話。父:癇癪持ちで女嫌い、弟を可愛がりずっと傍に置いている・兄:父と弟から使用人に近い扱いを受けている・弟:美男子だが女嫌い
豊島与志雄「死ね!」:貧乏なため働き詰めの主人公と、働かずに借金をしている友人の話。
太宰治「駈け込み訴え」:イエスへの嫉妬心から裏切るユダの独白
山本周五郎「泥棒と若殿」:お家騒動で幽閉された若殿と、そこへやってきた泥棒の友情

編集の方のツイートで「少年愛文学選」(平凡社)を意識されていたというのを見て、なるほどなと思いました。
「少年愛文学選」から漏れてしまったような、どうしようもない加虐性・被虐性を中心にまとめられていると…
なのでハードめな作品が多いのですが、それもまた切ないというかやるせない気持ちを誘って、読むのに体力が要ったのだろうと感じます。

(「執念」は権利がどこにあるか分からなかったっぽくて、裁判所で確認までしていただいて…文庫で気軽に読めるようにしていただいて有難さしかないです…)