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青い鳥少年文庫

前半は長野さんが撮影した写真(被写体も長野さんチョイス)と、後半は小説の二部構成です。
シリーズで下記計4冊で、お話は続きになっています。

①オルスバン
②ヒルサガリ
③オトモダチ
④ギンノヨル

長野さんのコレクションを楽しめるお写真がたくさん収録されており、世界観を楽しむには素晴らしいシリーズです。
古本でしか手に入りませんが、興味がある方はぜひ…
お話も少し切なくて、不思議で可愛くて、素敵です。

私が手に入れた四冊は、前の持ち主の方々(バラバラに購入したので複数)のおかげで、ペーパーも挟んでありました。
「青い鳥通信vol.1~4」では、写真に登場したアイテムを長野さん直筆のイラストと文章で解説がなされ、編集者のコメントもあります。
鳩山郁子さんからのプレゼントや、『碧空』が刊行されたときの編集者の方の熱狂が知れ、とても嬉しかったです。

以下、ネタバレあり

【登場人物】
ルリ:主人公の少年。自分がどこからやって来たのか分からない。→海鳥(ショアバード)
ピカピカ:父親。診療所を営んでいる。→カササギ?※「ピカピカ」はカササギの学名
雨宿(アマヤドリ):ケガをした星宿を助けるために、診療所を訪れる。→懸巣(カケス)
星宿(ホシヤドリ):飛行中にケガをしてしまい、雨宿に助けられる。→星烏
空知先生:大学病院で働く医師。
アリオト:サーカス団の少年。兄たちはドウベ・メラク・フェクダ・グレズ・ミザール・ベネトナーシュと、北斗七星に由来する。父の団長はポラリス(北極星)。→リンドウカケス
ソーイ:仕立て屋。
ケス:ルリの兄。

【キーワード】
煙草《蜜蜂印》《砂の茨(デザートローズ)》
銀ラムネ、虹の捕り物、孔雀ホテル、回転木馬、リンドウカケス、ウサギノミミ、ラビット・アイ、星イカ

長野さんの作品で、人間の姿になる鳥たちは多くいますが、今回は主人公も自覚は無いけれど鳥という気がします。
他の作品は、人間の少年が鳥たちと交流するという印象。

ルリとケスは兄弟で同じ鳥のようですが、名前からルリカケス?
鳥に全く明るくないのであれなんですが、奄美大島の固有種、海鳥かは不明…
でも南に住んでいるので、ともすれば…

今回も南に憧れる・南に還る要素がありますが、生物の本能としての”南”へ感情が向くような気もしてきました。

こまみたま(中山敦支)

ジャンプで連載当時から好きだったマンガです。
そのあとサンデーに移られて、「トラウマイスタ」の連載が始まりました(こちらも好きでした!)

狛犬の正反対バディなんですが、いつもは喧嘩してばかりでも戦う時は二人で一つ…
その絆にキュンキュンです。

おかっぱヘアのウノくんが私のストライクど真ん中なのですが、女装したり最後には相方アシュラくんと〇〇したり…いいんですかジャンプでこんな…^^

野ばら

夢と現実を行き交う、美しく不思議なお話です。
柘榴の実を吐く夢、講堂で催される劇、不思議な理科の課外授業、二人の少年…何が現実で、何が夢なのか?

ムック「長野まゆみー三日月少年の作り方」によると、『野ばら』執筆時期に様々なパターンで書かれており、『カンパネルラ』『銀木犀』『夏至祭』『綺羅星波止場』に収録の「銀色と黒蜜糖」は、『野ばら』の別バージョンとのことです(p.67)。

【登場人物】
月彦、黒蜜糖、銀色、理科教師

以下、ネタバレありで私的考察を…
個人的に感じたことなので、受け流してください。そして最終的にまとまってません(おい)。

琥珀縞の猫

祖父が飼っている琥珀縞の猫が、月彦の家の庭に登場します。
ミシンの周りに現れたことと、雰囲気的に理科の教師かな?と…

紅と白の対比

作中で目を引くのが、紅と白の色をした植物や物質です。
下記に列挙していきます。

・紅
柘榴、夏薔薇、雪の上の金魚、寒椿、黒蜜糖の唇、銀色たちの影
・白
野ばら、夜合樹(ねむのき)、芍薬、雪、銀色のシャツブラウス、理科教師の研究服

野”ばら”はひらがなで、夏”薔薇”は漢字なのも気になります。

紅色

上記の紅色をしたものを列挙して感じたことは、月彦が「怖い」と感じていることです。

死んだ金魚の紅色が目に焼き付き、痛みを感じています。それから、寒椿を見ると同じような痛みを感じ、柘榴を吐く夢を見るようになる。
金魚が死んでいるのを、月彦以外の級友は平気な顔で語っていますが、月彦は少なからずショックを受け、一種のトラウマになっているように読めます。柘榴=紅色を吐くようになるのは、目に焼き付いた金魚=紅色のトラウマから逃れたい、逃避行動のように感じます。

黒蜜糖の唇もまた紅色で、その黒蜜糖にも月彦は恐怖を覚えます。
ナイフを貸すと申し出た時も、刺されそうな気がして遠慮しています。

これらのことから、紅色は月彦のなかで「恐怖」・ある種「残虐性」と結びついているのではないでしょうか。

そんな紅色を、理科教師や黒蜜糖は「美しい」と形容します。
理科教師が紅玉の石を熱し「綺麗だろう」と言い、黒蜜糖も幕袖から「水より美しいもの」と柘榴を紹介しています。そしてどちらも、月彦に触れさせようとしてきます。

美しくも怖い世界へ、月彦を招き入れようとしている印象を受けます。

白色

対する白色は、野ばらに代表される学校と月彦の家の庭に生える植物が主です。紅とは対照的な色のように感じます。
野ばらの特徴は棘があること。そこに黒蜜糖や銀色たちは閉じ込められており、「月彦が野ばらを生やすせいで出られない」と言っています。

この野ばらの棘は、金魚のトラウマから心を守るための防御壁のようなものでしょうか。
心を守るため、自分の殻に閉じこもり夢の中にいたい月彦の、心の壁のようなもの。

黒蜜糖と消える月彦

いろいろ書きましたが、一貫した説明ができず(黒蜜糖と理科教師の発言をすべて説明できるわけではないので…)、取り急ぎ考えたことで着地させておきます。すみません。

最後には今まで吐いていた柘榴を飲み込み、恐れていた黒蜜糖を発見して安心感を覚えています。紅色に対する恐怖が無くなっているようです。月彦のなかで何かが覚醒したのか不穏な終わり方で、私は月彦があまりよくないものに目覚めてしまったと考えています。

耳猫風信社

他作品との共通点が多く、作品名も公式ショップと同じという、ファンには嬉しい一冊です。ただ今のところ電子化していないので、読んでみたい方はお早めに古本を探していただければと…
天体議会(プラネット・ブルー)」のような仲良し少年二人が登場しますが、そこに「夏至祭」の黒蜜糖・銀色のような猫族が登場し、ハイブリッドな内容です。しかし、そこにキイルさんという大人な男性が登場することで、少年たちの憧れの対象がいる点が他の作品と違うと感じます。
また、他の作品は第三者視点から書かれることが多いのですが、本作は「学校ともだち」のような日記の体裁で、一人称「ぼく」なので全体的に可愛い印象です。時々垣間見えるトアンの心情が健気。

このキイルさん、何気なく助けてくれたり、ソラに煙草をあげる時に自分で喫ってからくれたり、爆イケなので大好きです。カシスくんとの距離感もまたたまらん。長野作品ではなかなか見られない大人な男性だと思います。

以下、ネタバレあり

【登場人物】
トアン:ママのことが好きだが、年頃なので素直に言わない11歳。
ソラ:トアンの親友。大人びている。
サリィ:トアンの上の弟
ノエル:もうすぐ3歳のトアンの下の弟。
タチ小父さん:地球堂の店主
ソイ:ソラの二つ違いの兄
ルビ:トアンの従妹。11人家族で騒がしい。ソラと付き合っている?
パァル:ルビの姉
リリン:級友
イレール先生:トアンやソラの元担任の先生。トアンのママが焼くミルリトンが好物。

【猫族】
カシス:青と金の睛のコンビネゾン。市長夫人の家で生まれたが、片目が金のため教頭夫人の家へ貰われた。
キイル:カシスの父。名前は龍骨という意味。イレール先生の猫。
ツァイス:カシスの上の兄。トアンのママが焼くパンが好き。耳猫風信社で働いている。
黒白斑仔猫:ツァイスの甥っ子。ツァイスを「叔父さん」と呼んで怒られている。
シルカ:カシスの下の兄。教頭夫人の猫。灰色巻き毛のチンチラ猫、額がフラッシュピンク。
フランセス:キイルの妻?市長夫人の猫。
受付の女:ベリルの大きい指輪

※後ろ盾(パトロン)→飼い主のこととする
教頭夫人:猫に何かあるとうるさい。飼い猫→カシス、シルカ
市長夫人:血統を重んじる。
イレール先生:普段の対応はすこぶるいいが、市長夫人には弱い。飼い猫→キイル

【キーワード】
眼帯の少年、フラッシュピンク(髪、スポーク)、紅玉印の洋墨(インク)、茴香(アニス)の匂い、うさぎ草、映画《月の船でゆく》、榛(はしばみ)のリキュール(夕映え色)、アナナス酒、五稜子(スターフルーツ)、ラジオ

【お店・会社名】
地球堂:雑貨店
ZEP DINER:飛行船型の食堂
スカイピクニック:パンケーキがある
耳猫風信社:『猫屋の風信』
山猫の店:文具店
ミケ・ランジェリ:ソラが倒れた時にごちそうしてくれた店。
タマラ:埠頭近くの店。船でやってくる露店商のたまり場。
猫舌:喫茶店

他作品との共通点

「これ見たことある!」っていうメモです。

フラッシュピンク:髪やスポークの色。「テレヴィジョン・シティ」のイーイーが琥珀色の髪を、前髪の一部分だけピンクでした(靴下も)。
アナナス酒:「テレヴィジョン・シティ」の主人公がアナナスですが、そもそもパイナップルのことらしいです。

紅玉印の洋墨(インク):「都づくし旅物語(遊覧旅行)」の「小さな紅いビー玉」では、紅い洋墨をお店で見ていた少年たちが猫族の夏至祭りに呼ばれます。

黒服の男:少年二人が冒険しているところに現れる怪しい男はだいたい黒服なんですが、今回はキイルさんなのでいい人だと分かりました。

映画《月の船でゆく》:のちに同じ出版社から『月の船でゆく』という作品が刊行されますが、「都づくし旅物語(遊覧旅行)」でも「月の船でゆく」という短編があり、ナポリという猫と少年が波止場から船に乗ります。

『猫屋の風信』・ラヂオ:「都づくし旅物語(遊覧旅行)」にも「猫屋の風信」という短編があり、ラヂオから猫の集会案内が流れます。

ガム:「都づくし旅物語(遊覧旅行)」の「月の船でゆく」でも、小学校の近くを通るとガムがつく、という話がありました。

この作品でも女性が強いので、そう考えると本作の”犠牲者”はキイルさんかもしれません。猫の血統を重んじる市長夫人は、「雨更紗」の女主人のようで、半ば無理矢理男女をくっつけてしまう強引さがあるように感じました。
息子のカシスも、キイルがなりたくて父になったわけじゃないことを知っているので、甘えられないしなんだか切ないです。

綺羅星波止場

いろんな作品の原型が詰まっているような短編集。
ことばのブリキ罐」に色んな解説がありますので、読了後にめくってみると楽しいです。

銀の実

銀の実といえば、「少年アリス」に登場します。本作も同じような作用ですが、こちらは鳥の視点なので「食べると人間になってしまうよ」と忠告されます。

【登場キャラ】
黒鶫のきょうだい
椋鳥
懸巣

綺羅星波止場

鉱物大好き、性格が正反対の二人の不思議な物語です。「天体議会(プラネット・ブルー)」の雰囲気があります。

【登場人物】
灯影(ひかげ):無鉄砲
垂氷(たるひ):石橋を叩いて渡る性質

雨の午后三時

「綺羅星波止場」の二人が再度登場します。南に憧れたり、白銅貨が登場したり、電話から波の音がするなど、さらに「天体議会」の要素が登場します。
「扉の向こうが海岸」は、「都づくし旅物語(遊覧旅行)」の「逍遥の南」という短編にもみられます。
海南珈琲は「ことばのブリキ罐」によると、長野さんが上海で飲まれたとのこと。

【キーワード】月光舎、南、海南珈琲、扉の向こうが海岸、白銅貨、電話から波の音

レダの卵

少年は卵から生まれる系統のお話。「ことばのブリキ罐」を読むと新しい事実が…

耳猫通信社

タイトルが同じ「耳猫風信社」の一部抜粋のような形式。うさぎ草が耳に入ったお話です。
名前は友人のソラだけ出てきます。

黄金の釦(ボタン・ドール)

猫ちゃん系のお話。「ピカピカ」というおやつが印象的です。

【登場人物】
星(しょう)
早也(そうや):星の友人
麦:星の弟
浜川の伯母さん
ピカビア:睫毛の先が碧い銀灰猫

月夜の散歩

詩のような形式の短編。

銀色と黒蜜糖

「野ばら」の原型で、「野ばら」と「夏至祭」の中間的な印象ですが、本作にしかみられない部分もあるので面白いです。「残像」や「真実と虚構」、「半端な存在」というワードが印象的です。
月彦が「すべてのものに終わりがある」と知り、銀色と黒蜜糖が閉じ込められ、夢の世界が消える…金魚のことをきっかけに「死」を意識し、子供から大人に変わる?ということなのか…

月彦の木の葉石が失くなる話は、「夏期休暇」のあとがきで長野さん自身も化石を盗まれたお話をされていたので、それが元なのかなと推察しています。

【キーワード】心臓のところが紅玉色、芍薬、満天星、木の葉石が失くなる、残像、コップの水を凍らす、鶯神楽の実、からすびしゃく、ミシン、野茉莉、天蓋百合の零余子(むかご)、夏茱萸、2人は真実と虚構から逃れられない

夏至祭

野ばら』の原型となった原稿が文庫オリジナルで発表されたもの。
月彦・黒蜜糖・銀色の三人は共通ですが、話の流れやディティールが違います。夏至祭の方が可愛らしいという印象です。三人の性格も少し違います。ミシンは共通で出てくる。
以下ネタバレあり

野ばらとの比較

琥珀色

『野ばら』では、祖父が飼っている”琥珀”縞の猫がいましたが、今回祖父が着ているのは琥珀色の単衣。

紅色と白色

野ばらでは紅と白の対比が印象的でしたが、今回も出てきています。今回は対比というまでではなさそうです。
紅=ミシン工場の夜間照明、楊桃(ヤマモモ)の果実酒
白=棠梨(ずみ)、芍薬、野茉莉の粉末

紅玉色の果実酒

本作では楊桃(ヤマモモ)の果実酒が出てきますが、夏至祭には欠かせない飲み物のようです。下記2作品にも登場しています。

都づくし旅物語(遊覧旅行)」の小さな紅いビー玉、「鉱石倶楽部」の硝子球儀

祖父

祖父の発見した腕時計が、不思議な巡り合わせに結びつきます。過去と未来が重なり合っているような世界。「都づくし旅物語(遊覧旅行)」の「遠い夏の午后」でも、祖父と出かけている際に、帽子で不思議なことが起ります。
魚たちの離宮」の文庫版のためのあとがきは、「祖父の辞書」というタイトルでおじいさんから受け継いだ辞書の話なので、おじいさんに思い入れがあるのかな…と想像してしまいます。

火宵の月(平井摩利)

俺様イケメン陰陽師×両性具有の子のお話です。

文庫版が実家にあるので取り返したいです…
まだBLという言葉が無かった時代の作品なので、作者さんのあとがきに「今思い返せば、ある意味BLだったのかも?」と書いてあったと記憶しています。

両性具有の火月はカラダの関係を持つと、相手と逆の性別になるという設定です。
イケメン陰陽師の有匡様に一目ぼれして迫るのですが、なかなか抱いてくれません…

火月は性別が決まらないまま成長すると、体調が不安定になってしまい、ときおり熱を出して寝込んでしまいます。
有匡様もまんざらでもないので、そんな姿を見てつらく思うのですが、「本当に俺でいいのか?」と悩んで踏み切れません。最高ではありませんか???

最初は少年のようだった火月が、だんだん美人さんになる成長過程も最高です。