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左近の桜シリーズ

魂魄系の和風ファンタジー。四作目は『銀河電燈譜』『水迷宮』のような因果系の雰囲気もあります。
結局、全容を把握するにはどう読んでも頭数が足りないようです…

三作目まではさほど難しくないように思いますが、四作目が長野さんのなかでも難解度が高いです。文藝のインタビューで「新世界を読み返したら簡単すぎた」とおっしゃっていたので、そこから難易度が上がっている気が私はしています。

シリーズの順番

①左近の桜
 桜蔵16歳・高校二年。

②咲くや、この花

③さくら、うるわし

④その花の名を知らず
 桜蔵15歳・中学三年(祖父の三回忌)の回想。

登場人物

左近家

左近桜蔵(さこんさくら)︎︎ ♀:16歳/高二(一作目)。文系。死人と交わることができる。3月生まれ。
千菊(ちあき)♂:弟。中一(一作目)。
葉子(はこ):母。女将。
日子(ひなこ):母方の祖母。
辰彦(たつひこ):母方の祖父。ケモノに詳しい。柾の師匠。左近へ婿養子。桜蔵と千菊が通う高校の理科教師で、柾も卒業生。理科部。
桜生(さくらお):葉子の兄。拾い子。望月の養子になって家を出た。→望月(もちづき):質屋・八疋(はちひき)、二十代の若い男。柾の研修医時代の恋人で、今も引きずっている。
川路(かわじ):大叔父。祖母の弟。二十歳くらいに病没。
左近伊吹(いつき):日子の大伯父。黒髪峠で行方不明。=神岡茂:登山中に記憶を無くした。白鳥家の番頭となる。
芳子(かほるこ):伊吹の妹。
英尾(ふさを):芳子の娘。日子の母。
左近永門(ひさと):幸の夫。戦地へ行ったが帰還。

井川清志(いがわきよし):番頭。
茨(うばら):井川の母。産婆。
佐久間功(さくまこう):板前。四十代。十五歳のときに、番頭の母親が遠縁といって郷里から連れてきた。今も番頭の家で暮らす。
菊政(きくまさ):包丁研ぎ師。
シノブ:菊政の孫。→雨彦が宿った。佐久間を誘う。

白鳥家

柾(まさき)♂:母の夫。本妻とは子供を持たない約束。医者。旧姓白鳥。(女)を育てるのが上手い。四十歳すぎ。
遠子(とおこ):柾の正妻。母は産科の医師。
一師(かずし):父方の祖父。白鳥という姓をきらって、何人目かの妻の旧姓を名乗った。
師(つかさ):曽祖父。三度結婚、一男三女。姉妹の母は一緒だが、父は違う。辰彦の恩師。
幸(ゆき):江子と取り違えられた白鳥家の長女。
白鳥二紗(ふさ):大叔母。祖父の異母妹。
沖子(なかこ):二紗の母。旧姓白。父親の旧姓は樋口。
早久也:柾の従弟。一師の妹の息子。

白家

白清子(つくもさやこ):父方の祖父の縁者。祖父の妹。大叔母を名乗る。
白伸(つくものぼる):旅館三つ葉の息子?白鳥家の令嬢と婚約。
淳一(じゅんいち):女将の父親。
高見江子(たかみのぶこ):伸の伯母。
真央(まなか):江子の息子。
淳也(じゅんや):三つ葉の息子。

井茂治之(いしげはるゆき):白毛。茶人。永門と詰襟を連れていく。井茂は養家、父親は神岡。
早門(はやと):ハルエの元夫。遠子の同級生。白毛。

沖家

沖(おき):高校OB会の理事。自動車修理工場。
万智(まち):谷村の叔母。
千弥(ゆきや):万智の下の兄。茶碗ざくろを取り出そうそして、不発弾に逢う。
一都(かずと):万智の上の兄。千都子の父。永門の同級生。療養所にいた。
谷村千津子(ちづこ):沖の姉。沖モータースの事務員。

乾申彦(いぬいのぶひこ):一師の先輩。沖の従弟?桜蔵の大伯父。母方の祖父の兄。左近家の井戸の番人。→日子と縁談があったが、すでに白家の娘と子があった。清子?

樋口温門(はると):巨石があった商屋の姓。沖子の父親。
水門(みなと):温門の弟。永門の父親。

西方日帆(にしかたかほ):不動産屋。遠子に似ている。
一序(かずのぶ):日帆の父。
紅江(あきこ):日帆の従姉。

ハルエ:遠子の同級生。多仲亭の娘。早久也と再婚。
白鳥ヨハン:ハルエの息子。=シラカワヨフネ:学生。

桜蔵の関係者

真也(まや):桜蔵の一級上の女ともだち。予備校に通っている。医学部志望。両親は遠子と古い付き合い。
久生(ひさお):大柄な桜蔵の級友。理系。
隼人(はやと):久生の犬。
森本里(さと):久生が連れている小柄な女子。

柾の関係者

浜尾一史(はまおかずふみ)♂?:宿の常連客。社会心理学者。37~8歳。妻子持ち。柾は学生時代から知っている。
浜尾芳(かおる)︎︎ ♀:浜尾の従弟。十七歳で亡くなっている。浜尾の最初の女で、柾も知り合い。
清千舟(すがちふね)♂:三十代半ば。教授。桜蔵の担任、書字学研究室。柾の知り合い。妹と弟がいる。
日文(ひふみ):清の異母妹。
チャロ:柾が桜蔵に贈った犬のぬいぐるみ。Cのタグがある→千早の飼い犬。
船田千早(ふなだちはや)♀:医院の息子。柾の昔の女で、チャロと呼んでいた。
石堂加奈子(いしどうかなこ)
マナ:加奈子の娘。
チャイ:加奈子の飼い犬。

上原家

上原司(つかさ):婿入りした男。
弥子(ひろこ):司の娘。
弥(はるや):高三の司の義弟。どちらもいける。工学部志望。→蜃が乗り移る
門倉(かどくら):医師。

緑の月関連

関谷孝三郎(せきやこうざぶろう):三男。
洋二郎(ようじろう):孝三郎の次兄。頬に傷がある。
慶子(けいこ):孝三郎の姉。
佳央(よしお):慶子の息子。
日野千可琉(ひのちかる):詩集の作者。二十歳にならず戦死。姉の婚約者を奪ったことを告げ口される。
千波琉(ちはる):千可琉の姉。→真也の母方の曾祖母。
市川(いちかわ):関谷の運転手。
シュガー:関谷の猫。

その他

羽ノ浦昆(はのうらこん):千菊の担任。理科教師。養父が亡くなった?分厚い眼鏡をかけている。酒を飲むと人格が変わる。浜尾の知り合いが養子で亡くなった男と瓜二つ。
六月一日晴(クサカキヨシ):蝶捕り師。
萬来(うるき):学校の隣のうるさい小金持ち。
梶岡(かじおか):千菊の同じ組の祖母。
横笛:遠子が呼んだ茶人。

ざくろ・しろうづ・あけび

五十年前に亡くなった森:桜蔵は一師と行った

黒髪峠:白鳥家が所有する山の中。
巌のひび割れのなかに蛇黒(ざくろ)と白貴(しろうず)が棲み、魄を食べて百年生きる。

〈三つ葉〉みつは
もとは蔵元だったが、今は宿になっている。
蛇黒というお酒を造っていた。
幸と思われる女の祖父の家は醸造家

イモンジの家の焼け跡:アケビ、頭の無い白骨
→前の日に〈蛇黒〉を買い求める

蛇黒(ざくろ)
・黒い石榴
・お酒
 イモンジが買い求めた
・茶碗
 幸が持ち出したまま行方不明
 沖家の庭
 清子を名乗る女が探していた
 空の函が白鳥家にあった

白貴(しろうず)
・白い石榴
・お酒
 湧き水を髑髏で濾す
・茶碗
 桜蔵が電車に乗った際に拾う
 白鳥家の婚約祝いに登場
 江子の息子の真央が持ち出して行方不明になる

黒白の石榴は実をつけない→男の化身

朱薇(あけび)
・茶碗
 紅麴。
 乾の家にある
・三百年の樹
 イモンジの家
 中華料理屋
 ミナトビル
・左近家メス、柾の家オスで、現在は千菊が受粉
 →女系の左近家と白鳥家のつながり?

巨石
・師が三陸の峠から持ってきた→白鳥家の墓となる
 黒い石榴が植えられている
・多仲亭の紅吹
・沖家の庭
・乾家の石神

キーワード

女性は現実的なので魂をつかめない
魂は天へ、魄は地へ

現実の人と交わることで浄化される

風はや(ちはや):京都の紙卸売問屋。
枇杷:天神さま
黒い蝶:転写する→魄へ転写された
玉の緒:タマシイを繋ぐ紅い糸。
白雪コウを初雪に埋めると、タマシイが凍って結晶になる
ハマグリ:蜃。虹を吹く。
黒面(クロツラ):屍を喰う冥府の犬。
雨彦(あまびこ):ヤスデ。
タマシイを喰う鳥
蛟(みずち)
ギョク:未練があると重くなる
浄玻璃:罪を映す
カワホリ:ヌケガラの仕分けをする
石榴は魄で育つ
鵺(ぬえ):祖母の葬式に現れる。呪いを解くために黒い髪が必要。曾祖母の夫?が心を奪われたため封印された。
祖母が鏡を埋めた→水琴窟
ジャコウアゲハ
クチナシ:『箪笥のなか』と同じ説明

祖母の兄(大伯父):桜の季節に養子にきた
サネカズラ:あの世で逢う

辰⇔戌
☆左近解説境界があいまい

蛇の女

・左近家は女系(伊吹が行方不明になり、芳子が婿をもらう)
・女は女役のことではないらしい
・蛇の女は人間のからだを借りないと生まれない

『あめふらし』のさゆりも、女の躰で陸にあがって出産する蛇という話がありましたが、
蛇は女の躰でないと子を産めず、それを重宝がっている蛇性の家系?
桜蔵は女の蛇で、清子もうろこのようなものが見えていた。

蛇黒(ざくろ)と白貴(しろうず)
黒い石榴と白い石榴の異名でもあり、実をつけないことから男同士が絡み合っていることをほのめかしている?
→オスの蛇ならば、女のからだがないと子がつくれない

作中で柾のように男の恋人がいると思われるのは
・白家の伸、高見の真央(心中)
・井茂治之、左近永門、学生服の青年?
・桜生

概算年表

四作目の概算です。おおよそ目星をつけるためのもので、正確ではないです…

1881年:伊吹生まれる
1898年:伊吹が消息不明
1914~1915年:英尾11歳、母が伊吹を街で見る
1923年:江子と幸が取り違えられる
1934年:一師が生まれる
1942年:十六夜の茶会(幸、治之、永門、青年、老人)
1947~1948年:清子生まれる?江子が東京で伊吹を見かける。
1947年:半夏夜の茶会(申彦、千弥、淳一/永門)
1964年頃:柾生まれる
1977年:夜船で伸と真央が心中
2007年:江子が亡くなる?清子は58~9歳のはず。

家系図

手書きですみません…

※桜蔵の生い立ちのヒントのようなもの※
柾の祖母の着物を仕立て直した服を着る女性:顔が桜蔵に似ている。好きな男が桜生に夢中になり、カッとなって殺してしまった。男のときは警察官だった。
左近永門:沖家の人たちが桜蔵に似ているという。
「蔵」は醸造家?と聞かれていた→白家はもともと酒蔵で、左近伊吹(神岡茂)が仕えていた。

大元を辿れば左近家っぽいものの、永門が最終的にどうなったか(幸と婚約して、戻ってきたときどうしたか)、子供はどこにいるのかが不明なのでここかもしれないと思いつつ…

※幸の子供※
幸は永門と婚約していたけれども、恐らく白家の男との子を身ごもっている。男と交わった後に自分が白鳥ではないと気付いたのか、「因果の子」と云っている。男と幸は血が繋がっていて、おろそうと思ったが治之が引き取ると云っている?
本当に引き取って育てたかは不明。

・最後に乾が言っていた愛人になりすましている男は?
 →家系図的には一師がおさまりがいいんですけれども、出てくる女が少ない…
・乾の妻子
・十六夜の茶会にいた青年
 →治之が永門と一緒に連れて行こうとした詰襟のこと?

神様が殺してくれる

表紙がリニューアルされ、書店で気になって購入した作品。(アマゾンでは女性の写真ですが、イラストにリニューアルされました)
解説が萩尾望都先生というのも「これは!」と思い…

主人公はインターポールの事務員で婚約者がおり、何の問題もない生活を送っていましたが、ある日警察がやってきます。主人公が大学時代に同室だった美青年が殺人現場におり、主人公がやったと供述している。そして、その美青年は主人公のことを「神様」と呼んでいた。
主人公は美青年と数年ぶりに再会し、変わらない美貌に目を奪われ、妻を抱いている時も青年のことを考えるようになる……

これは本当にネタバレ厳禁な作品なので、全然詳しいことは言えないんですが…
あまり多くが語られないまま終わります。それが消化不良という人もいるかもしれませんが、そこを補完したくなるのが面白さだと感じました。

水迷宮

汪(うみ)の巻・瀧(たき)の巻の二巻。「みずめいきゅう」と呼んでいたら、「すいめいきゅう」が正しかったです。

銀河電燈譜」と同じ因果系のお話で、時代感は「雪花草子」です。銀河電燈譜には家系図がありませんでしたが、本作には家系図があります。読み仮名も難しいので助かります…
先祖が水の化身を怒らせてしまったために、その呪いが次世代に現れるお話です。世代によって起こるできごとや関係性が異なって面白いです。お耽美な驚きエピソードの数々…

【登場人物】
作成中
呪いが現れた人物、美少年整理

新世界

全5巻のSFシリーズ。時間がかかるかなと思って二の足を踏んでいたんですが、読み始めるとあっという間でした。
イッキ読み推奨です…

テレヴィジョン・シティ」では表現がやんわりしていたセクシャルな部分が、本作ではハッキリ書かれています。長野さんが植物や昆虫の生殖ブームだったらしく、擬人化したらどうなるだろう?というところから始まったとのこと(文庫の巻末インタビューなどにあります)。
登場人物は我々のような人間ではなく、昆虫・植物の擬人化(少年化)という理解の方がいいのでしょうか…

以下、的外れなところはあろうかと思いますが、忘れないようにまとめておきたいと思います。

文庫版巻末

文庫版の各巻末に付録があります。すべて5thまでの内容を含みますので、読了後に読んだ方が分かりやすいです。ただ、読む前にざっと目を通しておくと、ストーリーの理解がしやすいと思います(ただしネタバレがあります)。私は読む前にムックに目を通していたので、ぼんやり内容が入った状態で読み始めました。
2nd~4thは「文藝1998秋号」に掲載のものの再録で、インタビューとQAはムック「文藝別冊 三日月少年の作り方」にも掲載あり。ムックには図解はないですが、巻頭にカラーで全巻の表紙の掲載があり、それぞれ文藝1998秋号とは違うコメントがついています(ムックは解説というより制作秘話に近いです)。

1st:田野倉康一さん解説
2nd/3rd:ロング・インタビュー
4th:新世界』をめぐるQ&A、図解・カバーイラスト集
5tn:文庫版のあとがき

『新世界』を一読しただけでは何の話か分かりにくいのですが、これらを読むと少し理解が深まります(と私は思っています…)。
文藝に小特集が組まれるなんて、当時の人気すごかったんだなと想像しています。

単行本と文庫

単行本と文庫では、表紙が少し違います。
単行本の1stは、螺旋階段をイオとシュイがのぼっているシーンですが、文庫本は少年(ハル?)になっています。他の巻がすべて少年のイラストのため、文庫版にするにあたり統一感をもたせたそうです。
また、ロゴも一新されています。
単行本は儚い感じがしますが、文庫はスタイリッシュな印象です。

登場人物

※ネタバレしかないです※
とりあえず、作中の流れのままのメモと、その後に「結局何だったの?」という表です。
本作では夢や幻覚が挟まれて、人物名が出てこない場合があります。その際には人物の特徴(特に睛の色)で判別しますので、色を覚えておくのが大切です。

人物一覧

イオ

太陽(ソル)の光に弱いため、夜間学校に通っている。碧の睛。名は「自我」という意味。ラシート?蒸留器官を持つ。→ソレンセンとエヴァの子だが、提供者(女になるための器官の培養者)となるためシュイの弟として育てられる。→ソレンセン(ラシートの女)がラシートの女として産んだ子供。後継者となる。

シュイ

イオの兄。灰色(銀色・白銀)の睛。アスオン→ミュラーの子で、HALASSの男から女にされようとしていた。

ミンク

ラシート。美しい顔で、話は出来ない。銀杏(ヒスイ)の睛。鳶色の髪(オーバーン)の毛先だけ蜜色に光る。名は「脳」という意味。
→イオが変光睛(ルシアス)しているとされる(躰を共有しているかは不明)。

ソレンセン

医師。淡青色(みずいろ)の睛。母星化した際に睛を《TRAN》している。
→ミュラーによって母星化されたラシートの女。夢で出てくる繃帯の少年。

ジャウ

ハルに仕える亜人。榛色(ヘーゼル)の睛。蜂の巣にいたところを、ソレンセンが機関構成員(メンバー)に入れた。蒸留器官を持つ。→HALASSとラシートの混血で両性、肌の色が亜人に近かった。ミュラーとラシート(ソレンセンに似ている)の間にできた子。

ハル

イオの学校の上級生。ライスーン。
→P.U.S.に罹り《女》になる途中。治療のためにゼルを欲しがっていた。→母星化され女にシフトしたが、躰はライスーンのまま。

レト

病院の少年=ラシート。シュイとソレンセンの連絡係。意思疎通は出来ないが、意志はあるため、シュイと睛で会話する。

セシェン

ハルの長兄。→ライスーンでP.U.S.に罹り《女》なので《姉》。1stで子がいるが、シュイとの子?

ミーモ

P.U.S.のため太り出して夜間部に移動してきた生徒。

ラルゥ

シグリ系で、ミーモの《姉》=《女》。シュイと対(ペア)。

リュカ

アスオンで優等生だったが、脳を歪められ今は病院にいる。→母星化され躰も女にシフトした。

エヴァ・フランカ

ソレンセンの妻。医療局。黒髪で睛は緑。→実は双子の姉妹。

イゾアール

マザーワート植民政府参事、アイスの会長→ラシートの女。正式な後継者ではない。

ミュラー

マザーワート植民政府副参事。→HALASS。

最終種族・性別

※親については後ほど書きます。

人物名母星化ラシートHALASSライスーン※親
イオ★女ソレンセンとシュイの子
シュイ★(もともと)★男ミュラーの子
ソレンセン★女
ジャウ★両性ミュラーとソレンセンの兄との子
ミュラー★(もともと)★男
イゾアール★女
ハル★女
特徴成長する女は匂いがある太陽光アレルギイがある

用語

地名

新世界

母星と夏星の間の人工集合天体。行くには許可証と資金が必要。身体機能が向上するという。

マザーワート

母星系の人々が多く住むところ。

夏星(シアシン)

かつてラシートを頂点とした砂丘地帯の都市がある小さな星だったが、母星系に侵略された。ここに住んでいた種族は別の球体(オーブ)=新世界の人工天体?に移される。今は滅んでマザーワートとなっている。

オシキャット

作品の舞台。夏星系の種族が移り住んだ場所。

蜂の巣(ルシエ)

亜人の居住区。

チュンハ

港町。闇市がある。

カピシオン

ラシートは「夏海(マーレ)」と呼ぶ。太陽(ソル)ではなく白色煌燈(オーロライト)が光源。

※全体的な印象
漢字名とカタカナ名があるが、夏星が使う呼び名では漢字名で、母星系はカタカナという印象。
母星が気象変化で住めなくなり、代わりの居住区を探したところ、夏星の種族を追い出してマザーワートとする(「侵略の時代」)。夏星の種族はオシキャットへ。これが、数多くの天体が集まる新世界の一部の地域。

組織

医療局(オス)

マザーワート植民政府管轄の医療組織。

ICE Inc.

母星系の人々の法人組織。オシキャットで珍しい物質を手に入れて利益を得ている。

種族・階級

ラシート

ゼルを持つ特別な種族で、唯一P.U.S.に罹らない。今はない夏星(シアシン)では最上位階級だったが、脳が退化させられ現在はオシキャットの病院に収容されており、“永い眠り人(スリーピング・ビューティ)”と呼ばれる。

ラシートの女:一世代に一人だけ法的に認められた者が後継者となり、覚醒した時にだけ記憶装置のゼルを生成する。先天的に女の匂いが分かる。覚醒するにはHALASSの男が必要。

アスオン

最下層の階級。哈蜜(ハミ)を蒸留し、恩寵の注入(アンフュージョン)を強いられる。

ライスーン

特定のアスオンを動けなくする。哈蜜(ハミ)を蒸留するが、恩寵の注入(アンフュージョン)は地位の低いアスオンに押し付け、自分たちの哈蜜は高く売りつける。

シグリ系

P.U.S.の発症率が高く、ゼルを受け付けない体質のこと。

母星系

侵略してきた種族。生殖システムは一元的。人口減少のため、男性は結婚が義務付けられている。→人間に近いと考えると分かりやすいかも。老化と生殖対策のため侵略し、オシキャットから利益を得ようとしている。

母星化(フォーミング):夏星系の躰を母星系の種族のものへ作り替えること。夏星系の種族は成長が一定時期で止まるが、母星化すると成長が始まる。

HALASS(ハラス)

母星系の少数民族で、男しか生まれない。とても長生き。女性器官の退化した部分にゼルを注入できる。身体能力は優れているが、引き換えに光に弱いなどのアレルギイを発症する。

亜人(アジヤン)

顔以外を布で隠し、年老いた容姿。躰は人口でなくても修復できる。母星系の種族が人工交配する過程で生まれた。哈蜜を取り出すことができる。

船員

身体はほぼ人造。

生殖システム等

《PRES(プレ)》:躰の一部を様々な素材で模ったもの。欲望を満たす。
《TRAN(トラン)》:躰の部位・器官を交換する。
紅瓊(ルビオ):唇
哈蜜(ハミ):アスオンやライスーンだけが持つ蒸留塔で生成され、ラシートや《女》の糧となる。燐光と断食の後に生成されるが、ゼルに触れるとすぐに生成される。
恩寵の注入(アンフュージョン):哈蜜の注入。母星系は余暇(レク)と呼ぶ。
燐光(スパアク):14~15歳で初めてするのが一般的。躰の下位器官を蒸留塔に変える。
断食(ジヨルノ):燐光の後、哈蜜を生成するための数日間の絶食。
ゼル:ゼラチン質の透明な塊。P.U.S.による《女》化を防ぐ効果がある。未分化の状態でラシートの体内で生成され、自身の意志でA型かS型に転化(トランス)させる。記憶が込められている。
ASSE(アス):ライスーンに合うゼルの型。翠緑色(マラカイト)になる。
SIAL(シアル):アスオンに合うゼルの型。海王碧(ネプチュン)になる。
P.U.S.:《女》になる病気で、14~15歳で発症。超肥満で膨張し続ける。アスオンやライスーンの子を産む。
《女》:肉塊(マツス)となり、脳が溶けて記憶が無くなる。母星系(≒人間)の性別としての「女」とは異なるので《》が付いている。
花唇(フィオル):《女》の交配に関わる部位。
蛋白粉(オーパル):《PRES(プレ)》する気があると買い手に知らせる粉。
貝蛸の船(ノーチラス):哈蜜を求める亜人の目印。
“小さい子”:11~12歳から燐光(スパアク)を経験するまでの呼称。胸腺があり、燐光すると脂肪に変わる。→インタビューより、胸腺は昆虫の変態を司る部位にあたるとのこと。燐光することで変態し、蒸留塔ができるようなイメージ?
対(セット):提供者(ドナー)と《女》の交配ペア。17~18歳で通知が来る。
《融合》:一部のラシートが可能で、異なる機能を持つ個体へゼルを移す。→ソレンセンがシュイに行う

その他

CODA(コーダ):コンピュータのようなもの?
身体座標(フィスグラフ):躰の状態・履歴
人工水晶(モリオン):コンタクトレンズのようなもの
殻(シエル):鋼青(ワイヤ)の先に鉤のある武器。
歩行用具(カシエ):歩くことが出来ないラシートの歩行を補助する。
変光睛(ルシアス):周期的に目の色が変わる体質。
触角機能(アンテナ):オシキャットの視覚の弱いものに備わった、存在を感知する機能。
虫(ピス):飲ませることで、体内で悪さをする。→おそらく階級の上の者が下の者へ強制的に呑ませられる。
拘束寝台(サラマンダー):動きを抑える器具。
休眠(ケス):ミュラーがソレンセン夫妻と子、息子にかけた。
太陽(ソル):オシキャットの熱源。
里親制度:マザーワートがつくった制度で、円滑にするためにオシキャットの少年は11歳くらいまでの記憶を奪われる。
フリシア:暗紫色の花で、数年に一度だけ白い花を咲かせる。夏海では一年中白い花が咲く。(長野さんが造った架空の花だそうです)
焔の蝶(マンダリン):幻影に現れる蝶。砂丘に住んでいる。通常は南下の航路に夏海は入らない。
“R”電話:新世界の定点観測所を読み上げる。

時系列

シュイの夢か真実かも分からないので、時系列に整理しても無駄だと思いつつ箇条書きしてみます。主に過去に何が起こったかなので、後半しりすぼみに…

・イゾアールは夏星にやってきたHALASSにラシートの女の後継者を渡し、ゼルを奪って正式な後継者となろうとする。
・イゾアールはライスーンと結託して、HALASSに夏星を侵略するよう導く(=侵略の時代)。夏海で眠っていたラシートを”永い眠り人(スリーピング・ビューティ)”にする。
→この時、ミュラーはラシートのなかにいたソレンセンを、カピシオンに連れていく。シュイもここで静養しており、そこでソレンセンとシュイが出会う。※5th文庫P171はこのシーンだと思われ、ソレンセンがシュイを選んだのは偶然じゃないという。
・ソレンセンはミュラーによって母星化される。
・ソレンセンはシュイの躰へゼルを移す《融合》をし、ラシートの記憶がシュイに移る。《恩寵の注入(アンフュージョン)》もした?
・(成長した?)ソレンセンはシュイの担当医になる。
(・シュイがカピシオンの旅荘で過ごし、担当医のソレンセンに手紙を書く。)休眠明けかも
・患者のシュイ・ソレンセン夫妻と子がマザーワートで《休眠(ケス)》、妻子が行方不明になる
→先に起きたシュイはイオを連れ出して砂丘に逃げたが、倒れているところに焔の蝶マンダリン(=HALASSとラシートの出会いの目印)が群れているのを発見される。

※ここまでのシュイの(ソレンセンにとっても重要な)記憶は、その後のオシキャットでの治療でなくなっていた。ミュラーに言われて思い出す。→ゼルに組み込まれていた

・五年前:ソレンセンが収容所でオシキャットで患者(シュイ)を見つける。未分化のHALASSはオシキャットの”小さい子”に似ていたため、間違えて連れてこられた=前妻のゼルが必要
・ソレンセンがシュイを養子にする。
・2nd:シュイがイオを病院から連れ出す
・1st:イオがシュイに重症を負わせる
・ジャウ重症
・5th 5章:シュイはミュラーの息子としての記憶を植え付けられる(カピシオンの記憶がある)。
・すべてが終わる

焔の蝶(マンダリン)、信号音(シグナル)

QAやインタビューより、マンダリンのモデルは越冬のために南へ移動するオオカバマダラ。世代が変わっても、遺伝子に組み込まれている”記憶”によって、南へ移動し冬を越す。
ラシートの名前を読み上げ(記憶を呼び起こす信号音シグナル)、「集合せよ」「もう一度ここへ戻ってこよう」というのは、故郷・夏星へ戻ろうという記憶がオオカバマダラのように潜在的に組み込まれているもの?

ちなみにソレンセン本人登場前に、ラシート名前読み上げのなかに入っているんですよね…伏線わい…

ラシートの名前を読み上げは、インタビューであるような「テレヴィジョン・シティ」や「天体議会」の無機質な音に近い印象です。

ラシートの女の覚醒

ラシートの女として覚醒するには、「HALASSの男」が必要。シュイ・ミュラーがHALASSの男です。ジャウはHALASSとラシートの混血で、男ではなく女にもシフトします。

①ソレンセンの覚醒
シュイとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。このときソレンセンは繃帯の少年の姿であり、《融合》を行ってシュイにゼル=記憶を移す。→この時点で、後継者としての機能も移る?
一世代に一人のため、イオが覚醒する時にはソレンセンは女としての機能を失っているかも。

②イゾアールの覚醒

ジャウとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。ただしイゾアールはHALASSの”男”が覚醒のカギになることを知らなかったので、ジャウが”女”にシフトしている時にのみ行っていたため、覚醒が不十分だった。

③イオの覚醒

シュイとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。ちょっとタイミングがあやふやですが…

・イオが完全に女として覚醒し、不完全なイゾアールに勝る
→これがソレンセンが意図していたことで、最後にイゾアールがイオに虫(ピス)を呑ませようとしても、躰が動かず押し返された。種族の力関係ではイオが勝っていたため。
・ソレンセンはミュラーに機能的に勝っていた
→上記はエヴァのセリフですが、覚醒したラシートの女がどの種族よりも強い?機能的にソレンセンがラシートの女と気付くはずがないというのが引っかかりますが…

ラシートの女の匂い

ラシートの女の匂いは、先天的にラシートの女が嗅ぎ分けることができる。HALASSの男もラシートの女の匂いが分かる。
ジャウ(ラシートの女):イゾアール・ソレンセン・イオの匂いを嗅ぎ分ける。
シュイ(HALASSの男):ソレンセン、イオ、ジャウの匂いを嗅ぎ分ける。
→当初からソレンセンの女の匂いをエヴァのものと思って落ち込んでいましたが、そもそもソレンセンが女であるという説…!
※ミュラーは匂いについて知らなかったので、嗅ぎ分けられなかったとソレンセンは言っている。

母親は誰か?:ジャウの場合

ジャウは最終的に、HALASSとラシートの混血で両性の子であると分かります。
父:HALASSの男であるミュラー
母:ラシートでソレンセンに似ているとミュラーは言う ※母体は別

「ソレンセンに似ている」と分かった後で、イゾアールがゼルを奪ったラシートの女が”ソレンセンの兄”であると分かります。このことから、ジャウはミュラーとソレンセンの兄の間に生まれた子ではないか?と思います。
ソレンセンとジャウの間に不思議なつながりがあったのは、血縁関係にあったからではないでしょうか。ジャウにとってソレンセンは叔父さんで、シュイは兄弟ということに…?

母親は誰か?:イオの場合

イオはソレンセンが父で、エヴァ(双子の妹)が母だとされてきました。見かけでいくと母星系×母星系の子ですが、イオにはラシートの特徴がありました。

→5thでエヴァが母親はソレンセンだと言います。ソレンセンがラシートの女とすれば母親になれるし、イオはラシートの特徴を引き継ぐことが出来る。
→となると父親は?ということなんですが、ソレンセンはHALASSの男であるシュイと出会って《恩寵の注入(アンフュージョン)》しているので、シュイが父親である可能性もアリかなと…
イオはシュイよりも軽いですが光アレルギイがあり、シュイのHALASSの特徴を受け継いでいるとすると合致します。
好色ミュラーがやらかしていたら悲しみですが笑、ミュラーは息子が二人と言っていますし、ラシートの女の匂いが分からずソレンセンを男とみなしていたのを信じれば、シュイが父親であれ!って感じですかね…

イゾアールが「ミュラーでなければ、誰がお前を女にしたんだ」とソレンセンに問いますが、残るHALASSの男はシュイですので、シュイがソレンセンをラシートの女に覚醒させて、イオを宿す。バレずに生む必要がありますので、どうやるのか分かりませんが母体はエヴァ?

ここでも謎が残るのですが、ソレンセンが「前妻のゼルが必要だから探している」と当初言っていたので、そこが分かりません…

HALASSは長生きだと言いますが、長い歴史の中でラシートの女であるソレンセンの子を宿し、次はイオの子も宿し…と繰り返しているような印象です。HALASSの男とラシートが夏海に還り、航路を変えた焔の蝶(マンダリン)の群れを目印に出会う連鎖?
→これが覚醒に必要な、重要な記憶

イオの記憶

3rdで「繃帯や紐は同化する」とミンクが誰かから聞いた、とありますがソレンセン?1stでイオは初めて会うソレンセンの睛に見覚えがあったことからも、会ったことがあり記憶の奥底に眠っているけど思い出せない状態かと思います。

機能・欲望・感情

生殖活動の比喩が多発しますが、それを突き動かすものは次の3つに分けられると考えています。
「機能」・「欲望」・「感情」
以下、ちょっとまとまらない考えですがメモ程度に…

機能

快楽を得ない、作業的にこなす。
夏星系の種族が母星系の種族と恩寵の注入=余暇しても快楽は得られないため、その行為は機能的。
母星系では接吻を儀礼的に身分照会のために行い、これも機能的なもの。

欲望

欲望は階級差がある場合「支配」とセットで語られ、階級によって下位の者の欲望は上位のものに支配される。また、欲望は《女》が持つもので、境界を失くさせる。行為には快楽を伴うのが、機能的なものとは違う。種族として「欲しい」という衝動というイメージ。

感情

種族としての衝動を超えて欲する。感情を感じるシーンは以下。

①エヴァ:ソレンセンが必要とする女でいたい
②ジャウ:ハミの交流で、ジャウはシュイに心理的な影響を受ける=情愛が生まれる
③シュイ:レオやレトに安らぎを感じていた
④ソレンセン:エヴァの口ぶりから、ソレンセンが愛してるもの=シュイであり、ソレンセンがシュイを捨てなかった理由
⑤シュイ:ソレンセンに対する感情は、ゼルなどとは関係なく、ただ惹かれているから(長野さんのQAより)。休眠前から何世紀も変わらないとミュラーは言っている。

→上記から、最も感情的なつながりがあるのは、シュイとソレンセンという印象。イオとシュイは次世代のためゼルの影響っぽく、私としてはシュイとソレンセンのほうが強いかな…?と思っています。ここが一番エモいです。

※メモ:5thでソレンセンがイオと対峙した際、「身体と意識、機能と欲望」がぐちゃぐちゃと考えるシーンがありました。

境界と浸透

他の作品でも「境界」がテーマとなっているわけですが、本作で気になったところを取り出してみます。

・哈蜜を共有することで、境界が無くなり浸透する
→熱で溶けて融合する印象
・躰の像(フォルム)=少年の姿を保つためには、抑制知力が必要
 vs欲望で動く《女》は境界線を維持できずに、際限なく広がっていく。
・5th P87:シュイは繋がっている少年(ソレンセン)の躰は、外の世界の端的な比喩に過ぎず、自分が広がっていた
 5th P111:最高の快楽は、自分と外界の境界がなくなったときに訪れるとイオは云っている
→《融合》のことかと思いますが、境界が失くなる快楽とは…?

本作の境界を失った《女》は、「夏至南風」の最後の碧夏に近い印象。

残ってる疑問

第七頸椎=シュイの急所、龍骨の変化が何なのか?

※ジャウ・イオに蒸留器官がある

通常ラシートには蒸留器官が無いのですが、イオとジャウにはあります。二人の共通点といえば、ラシート(の女)ですが、その特徴なのか?ソレンセンやイゾアールがぞうなっているかを探しきらないと…

行ってみたいな、童話(よそ)の国

結構タイトル詐欺だと思うのですが(笑)、童話をもとにした残酷で官能的おとぎ話です。三作品収録。
少年たちがひどい目に合うので、苦手な方はご注意ください。少年アリスみたいな優しいお話ではありません…泣
あと全編、少年たちが飲んだり飲まれたりします。

三作品では「にんじん」が個人的に好きです。危険な少年が好きなので…森村誠一的な…

ダークな長野さんがお好きな方は、こちらもよいかと…(耽美要素はないです)

ハンメルンの笛吹き

結末が結構ショッキング。ブランケット王がかっこいいです。
《鼠捕り》という隠語の遊びがあり…お耽美です…

【目次】一、伝説/二、鼠捕り/三、鼠の王/四、大群/五、笛吹き/六、約束/七、償い

【登場人物】
ブランケット王:月の出ているあいだだけ人間になれる鼠の王。
セス、テス、ネス:市長の息子三兄弟。セスは長男だが前妻の子で、家族からも街中の人々からも蔑まれていた。
ハンス:セスをかばった男の子。

ピノッキオ

三作のなかでは平和で心あたたまる。
お耽美ではあります。特に芸人一座の息子とロミオ。少年が大男に自らムチ打たれるとか…

【目次】一、やどりぎ/二、人形/三、老樹/四、兄弟/五、旅の一座/六、芝居/七、海/八、白い一角獣

【登場人物】
ピノ:やどりぎ。白樫に育てられていたが、切り取られてひとりになってしまった。
白樫:「銀のミカエル」と呼ばれる。
ジュゼッペ爺さん:ピノを人形にした
木菟
大工の親方
天使
樟の老樹
兄弟旅
芸人の一座(親方、少年、ロミオ)
板屋楓:「雪白のラッテ」と呼ばれる。
プルチネルラ
ペーター
大蛸

海蛇

にんじん

少年の残虐性のようなものが強いです。
ピエエルがガッシリした若い男で、にんじんに趣味嗜好がバレています。ここまで言うと…分かりますね…
少年たちの目がだんだん虚ろになります…

【目次】一、赤毛とそばかす/二、休暇/三、納屋/四、スウプ/五、寝台/六、草刈り/七、水遊び/八、手紙/九、銀貨/十、御馳走/十一、釣り針

【登場人物】
にんじん:家族で唯一赤毛でそばかすのため、本名ではなく「にんじん」と呼ばれ蔑まれている少年。
ルピック夫妻:にんじんの両親。父は家にあまりおらず、母はにんじんを蔑む。
エルネスチイヌ:にんじんの姉
フェリックス:にんじんの兄
オノリイヌ:老婆の使用人
ピエエル:若い男で、オノリイヌの後に入った使用人。
レミ:まちでいちばん可愛らしい少年
マルソ爺さん:名付け親
ドノアン:にんじんの寄宿舎で同室
エヴル:にんじんの寄宿舎で同室
ルイス:にんじんの寄宿舎で隣のベッド
エピネル先生::にんじんの学校の先生
ヴィオロオヌ:舎監
マイルド:近所の女の子

淫月

絶版でネットではプレミアがついてしまっているのですが、古書市で偶然出会いまして購入。
短編7つ+長編1つです。

同性愛者の晩年を描いたものが多めです。時期的に福島さんもそれくらいの年齢のため、自伝風な印象も受けます。
舞台も地元・熊本、九州が多いです。年上好き・肥った人が好きな登場人物も多い印象。
ですが突然奇妙なことが起ったり、転生したりするので、現実と虚構入り乱れな感じです。

年上に無理矢理されちゃうシーンがいくつかあるので、苦手な方はご注意ください…

文章は分かりやすくて読みやすいです。熊本弁が出てきますが、注意書きがついています。
長編は登場人物のメモを取った方が良いです。

奇腹譚

肥った年配男性×若者

インドア大学生×日焼け田舎少年

晩夏

妻子不在時に羽を伸ばしたい男×未経験学生

陽炎

大学老教授×純朴そばかすタクシー運転手

冬野

白血病で亡くなったイケメン同僚×最後まで気持ちが言えなかった男

逝春

小説家になるために57歳で退職した男×藤蔓のように絡みついてくる青年

淫月

長編。天才画家が同性愛を知り、男をモデルに絵を描くなかで、自分の中から湧き出る熱と葛藤する。
年配男性と青年カップルも登場し、切ないです。

飛魂抄

有名な先生Y×昔Yのもとで書生をしていた男

うつろ舟

古書店で単行本を購入。装丁が本当にかっこいいし、文字が緑色のインクで刷られています。
大変にえっちなのですが、お耽美な日本昔話という印象です。伝われ。

全部面白いです。
以下、非常にざっくりなあらすじです…

護法

主人公の男は、周りからバカにされがち。
ひょんなことから不思議な力を持った神様(護法童子)と仲良くなり、「女房の顔を美人にしてほしい」と男は依頼する。

護法童子は了承したものの、「美人の顔を手に入れるために、お前の男根を貸して欲しい」と言い…
数日後に帰ってきたとき、男が密かに想いを寄せていた女の首を抱えていた。

魚鱗記

お酢を入れると色が変わる不思議な魚がおり、それが最後どれだけ跳ねるかが賭け事として流行している時代があった。
その賭け事の会場としてかつて利用されていた屋敷には、夜な夜な長女の霊が現れる。
長女はどうして亡くなってしまたのか…?

花妖記

舶来品を高額で売り生活している男が、酔っ払いの武士に絡まれる。
武士に「買うから商品を見せろ」と言われ、武士をからかおうとした男は、小さな卵型の石を見せる。

「これを女の秘所に入れると、感じない女はいない」と男。
「では、俺の女に試して感じなければ、その石をくれ」と武士。

女の家に向かうのだが…

髑髏盃

盃を集めるのが趣味の盲目の男が、髑髏で作った盃が欲しく、有名な武将の墓を暴こうとする。
そこから不吉な現象が発生するようになり…

菊燈台

三十人あまりの下人を使い、塩の生産をする長者がいた。
下人の中に美青年がおり、労働が嫌で逃げ出してしまう。

美青年はすぐに捕らえられ、折檻を受けることになる…

衆道表現があります。

髪切り

武士の家に一人娘として生まれ、男のように育てられた女性が、江戸の大火を機に世間を見つめ直す。
そんな時、家の前に謎の男が現れる。

うつろ舟

田舎の漁村に、金髪碧眼の異国女性を乗せた「うつろ舟」が漂着する。
村から出たことのない十六の少年・仙吉は、その舟が気になり、夜中に海へ出かける…

ダイダロス

鎌倉の海には、大きな船が朽ち果てていた。
かつて将軍家が宋へ渡るために造らせたものだが、結局使われず砂浜に埋まったままだ。
将軍の御座所となるはずだった場所には、美人の繍帳がかかっており、実朝の帰りをずっと待ち続けていた…
(ちょっぴり男色っぽい表現あり)

名なしの森

名なしの森

主人公の章は、中学二年生にして倒錯した考え方が身に付き、生きにくさを感じていた。
そんな章は、同じ塾に通う一つ上の先輩・宮沢に憧れ、話したいとずっと思っていた。
宮沢は成績優秀だが友人を作らず、医者の息子であり180cm以上ある体を持て余していたが、意外にも読書家であることを章は知り、話してみたいと感じたからだ。

夏休みに宮沢と汽車で一緒になり、話す機会が訪れる。
「今度、お前を”おれたちの村”へ連れていってやる」と宮沢は言う。
そこは少年少女が独自の国家を形成した、秘密結社のような集団で…

二人の関係性が危うく、とても素晴らしいです…!!

変身譜

貞子は、今やシャンソン評論家として憧れの的である千晶の顧問的存在である。
最近、千晶に纏わりつく一人の老女がおり、千晶から「私の代わりに、辞めるように説得してほしい」と貞子は頼まれる。
貞子は女と二人で話をしてみると、女は「千晶のせいで女に目覚めてしまった」と言って…
レズビアンのお話です。

干からびた犯罪

四十年前に亡くなった、かつての恋人の死の真相を探しに、多佳子は田端を訪れる。
そこで旧い友人の好子と、その仲間に偶然出会い、お茶会に誘われる。

実はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を模した奇妙なお茶会で、仲間の一人は霊媒師であるという。
霊媒師はかつての多佳子の恋人の霊をおろし、多佳子の名を呼び、死の真相を語り始める…

盲目の薔薇

独り暮らしの女の家には、たくさんの薔薇が植えられている。
だが、今年は蕾が開かない。

ある日女の家にやって来た研ぎ屋の青年は、園芸が専門だというので、薔薇を診てもらうことに。
女は薔薇の心配もしていたが、青年を何とか引き止めたいと、今後も来て欲しいと頼む。
青年との交わりの中で、女は自分がなぜ独りでここにいるかを思い出す。

青年が…めちゃくちゃいいです…

一粒の葡萄もし…

食べるとセックスに関することだけ、他人の感情が読み取れる葡萄。
それを食べた女性二人の巡りあわせのお話。

花火闇

真奈は仕事仲間の澄人と、架空の男女を造り遊んでいた。
真奈にはまた、『甘美な姉』と自分に熱い視線を送る叔父の存在があった…

関係性がもつれあう、お耽美なお話です。レズ描写あり。

あるふぁべてぃっく

資産家で年を取ってきた伯母が、親族を集める。
親族たちは、遺産相続についてそれぞれ思惑を持っており…

男色家の朝の歌

主人公は、自分の意思と関係なく体や時間を行ったり来たりしてしまう、特殊な能力を持っている。
長野さんの「あめふらし」的な雰囲気です。

男色家の切ない感情が、読んでいて悲しかったです…

刺青・秘密

※読書中

刺青

少年

青空文庫で読書済→

幇間

幇間の男の話。なんだか憎めないキャラクターで周りから好かれている。
青空文庫にもあります。

秘密

刺激を求めるあまり、女装で出歩くのが趣味となった男の話。
外出先で、昔フッた女を見つけ、何度か会うようになるが、女の家に着くまでの間は必ず目隠しをされ…

女装した時の恍惚とした感じや、美しい女性を見たときの敗北感などの表現が好きでした。
青空文庫にもあります。

異端者の悲しみ

二人の稚児

青空文庫で読書済→

母を恋うる記