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勿忘草をさがして

珍しくアマゾンのレビューより、私の方が早い!笑

とある理由で部活を辞めなくてはいけなくなった高校生・航大と、ひょんなことから出会った大学生・拓海のやり取りを通して進んでいく、推理小説です。殺人や物騒な展開はなく、植物・花にまつわるちょっとした謎を解き明かしていくストーリーです。
推理小説はあんまり…という方にもオススメの、心温まる連作短編です。私の読んだ創元社の中では圧倒的に平和。笑

航大と拓海の関係性が読むたびごとに深まっていき、成長が感じられて微笑ましかったです。
何と言っても拓海さんが本当にかっこいい。ぶっきらぼうだけど優しくて、人の感情の機微に敏感。ガーデニングと亡くなったおじいちゃんが大好き。もう好きすぎて、拓海さんが登場すると「待ってました!!」と喜んでしまいました。

続編大希望です!!

とらんぷ譚 (1)  幻想博物館

「火星植物園」
植物の根に性的興奮を覚える若者の話。
「聖父子」
父から息子に宛てた独白。殺人トリックに虚無への供物みを感じる。妻の弟が出てきて、真相は分かりませんが最後いい感じなので、個人的には義兄弟ものに入れたい。
「大望ある乗客」
様々な思いを抱えたバスの乗客。
「影の舞踏会」
年下の男に惚れた女が、男はゲイで自分に気付かれないように「仲間」と交わっていると妄想する。男同士のやりとりの描写がお耽美で最高。
「黒闇天女」
孫から恐ろしいものが送られてくるという祖母。為親の美少年描写がすてき。(紺ビロード、白い長靴下…)
「地下街」
ハーフの美少女催眠術師に一目ぼれし、追いかけると…
「チッペンデールの寝台」
家具職人の白坂と、白坂の作ったもので家を埋め尽くす織原。白坂を独占している織原、白坂は気にしていないように思えたが…
「セザーレの悪夢」
精神病棟の医者と、昔の患者について話す。
「蘇るオルフェウス」
近親相姦もの。杏介くんの美少年描写が美しいです。
「公園にて」
老人と人を傷つけることを何とも思わない少年の話。
「牧神の春」
ある日突然、自分に体毛と角が生え、山羊になっていることを発見する…
「薔薇の夜を旅するとき」
薔薇園がつぶされるのを阻止しようとする男女。
「邪眼」
精神病の青年と、それを取り囲む三人の医者。

虚無への供物

真実が二転三転して付いていくのに必死でしたが、とても面白かったです…!

匂い系小説として紹介されるのを見かけるのですが、個人的には中井さんは短編の方がお耽美かな…と思います。
亜利夫が結構美少年好きで、蒼司と藍ちゃんにドキドキしています。その程度のほんのり香るくらいです…

藍ちゃんが気が強くていい子で、本当に可愛い。
口悪くて、すぐ寝てて可愛い。ずっと可愛い。笑

以下、読むときに使った登場人物メモです。
※名前で展開が分かってしまうので注意※

主要人物

光田亜利夫(みつだありお)

商社サラリーマン。ゲイバーに通っている。アリョーシャと呼ばれている。

奈々村久生(ななむらひさお)

シャンソン歌手。

牟礼田俊夫(むれたとしお)

久生のフィアンセ。亜利夫とは父親同士からの付き合い。氷沼家とも関係あり。

氷沼家

*四代目*

蒼司(そうじ)

紫司郎の息子。亜利夫と学校が一緒。

紅司(こうじ)

蒼司の弟。叔父の橙二郎と仲が悪い。

藍司(あいじ)

菫三郎の息子。みんなから「藍ちゃん」と呼ばれている。ゲイバー『アラビク』のボーイで、亜利夫に気に入られる。

緑司(りょくじ)

橙二郎の息子。

*三代目*

紫司郎(しじろう)

長男。洞爺丸事故で死亡。

朱美

長女。原爆で爆死。

橙二郎(とうじろう)

次男。漢方医。

菫三郎(きんざぶろう)

三男。洞爺丸事故で死亡。

*二代目*

光太郎

火事で焼死。

綾女

*一代目*

誠太郎

氷沼家関係者

吟作(ぎんさく)

じいや。紅司の味方をしている。

八田皓吉(はつたこうきち)

番頭代わり。不動産業を営む。

藤木田誠(ふじきだまこと)

お目付け役。新潟に住んでいる。

その他

キミちゃん

ゲイバー『アラビク』のボーイ。

百瀬

藍ちゃんの札幌のお店の番頭。

吉村

橙二郎の軍医時代からの子分。

真名子肇(まなこはじめ)

巡査部長。

鴻巣玄次(こうのすげんじ)

本名川野元晴。

伊豆金造(いずきんぞう)

玄次と同じアパート。仕立て屋。

月原伸子(つきはらのぶこ)

藍ちゃんの同級生で恋人。

ページ数メモ

※講談社文庫新装版

間取りP54
家系図P176
麻雀休みP296

烙印

宇陀児さん2冊目です。やっぱいい!!

★烙印:書類偽装がバレそうになり、事実を知っている子爵を殺そうと画策する男。
★爪:好きな女性を友人に盗られ、猫を使って友人を殺そうとする男の話。
★決闘街:3人の男がスキーに出かけた際の駆け引き。2人が結託して、気に食わない1人を谷底に落とす。
★情鬼:女に裏切られ続けた、悲しい男の話。
★凧:「少年ミステリー倶楽部」で初読。乱歩先生も絶賛らしい。
★不思議な母:一人の女性の追想。前の夫が殺され、その犯人の真相を追っているが、ふと今の夫が犯人ではないかと疑うようになり…
★危険なる姉妹:美しすぎて関わる男性がみな不幸になってしまう姉妹。
★螢:末っ子の弟が誘拐され、身代金を要求される。条件は、一家の長女が一人で身代金を列車の指定の場所へ運ぶこと。その一連の出来事を見つめていた次女は、ある疑念が湧き…

魔性の季節

魔少年」を少年ミステリー倶楽部というアンソロジーで読み、解説で少年が介在するアンソロが発行されているということで探し出した一冊。もう本当によかった…タイトルも良すぎません?良すぎます。
収録作品は選ばれただけあって、どれも本当に破壊力抜群です。復刊しないかな…

★暗渠の牧場:売れない作家である主人公の男は、近所の森で不思議な雰囲気の少年に出会う。共通の知り合いだった女性が、不審な死を遂げ、主人公は真相を探るが…
★魔少年:少年ミステリー倶楽部参照、めちゃくちゃオススメ。
★無能の真実:ひも男と結婚してしまい、後悔する主人公。そこへ昔好きだった男が息子連れで戻ってきて、一緒に暮らし始めるが、息子は自分を母と認めてくれない。
→タイトルからお察しかと思いますが、ひも男の真実が優しすぎてバチバチに泣きます。
★空白の凶相:主人公の男は、小さい息子が見ているのではという不安にかられ、妻との夜の営みに集中できずにいた。それは彼自身、幼少期に両親が自分に構わず醜悪な体位で行っていたので、トラウマになっており…
★青の魔性:主人公の男教師は、担任だった女生徒を忘れられずにいた。不思議な雰囲気をまとった少女で、他の生徒からいじめられていた。彼女の母親の相談を受けるうち、男教師は母親と関係を持ってしまい…
★精神分析殺人事件:田舎の小学校に勤める女教師が殺された。容疑者に上がったのは、緑色の虫だけを殺して土に埋めるという、変わった儀式を行う少年で…

夢の殺人

主人公の藤次郎は、住み込みのレストランで出会った女性と恋仲になる。
しかし、そこに美青年がやってきて、彼女は美青年の方に気を取られ…

考えさせられるラストなので、ぜひネタバレ無しで読んでいただきたいです。

偽悪病患者

アンソロジー『少年ミステリー倶楽部』掲載の「凧」、青空文庫の「疑似新年」を読んで気になったので。
しかも最近刊行されていたなんて!!読みやすくなっていて良かったです。

大下宇陀児さんは手記・手紙形式の作品が多く、内面描写が多いのが素敵です。感情移入しやすく、それがまた辛さを倍増させます…
展開も二転三転するので、予測がつかず面白いです。

★偽悪病患者:兄と妹の手紙のやり取り形式。妹とその夫が暮らす家に、兄の知人でもある美男子がやってきて、兄は「そいつには近付くな」と忠告したものの…。この美男子描写は必見…!!
★毒:新しい妻を迎えた夫は、妻が与える飲み物で体調が悪くなっていく。それを見た子供たちは…
★金色の獏:骨董屋の主人と、金色の獏の置物を探し求める男の駆け引き。
★死の倒影:自分の顔にコンプレックスがある主人公。主人公が犯した殺人についての告白(手紙形式)。こちらも画家の先生の弟子が美少年ですよ…
★情獄:親友との友情、その妻との恋で板挟みの主人公。三人で一つ屋根の下に暮らしていてつらい。主人公と親友の、学生時代が本当に親密で…「自分が女だったら、こいつに一目惚れしていた」とまで言っています。
★決闘介添人:画家の視点の日記形式。男の弟子二人は、女弟子を取り合っているのですが、実は画家も女弟子に密に想いを寄せていて…
★紅座の庖厨:胃が弱く、すぐに腹を下してしまう主人公。ある日、不思議なレストランを見つけ、振舞われた料理はお腹いっぱい食べても、腹はくださなかった。その支配人が、「ここで手術を受ければ丈夫な胃と取り替えます」と提案する。その後厨房で見せられたのは、少年の胃を中年の男の腹へ移植する光景だった…
★魔法街:魔法使いのしわざとされる怪奇事件が次々と起こる街。最後、眉目秀麗な青年が市長の前に現れて「犯人を知っている」と言うが…
★灰人:盲人になってしまった老人と、老人に拾われた犬。老人が不在の間に、奥様が男を家に呼び出すところから、不穏な空気が家に漂い始める…