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弱法師

表題作『弱法師』を読みました。
男性医師が、難病を抱えた少年と母親に魅せられていきます。結果、医師は離婚して少年の母親と再婚し、少年の治療のために個人院を開業。少年のためにすべてを投げうちます。
そんな医師の気持ちを察してか、少年の母親は「母親の男をとらないで」と少年に言う。少年も、「先生はぼくと母親のどっちが好きなの?」と医師に問う。

ラストはほんとうに苦しいです。

神様が殺してくれる

表紙がリニューアルされ、書店で気になって購入した作品。(アマゾンでは女性の写真ですが、イラストにリニューアルされました)
解説が萩尾望都先生というのも「これは!」と思い…

主人公はインターポールの事務員で婚約者がおり、何の問題もない生活を送っていましたが、ある日警察がやってきます。主人公が大学時代に同室だった美青年が殺人現場におり、主人公がやったと供述している。そして、その美青年は主人公のことを「神様」と呼んでいた。
主人公は美青年と数年ぶりに再会し、変わらない美貌に目を奪われ、妻を抱いている時も青年のことを考えるようになる……

これは本当にネタバレ厳禁な作品なので、全然詳しいことは言えないんですが…
あまり多くが語られないまま終わります。それが消化不良という人もいるかもしれませんが、そこを補完したくなるのが面白さだと感じました。

新世界

全5巻のSFシリーズ。時間がかかるかなと思って二の足を踏んでいたんですが、読み始めるとあっという間でした。
イッキ読み推奨です…

テレヴィジョン・シティ」では表現がやんわりしていたセクシャルな部分が、本作ではハッキリ書かれています。長野さんが植物や昆虫の生殖ブームだったらしく、擬人化したらどうなるだろう?というところから始まったとのこと(文庫の巻末インタビューなどにあります)。
登場人物は我々のような人間ではなく、昆虫・植物の擬人化(少年化)という理解の方がいいのでしょうか…

以下、的外れなところはあろうかと思いますが、忘れないようにまとめておきたいと思います。

文庫版巻末

文庫版の各巻末に付録があります。すべて5thまでの内容を含みますので、読了後に読んだ方が分かりやすいです。ただ、読む前にざっと目を通しておくと、ストーリーの理解がしやすいと思います(ただしネタバレがあります)。私は読む前にムックに目を通していたので、ぼんやり内容が入った状態で読み始めました。
2nd~4thは「文藝1998秋号」に掲載のものの再録で、インタビューとQAはムック「文藝別冊 三日月少年の作り方」にも掲載あり。ムックには図解はないですが、巻頭にカラーで全巻の表紙の掲載があり、それぞれ文藝1998秋号とは違うコメントがついています(ムックは解説というより制作秘話に近いです)。

1st:田野倉康一さん解説
2nd/3rd:ロング・インタビュー
4th:新世界』をめぐるQ&A、図解・カバーイラスト集
5tn:文庫版のあとがき

『新世界』を一読しただけでは何の話か分かりにくいのですが、これらを読むと少し理解が深まります(と私は思っています…)。
文藝に小特集が組まれるなんて、当時の人気すごかったんだなと想像しています。

単行本と文庫

単行本と文庫では、表紙が少し違います。
単行本の1stは、螺旋階段をイオとシュイがのぼっているシーンですが、文庫本は少年(ハル?)になっています。他の巻がすべて少年のイラストのため、文庫版にするにあたり統一感をもたせたそうです。
また、ロゴも一新されています。
単行本は儚い感じがしますが、文庫はスタイリッシュな印象です。

登場人物

※ネタバレしかないです※
とりあえず、作中の流れのままのメモと、その後に「結局何だったの?」という表です。
本作では夢や幻覚が挟まれて、人物名が出てこない場合があります。その際には人物の特徴(特に睛の色)で判別しますので、色を覚えておくのが大切です。

人物一覧

イオ

太陽(ソル)の光に弱いため、夜間学校に通っている。碧の睛。名は「自我」という意味。ラシート?蒸留器官を持つ。→ソレンセンとエヴァの子だが、提供者(女になるための器官の培養者)となるためシュイの弟として育てられる。→ソレンセン(ラシートの女)がラシートの女として産んだ子供。後継者となる。

シュイ

イオの兄。灰色(銀色・白銀)の睛。アスオン→ミュラーの子で、HALASSの男から女にされようとしていた。

ミンク

ラシート。美しい顔で、話は出来ない。銀杏(ヒスイ)の睛。鳶色の髪(オーバーン)の毛先だけ蜜色に光る。名は「脳」という意味。
→イオが変光睛(ルシアス)しているとされる(躰を共有しているかは不明)。

ソレンセン

医師。淡青色(みずいろ)の睛。母星化した際に睛を《TRAN》している。
→ミュラーによって母星化されたラシートの女。夢で出てくる繃帯の少年。

ジャウ

ハルに仕える亜人。榛色(ヘーゼル)の睛。蜂の巣にいたところを、ソレンセンが機関構成員(メンバー)に入れた。蒸留器官を持つ。→HALASSとラシートの混血で両性、肌の色が亜人に近かった。ミュラーとラシート(ソレンセンに似ている)の間にできた子。

ハル

イオの学校の上級生。ライスーン。
→P.U.S.に罹り《女》になる途中。治療のためにゼルを欲しがっていた。→母星化され女にシフトしたが、躰はライスーンのまま。

レト

病院の少年=ラシート。シュイとソレンセンの連絡係。意思疎通は出来ないが、意志はあるため、シュイと睛で会話する。

セシェン

ハルの長兄。→ライスーンでP.U.S.に罹り《女》なので《姉》。1stで子がいるが、シュイとの子?

ミーモ

P.U.S.のため太り出して夜間部に移動してきた生徒。

ラルゥ

シグリ系で、ミーモの《姉》=《女》。シュイと対(ペア)。

リュカ

アスオンで優等生だったが、脳を歪められ今は病院にいる。→母星化され躰も女にシフトした。

エヴァ・フランカ

ソレンセンの妻。医療局。黒髪で睛は緑。→実は双子の姉妹。

イゾアール

マザーワート植民政府参事、アイスの会長→ラシートの女。正式な後継者ではない。

ミュラー

マザーワート植民政府副参事。→HALASS。

最終種族・性別

※親については後ほど書きます。

人物名母星化ラシートHALASSライスーン※親
イオ★女ソレンセンとシュイの子
シュイ★(もともと)★男ミュラーの子
ソレンセン★女
ジャウ★両性ミュラーとソレンセンの兄との子
ミュラー★(もともと)★男
イゾアール★女
ハル★女
特徴成長する女は匂いがある太陽光アレルギイがある

用語

地名

新世界

母星と夏星の間の人工集合天体。行くには許可証と資金が必要。身体機能が向上するという。

マザーワート

母星系の人々が多く住むところ。

夏星(シアシン)

かつてラシートを頂点とした砂丘地帯の都市がある小さな星だったが、母星系に侵略された。ここに住んでいた種族は別の球体(オーブ)=新世界の人工天体?に移される。今は滅んでマザーワートとなっている。

オシキャット

作品の舞台。夏星系の種族が移り住んだ場所。

蜂の巣(ルシエ)

亜人の居住区。

チュンハ

港町。闇市がある。

カピシオン

ラシートは「夏海(マーレ)」と呼ぶ。太陽(ソル)ではなく白色煌燈(オーロライト)が光源。

※全体的な印象
漢字名とカタカナ名があるが、夏星が使う呼び名では漢字名で、母星系はカタカナという印象。
母星が気象変化で住めなくなり、代わりの居住区を探したところ、夏星の種族を追い出してマザーワートとする(「侵略の時代」)。夏星の種族はオシキャットへ。これが、数多くの天体が集まる新世界の一部の地域。

組織

医療局(オス)

マザーワート植民政府管轄の医療組織。

ICE Inc.

母星系の人々の法人組織。オシキャットで珍しい物質を手に入れて利益を得ている。

種族・階級

ラシート

ゼルを持つ特別な種族で、唯一P.U.S.に罹らない。今はない夏星(シアシン)では最上位階級だったが、脳が退化させられ現在はオシキャットの病院に収容されており、“永い眠り人(スリーピング・ビューティ)”と呼ばれる。

ラシートの女:一世代に一人だけ法的に認められた者が後継者となり、覚醒した時にだけ記憶装置のゼルを生成する。先天的に女の匂いが分かる。覚醒するにはHALASSの男が必要。

アスオン

最下層の階級。哈蜜(ハミ)を蒸留し、恩寵の注入(アンフュージョン)を強いられる。

ライスーン

特定のアスオンを動けなくする。哈蜜(ハミ)を蒸留するが、恩寵の注入(アンフュージョン)は地位の低いアスオンに押し付け、自分たちの哈蜜は高く売りつける。

シグリ系

P.U.S.の発症率が高く、ゼルを受け付けない体質のこと。

母星系

侵略してきた種族。生殖システムは一元的。人口減少のため、男性は結婚が義務付けられている。→人間に近いと考えると分かりやすいかも。老化と生殖対策のため侵略し、オシキャットから利益を得ようとしている。

母星化(フォーミング):夏星系の躰を母星系の種族のものへ作り替えること。夏星系の種族は成長が一定時期で止まるが、母星化すると成長が始まる。

HALASS(ハラス)

母星系の少数民族で、男しか生まれない。とても長生き。女性器官の退化した部分にゼルを注入できる。身体能力は優れているが、引き換えに光に弱いなどのアレルギイを発症する。

亜人(アジヤン)

顔以外を布で隠し、年老いた容姿。躰は人口でなくても修復できる。母星系の種族が人工交配する過程で生まれた。哈蜜を取り出すことができる。

船員

身体はほぼ人造。

生殖システム等

《PRES(プレ)》:躰の一部を様々な素材で模ったもの。欲望を満たす。
《TRAN(トラン)》:躰の部位・器官を交換する。
紅瓊(ルビオ):唇
哈蜜(ハミ):アスオンやライスーンだけが持つ蒸留塔で生成され、ラシートや《女》の糧となる。燐光と断食の後に生成されるが、ゼルに触れるとすぐに生成される。
恩寵の注入(アンフュージョン):哈蜜の注入。母星系は余暇(レク)と呼ぶ。
燐光(スパアク):14~15歳で初めてするのが一般的。躰の下位器官を蒸留塔に変える。
断食(ジヨルノ):燐光の後、哈蜜を生成するための数日間の絶食。
ゼル:ゼラチン質の透明な塊。P.U.S.による《女》化を防ぐ効果がある。未分化の状態でラシートの体内で生成され、自身の意志でA型かS型に転化(トランス)させる。記憶が込められている。
ASSE(アス):ライスーンに合うゼルの型。翠緑色(マラカイト)になる。
SIAL(シアル):アスオンに合うゼルの型。海王碧(ネプチュン)になる。
P.U.S.:《女》になる病気で、14~15歳で発症。超肥満で膨張し続ける。アスオンやライスーンの子を産む。
《女》:肉塊(マツス)となり、脳が溶けて記憶が無くなる。母星系(≒人間)の性別としての「女」とは異なるので《》が付いている。
花唇(フィオル):《女》の交配に関わる部位。
蛋白粉(オーパル):《PRES(プレ)》する気があると買い手に知らせる粉。
貝蛸の船(ノーチラス):哈蜜を求める亜人の目印。
“小さい子”:11~12歳から燐光(スパアク)を経験するまでの呼称。胸腺があり、燐光すると脂肪に変わる。→インタビューより、胸腺は昆虫の変態を司る部位にあたるとのこと。燐光することで変態し、蒸留塔ができるようなイメージ?
対(セット):提供者(ドナー)と《女》の交配ペア。17~18歳で通知が来る。
《融合》:一部のラシートが可能で、異なる機能を持つ個体へゼルを移す。→ソレンセンがシュイに行う

その他

CODA(コーダ):コンピュータのようなもの?
身体座標(フィスグラフ):躰の状態・履歴
人工水晶(モリオン):コンタクトレンズのようなもの
殻(シエル):鋼青(ワイヤ)の先に鉤のある武器。
歩行用具(カシエ):歩くことが出来ないラシートの歩行を補助する。
変光睛(ルシアス):周期的に目の色が変わる体質。
触角機能(アンテナ):オシキャットの視覚の弱いものに備わった、存在を感知する機能。
虫(ピス):飲ませることで、体内で悪さをする。→おそらく階級の上の者が下の者へ強制的に呑ませられる。
拘束寝台(サラマンダー):動きを抑える器具。
休眠(ケス):ミュラーがソレンセン夫妻と子、息子にかけた。
太陽(ソル):オシキャットの熱源。
里親制度:マザーワートがつくった制度で、円滑にするためにオシキャットの少年は11歳くらいまでの記憶を奪われる。
フリシア:暗紫色の花で、数年に一度だけ白い花を咲かせる。夏海では一年中白い花が咲く。(長野さんが造った架空の花だそうです)
焔の蝶(マンダリン):幻影に現れる蝶。砂丘に住んでいる。通常は南下の航路に夏海は入らない。
“R”電話:新世界の定点観測所を読み上げる。

時系列

シュイの夢か真実かも分からないので、時系列に整理しても無駄だと思いつつ箇条書きしてみます。主に過去に何が起こったかなので、後半しりすぼみに…

・イゾアールは夏星にやってきたHALASSにラシートの女の後継者を渡し、ゼルを奪って正式な後継者となろうとする。
・イゾアールはライスーンと結託して、HALASSに夏星を侵略するよう導く(=侵略の時代)。夏海で眠っていたラシートを”永い眠り人(スリーピング・ビューティ)”にする。
→この時、ミュラーはラシートのなかにいたソレンセンを、カピシオンに連れていく。シュイもここで静養しており、そこでソレンセンとシュイが出会う。※5th文庫P171はこのシーンだと思われ、ソレンセンがシュイを選んだのは偶然じゃないという。
・ソレンセンはミュラーによって母星化される。
・ソレンセンはシュイの躰へゼルを移す《融合》をし、ラシートの記憶がシュイに移る。《恩寵の注入(アンフュージョン)》もした?
・(成長した?)ソレンセンはシュイの担当医になる。
(・シュイがカピシオンの旅荘で過ごし、担当医のソレンセンに手紙を書く。)休眠明けかも
・患者のシュイ・ソレンセン夫妻と子がマザーワートで《休眠(ケス)》、妻子が行方不明になる
→先に起きたシュイはイオを連れ出して砂丘に逃げたが、倒れているところに焔の蝶マンダリン(=HALASSとラシートの出会いの目印)が群れているのを発見される。

※ここまでのシュイの(ソレンセンにとっても重要な)記憶は、その後のオシキャットでの治療でなくなっていた。ミュラーに言われて思い出す。→ゼルに組み込まれていた

・五年前:ソレンセンが収容所でオシキャットで患者(シュイ)を見つける。未分化のHALASSはオシキャットの”小さい子”に似ていたため、間違えて連れてこられた=前妻のゼルが必要
・ソレンセンがシュイを養子にする。
・2nd:シュイがイオを病院から連れ出す
・1st:イオがシュイに重症を負わせる
・ジャウ重症
・5th 5章:シュイはミュラーの息子としての記憶を植え付けられる(カピシオンの記憶がある)。
・すべてが終わる

焔の蝶(マンダリン)、信号音(シグナル)

QAやインタビューより、マンダリンのモデルは越冬のために南へ移動するオオカバマダラ。世代が変わっても、遺伝子に組み込まれている”記憶”によって、南へ移動し冬を越す。
ラシートの名前を読み上げ(記憶を呼び起こす信号音シグナル)、「集合せよ」「もう一度ここへ戻ってこよう」というのは、故郷・夏星へ戻ろうという記憶がオオカバマダラのように潜在的に組み込まれているもの?

ちなみにソレンセン本人登場前に、ラシート名前読み上げのなかに入っているんですよね…伏線わい…

ラシートの名前を読み上げは、インタビューであるような「テレヴィジョン・シティ」や「天体議会」の無機質な音に近い印象です。

ラシートの女の覚醒

ラシートの女として覚醒するには、「HALASSの男」が必要。シュイ・ミュラーがHALASSの男です。ジャウはHALASSとラシートの混血で、男ではなく女にもシフトします。

①ソレンセンの覚醒
シュイとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。このときソレンセンは繃帯の少年の姿であり、《融合》を行ってシュイにゼル=記憶を移す。→この時点で、後継者としての機能も移る?
一世代に一人のため、イオが覚醒する時にはソレンセンは女としての機能を失っているかも。

②イゾアールの覚醒

ジャウとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。ただしイゾアールはHALASSの”男”が覚醒のカギになることを知らなかったので、ジャウが”女”にシフトしている時にのみ行っていたため、覚醒が不十分だった。

③イオの覚醒

シュイとの《恩寵の注入(アンフュージョン)》で覚醒。ちょっとタイミングがあやふやですが…

・イオが完全に女として覚醒し、不完全なイゾアールに勝る
→これがソレンセンが意図していたことで、最後にイゾアールがイオに虫(ピス)を呑ませようとしても、躰が動かず押し返された。種族の力関係ではイオが勝っていたため。
・ソレンセンはミュラーに機能的に勝っていた
→上記はエヴァのセリフですが、覚醒したラシートの女がどの種族よりも強い?機能的にソレンセンがラシートの女と気付くはずがないというのが引っかかりますが…

ラシートの女の匂い

ラシートの女の匂いは、先天的にラシートの女が嗅ぎ分けることができる。HALASSの男もラシートの女の匂いが分かる。
ジャウ(ラシートの女):イゾアール・ソレンセン・イオの匂いを嗅ぎ分ける。
シュイ(HALASSの男):ソレンセン、イオ、ジャウの匂いを嗅ぎ分ける。
→当初からソレンセンの女の匂いをエヴァのものと思って落ち込んでいましたが、そもそもソレンセンが女であるという説…!
※ミュラーは匂いについて知らなかったので、嗅ぎ分けられなかったとソレンセンは言っている。

母親は誰か?:ジャウの場合

ジャウは最終的に、HALASSとラシートの混血で両性の子であると分かります。
父:HALASSの男であるミュラー
母:ラシートでソレンセンに似ているとミュラーは言う ※母体は別

「ソレンセンに似ている」と分かった後で、イゾアールがゼルを奪ったラシートの女が”ソレンセンの兄”であると分かります。このことから、ジャウはミュラーとソレンセンの兄の間に生まれた子ではないか?と思います。
ソレンセンとジャウの間に不思議なつながりがあったのは、血縁関係にあったからではないでしょうか。ジャウにとってソレンセンは叔父さんで、シュイは兄弟ということに…?

母親は誰か?:イオの場合

イオはソレンセンが父で、エヴァ(双子の妹)が母だとされてきました。見かけでいくと母星系×母星系の子ですが、イオにはラシートの特徴がありました。

→5thでエヴァが母親はソレンセンだと言います。ソレンセンがラシートの女とすれば母親になれるし、イオはラシートの特徴を引き継ぐことが出来る。
→となると父親は?ということなんですが、ソレンセンはHALASSの男であるシュイと出会って《恩寵の注入(アンフュージョン)》しているので、シュイが父親である可能性もアリかなと…
イオはシュイよりも軽いですが光アレルギイがあり、シュイのHALASSの特徴を受け継いでいるとすると合致します。
好色ミュラーがやらかしていたら悲しみですが笑、ミュラーは息子が二人と言っていますし、ラシートの女の匂いが分からずソレンセンを男とみなしていたのを信じれば、シュイが父親であれ!って感じですかね…

イゾアールが「ミュラーでなければ、誰がお前を女にしたんだ」とソレンセンに問いますが、残るHALASSの男はシュイですので、シュイがソレンセンをラシートの女に覚醒させて、イオを宿す。バレずに生む必要がありますので、どうやるのか分かりませんが母体はエヴァ?

ここでも謎が残るのですが、ソレンセンが「前妻のゼルが必要だから探している」と当初言っていたので、そこが分かりません…

HALASSは長生きだと言いますが、長い歴史の中でラシートの女であるソレンセンの子を宿し、次はイオの子も宿し…と繰り返しているような印象です。HALASSの男とラシートが夏海に還り、航路を変えた焔の蝶(マンダリン)の群れを目印に出会う連鎖?
→これが覚醒に必要な、重要な記憶

イオの記憶

3rdで「繃帯や紐は同化する」とミンクが誰かから聞いた、とありますがソレンセン?1stでイオは初めて会うソレンセンの睛に見覚えがあったことからも、会ったことがあり記憶の奥底に眠っているけど思い出せない状態かと思います。

機能・欲望・感情

生殖活動の比喩が多発しますが、それを突き動かすものは次の3つに分けられると考えています。
「機能」・「欲望」・「感情」
以下、ちょっとまとまらない考えですがメモ程度に…

機能

快楽を得ない、作業的にこなす。
夏星系の種族が母星系の種族と恩寵の注入=余暇しても快楽は得られないため、その行為は機能的。
母星系では接吻を儀礼的に身分照会のために行い、これも機能的なもの。

欲望

欲望は階級差がある場合「支配」とセットで語られ、階級によって下位の者の欲望は上位のものに支配される。また、欲望は《女》が持つもので、境界を失くさせる。行為には快楽を伴うのが、機能的なものとは違う。種族として「欲しい」という衝動というイメージ。

感情

種族としての衝動を超えて欲する。感情を感じるシーンは以下。

①エヴァ:ソレンセンが必要とする女でいたい
②ジャウ:ハミの交流で、ジャウはシュイに心理的な影響を受ける=情愛が生まれる
③シュイ:レオやレトに安らぎを感じていた
④ソレンセン:エヴァの口ぶりから、ソレンセンが愛してるもの=シュイであり、ソレンセンがシュイを捨てなかった理由
⑤シュイ:ソレンセンに対する感情は、ゼルなどとは関係なく、ただ惹かれているから(長野さんのQAより)。休眠前から何世紀も変わらないとミュラーは言っている。

→上記から、最も感情的なつながりがあるのは、シュイとソレンセンという印象。イオとシュイは次世代のためゼルの影響っぽく、私としてはシュイとソレンセンのほうが強いかな…?と思っています。ここが一番エモいです。

※メモ:5thでソレンセンがイオと対峙した際、「身体と意識、機能と欲望」がぐちゃぐちゃと考えるシーンがありました。

境界と浸透

他の作品でも「境界」がテーマとなっているわけですが、本作で気になったところを取り出してみます。

・哈蜜を共有することで、境界が無くなり浸透する
→熱で溶けて融合する印象
・躰の像(フォルム)=少年の姿を保つためには、抑制知力が必要
 vs欲望で動く《女》は境界線を維持できずに、際限なく広がっていく。
・5th P87:シュイは繋がっている少年(ソレンセン)の躰は、外の世界の端的な比喩に過ぎず、自分が広がっていた
 5th P111:最高の快楽は、自分と外界の境界がなくなったときに訪れるとイオは云っている
→《融合》のことかと思いますが、境界が失くなる快楽とは…?

本作の境界を失った《女》は、「夏至南風」の最後の碧夏に近い印象。

残ってる疑問

第七頸椎=シュイの急所、龍骨の変化が何なのか?

※ジャウ・イオに蒸留器官がある

通常ラシートには蒸留器官が無いのですが、イオとジャウにはあります。二人の共通点といえば、ラシート(の女)ですが、その特徴なのか?ソレンセンやイゾアールがぞうなっているかを探しきらないと…

銀河電燈(デンキ)譜

「銀河電燈譜」と「夏日和」の二編収録。「夏日和」は、「銀河電燈譜」で登場する人物の深掘り。

「銀河電燈譜」は、逃れられない因果の話。好きになってしまったのが近親者、繰り返す一族のお話です。
五章ありますが、各章の始めに独白のような回想が入り、その後賢治が乗っている汽車の話になります。だんだん回想と汽車の話がつながっていきます。これが謎解きみたいで面白いのですが、登場人物がとにかく多くて複雑なので、メモをとりながら読むのが良いかと思います。まだ理解できない部分がたくさんあります…

宮沢賢治の名前が大々的に出ているので、賢治さんに詳しくない私には難しい内容なのかなと思い積ん読していたのですが、詳しくなくてもとっても面白かったです。もっと人気があってもいいと思うのですが…文庫がないからだろうか…
ですが調べてみると、宮沢賢治の生涯や経歴、作品に沿った内容も盛り込まれているので、詳しい方の方がより楽しめるなと感じました。

まあ、でもとにかくですね、クソデカ感情従兄弟がエモすぎて泣くので、難しいことは置いておいてもとりあえず一度読んでください。

登場人物一覧

00.代々受け継がれている話

『陸奥安』:造り酒屋。
こう:陸奥安の亭主が後妻としたが、半目を開き老婆のような声を出すという、奇妙な眠り方をするので離婚となった。招人(よりまし)だと言われている。→十倉家のもの?二章で同じ名前の女性が出てきます。

十倉家:六郷の巫女(いたこ)の家系で、滄(あお)い目が招人(よりまし)=霊が憑依する能力がある者に隔世遺伝する。代々女しか生まれない家系で、霊が憑依するのは女と言われていた。死に際に萃果(りんご)を欲しがる。

『駒泉』:木挽町にある、元禄から続く糸問屋。

0. 電車に乗る道中で出てくる人々(1921年/大正十年:賢治25歳=上京~1936年/昭和11年)

賢治:記憶がおぼろげなまま、汽車に乗り込む。
とし:賢治の妹。肺が弱く、小石川医院に入院していた。萃果(りんご)を頬にあてていた。

鯉川衿子(えりこ):萃果(りんご)を持っていた。亭主(史)の兄・学を好きになり、子を身ごもってしまう。小樽で倒れ、真茂留の母親に引き取られる。
俊夫:衿子の息子。

真茂留(まもる):。滄(あお)い目をしている。半目で寝てしまう癖がある。→十倉の子。衿子、ミハイル、俊夫が乗り移る招人。
ミハイル(霊):母親(占い師)がロシア人との混血。

真藤学:ロシアに留学していた青年。衿子の母との子。
史(ちかし):学の弟。衿子の夫。

田口浪(なみ):仕立て屋『甲屋』の女将。一昨年夫とともに馬橇に乗り亡くなっている。
高群(たかむら)りく:浪の母。入院中にトシと同室だった。
十倉八為子(やいこ):十倉の八番目の娘。りくの義姉であったが、他の男との子を身ごもり離縁。
芳川格(かく):りくの兄で、八為子の元夫。

川島:賢治の東京の知り合い。『清々堂』の番頭。
俊夫:川島の息子。肺が弱く、入院がち。
壮介:川島の甥っ子(俊夫の従兄)。大学に通うため、川島の家に居候している。美青年。アナキスト。
原千鶴子(ちづこ):川島の愛人。

1.ペリーが黒船でやってきた時代→1853年

須磨の妹:姉が結婚した際、眼を患っていた。駒泉に泊まった際、寝込みを襲われ身ごもる。
須磨(すま):駒泉に嫁いだ姉。
鯉川林蔵(こいかわりんぞう):その時の駒泉の当主。
密(ひそか):須磨の夫。
一嗣(かずし):須磨の妹の子。
更子(つぐこ):須磨の子。

2.「江戸」から「東京」へ呼び名が変わった時代→1868年

駒泉の娘(妹):兄に兄妹愛を超えた思慕を抱く。兄を騙して抱かれ、不義の子を身ごもる→美しい男の子で、十倉に預けた
:駒泉の後継者。美しい顔をしている。実は志摩と”私”の父の子。
操子(みさこ):兄の妻。
志摩:”私”の叔母(母の妹)。眼が変わっていた。優れて美しい。生涯独身だった。
十倉やす:巫女(いたこ)。”私”の母の生家(六郷)で侍女をしていた。亭主は萃果(りんご)農家。滄(あお)い目をしている。
こう:やすの娘。

→年代と話を照らし合わせると、第一章の一嗣(かずし)・更子(つぐこ)が、二章の兄妹と思われます。逆に、第一章の”須磨の妹”は志摩になります。二章で真茂留が「ひいばばさまが、兄妹の子を預かった」とあるのは一嗣・更子の子で、更子が「十倉に預けた」というのに一致します。

3. 1880年くらい??

★融(とおる):病弱。
融の弟:融に似ておらず、書生のひとりに似ている。
時(とき):母が連れてきた少年。昔奉公していた女にゆかりがある。

→この章だけでは時代や場所が分かりませんが、四章との照らし合わせで発覚します。二章と四章の間は約50年かと思いますので、その間の時期かと思います。
二章の「十倉に預けた」一嗣・更子の子が行方不明ですので、それが時?

4.大戦やシベリア出兵→1918年~1922年大正のはじめ

★壱彦(かずひこ):駒泉の長男。幼くして母親と引き離される。
衡(はかる):壱彦の父。祖父が30歳を超えてからの子(その前の息子は夭折)。祖母の浮気相手の子だと言われている。
融:壱彦の伯父。夭折。
芳川(よしかわ):官職。壱彦の下宿先。
芳川の妻:夫に隠れて壱彦と愛し合うようになる。→衡に「八為子」と呼ばれていた。
衿子:衡の後妻の子。姉。
澄子:衡の後妻の子。妹。

→三章で亡くなった融が出てきます。融は駒泉の跡取り息子のようです。父の衡は、三章の融の弟かと思われます。シベリア出兵が1922年で大正十一年ですので、賢治はその時すでに26歳でした。もう賢治たちの時代に追いついてきていました。
P84で八為子が芳川の妻と決まります。また、芳川の下の名前は、妹の発言から「格」。八為子が芳川以外の男の子を身ごもって出て行ったので、相手は壱彦かと思われます。
衡が八為子を知っており、先妻は六郷出身でしたので、八為子は壱彦の母のようです…

5.衿子17歳=昭和10年?

★衿子:駒泉の長女。異母兄はスペイン風邪で亡くなっている。
真藤学(まなぶ):衿子の異母兄に似ている。
史(ちかし):学の弟。衿子の夫。
与(あたえ):学・史の父。
澄子:衿子の妹。学に勉強をみてもらっている。

→真茂留の話によると、昭和11年に真茂留の母が衿子を保護しており、学は18歳の衿子を探していますので、回想は昭和10年ころ?
衿子の話す異母兄は壱彦です。16歳にスペイン風邪で亡くなっているので、八為子との諸々があったあと、すぐに倒れてしまったようです。
学と史は異母兄弟で、衿子と学が異父兄妹でした。衿子が学の子を身ごもっており、「俊夫」と名付けて、序盤の汽車に乗るシーンにつながります。年代的に「俊夫」は川島の息子と別人かと思いますが、川島俊夫またはトシの生まれ変わりのような存在?

6. 夏日和

宮澤:菊坂(きくざか)に住んでいた。

川島:北関東の旧家の末弟。肺が弱い。芳さん
清原:清々堂の大旦那。
陛(のぼる):清原の息子。若くして亡くなった。
千鶴子:原家の令嬢。鶴の舞(脱いでしまうこと)が近隣で噂になっている。
俊夫:14になる川島の息子。
壮介:川島の甥で、居候中。近眼。
手児奈(てこな):壮介の幼なじみで芸妓。幾何と代数が好き。
村温彦(はるひこ):兄のこともあり治安警察から目を付けられている。
啓彦(あきひこ):温彦の兄。治安警察から目を付けられている。

家系図

上記の情報をまとめて、家系図を書いてみました。間違いあったらすみません…

汽車の旅

宮沢賢治は1933年(昭和8年)で亡くなっていますが、最終的に昭和11年になりますので、死後のことと思われます。最後に「三年旅をしている」とありますので、史実と合致します。妹のトシに先立たれていて、賢治は死後にトシを探して汽車の旅を続けているけれども、トシは現れない。
→真茂留が「招人は誰でも呼べるわけじゃない」と言っていますので、トシは降霊術で呼び寄せられない。トシの「オラオラデ ヒトリ イグモ」は、宮沢賢治の『永訣の朝』という詩の岩手弁とのこと(すいませんググりました)。

汽車は止まることなく、死者の世界を巡るもの?

分からないところメモ

・萃果(りんご)は十倉家が死に際に欲しがるとのことだが、萃果を欲しがっている人は十倉の血が流れている…?衿子は元をたどれば可能性があるが、川島俊夫は…?
・真茂留を亭主と間違えた小母さんは誰?八為子を呼んだというけど…
・学が真茂留に「誰でもいいんだな」というのには何か意味がある…?

カンパネルラ

もうそろそろ、儚げな少年(現世と冥界のはざまにいるような透明感)×水辺がどういう結末を産むか分かってきたのですが笑、このあとも似たようなテーマがあるようなので、後々振り返りたいです。
お兄ちゃんと仲良くしたいのに突き放される柊一が切ないです。

【登場人物】
柊一(しゅういち):幼い頃から兄のあとを追いかけていた。
夏織(かおる):二つ上の兄。呼吸器が弱いため、ほとんど祖父の家にいる。誰とも打ち解けない。
祖父:視力が弱っている。
カンパネルラ:??

【アイテム】
硝子の魚、野木瓜(うべ)、銀木犀

眠れない夜にみる夢は

著作の「この夏のこともどうせ忘れる」がとても良かったので、サイン本まで予約して、特典のペーパーまでもらって心待ちにしていた一冊。本作も5作品収録の短編集ですが、「この夏のこともどうせ忘れる」が若い学生向けに書かれたのに対して、今回は大人向けに書かれたもの。出版社もポプラ社から創元社に変わっています。装丁豪華な単行本。大人の私としては、本作の方がさらに好きでした…!!

すべての作品に共通して、言葉では表せない絶妙な人間関係が描かれています。支え合ったり、傷付け合ったり、傷を埋め合ったり…
そして大人ならではの切なさ・やるせなさ・ささやかな幸福みたいなものが、心にしみます。
タイトル通り「眠れない夜」がある大人向けだと感じます。毎回タイトルが良すぎるんだ。センス。

文章も淡々としていて簡潔なのに、じわじわとボディブローのように効いてくる言葉がちりばめられていて、涙腺が破壊されました。どの作品にも個人的に好きな一文があって、私は「これパンチラインだわ…」とつぶやきながら読みました。

以下、私的あらすじとやんわり感想です。
もっと読みたいので、めちゃくちゃに売れてほしいです。

なにも傷つけないように、おやすみ

幼なじみの紘一(こういち)と智己(ともき)は、同じ施設で育ち、お互いの考えていることを言葉にしなくても分かる。二人とも衝動性があり、誰かを傷つけようとするのを、もう一方が止めるというのを、何度も繰り返してきた。
紘一はチカコと、智己はナミと付き合っており、彼女同士も仲が良く、カップル内での揉め事があった時はお互いを頼るという、いい均衡が保たれていた。
しかし、ナミが妊娠し子を産み、チカコは連絡が取れなくなり、関係が徐々に変化していく…

紘一・智己・ナミの関係性が素敵で、心が温かくなりました。
よく知っているはずの智己の家に赤ちゃんのものがあり、居心地が悪く感じた紘一の感情が何だか切なく、智己とのやりとりも絶妙で…
二人とも親に見放されて育ち、幸せな家庭像が抱けない、でも心のどこかで憧れているし掴みたい、というのが苦しかったです。

明日世界は終わらない

竜朗・綺子・周はひょんなことから知り合いとなり、飲み仲間となる。
竜朗は綺子のことが好きで、綺子は周のことが好き。そして周は、竜朗のことが好きで……

三人でいるのが楽しいから壊したくなくて、好きな人がいても前に進めないがんじがらめの感じがもどかしかったです。特に周くんは黙ってても綺子に竜朗のことが好きとバレるくらいなのに、当の本人が天然過ぎて気付かないなんて…(でもそんなところが好きらしいので、しょうがない)。周くんはイケメンで、普段は男と後腐れが無い付き合いばかりだったのに、竜朗には全く手を出せないんだ…ゲイバーのバーテンダーで、黒髪長髪煙草…

不自由な大人たち

志津(しづ)は家族や恋人よりも友人が一番大切で、特に櫻子とは何でも報告し合うほど、お互いなくてはならない存在だった。ある日、櫻子に呼び出され家に行くと、憔悴した櫻子が「志津にはもう会えない」という。櫻子は夫の浮気が分かり、三人の男と不倫関係にあった志津も受け入れられなくなってしまったのだ。櫻子が最も大切な志津は、三人の男と全員別れると決心する…

最後に別れた桂木さんとの関係が切なくて、お互いの本当の幸せを願う志津と櫻子の関係も素敵で、静かに泣いてしまいました。

家族の事情

駒鳥亜門(こまどりあもん)・杏子(あんず)は、仲の良い双子の姉弟。親元を離れ、二人で暮らしている。
男運のない姉は、「亜門が私の結婚相手を選んでよ。義兄さんになるんだし」と言ってきた。弟の亜門は、姉の名前でマッチングアプリに登録し、相手も探すも途方に暮れていたところに、会社の上司・藤本がやってくる。亜門が新入社員の時にお世話になった恩人。亜門は、「姉に会ってくれませんか」と藤本にお願いしたのだが、何だか罪悪感があり…

あらすじでお察しの方もいるかもしれませんが、私の…好きな…姉弟と…一人の男(しかも優男)!!!
全員が優しい心の持ち主で、涙が止まりませんでした。最後、弟くんの気持ちをお姉さんが代弁するのですが、お姉さんも弟想いなことが分かるし、今まで人を好きになったことがない弟くんの真実が切な過ぎて、もう…全米が大号泣なんですよ…
その後の三人を想像したらニコニコしちゃいます。白飯が美味い。

砂が落ちきる

三十四歳独身の真野(まの)は、融通が利かないと社内で評判の悪い経理担当。そんな性格を買われ、後輩の坂下さんから「同棲中の彼氏と別れたいが、いつも流されてしまうので代わりに断って欲しい」とお願いされる。坂下さんの可愛さから断り切れず、真野はお願いを聞いてしまう。彼氏の名前は、成田光洸(なりたみつひろ)。どうやら離れがたかったのは坂下さんの方だったらしく、真野は成田に謝られ「また何かあったら連絡して」と連絡先を交換する。二人は別れ、坂下さんは別の男性と結婚し寿退社。そこで真野は成田に、お願いがあると連絡をした。「私を一晩買ってください」。

三十四歳独身で、このままじゃ何もしないまま一生を終えてしまうので、無理やり目標を立てた真野の気持ちが何となく分かり辛かった…独身なんて予定なんて何もないし…(分かる~~~)
成田くんが少女マンガに出てくる男子みたいにかっこいいです。こりゃモテる。そんな成田くんと、お堅い真野とのやりとりが、私にはいちいち刺さりました。

「この夏のこともどうせ忘れる」もぜひ読んでみてください…!夏の今なら特別な帯が付いていたはず。(ポプラ社さんのTwitterで拝見しました)

可愛そうにね、元気くん(古宮海)

性癖強めマンガです。

展開がどうなるか読めずハラハラし、最後は「そうなるのか!」という終わり方です。
美少年くんが重度のシスコン過ぎてもはやストーカーなのですが、お姉ちゃんへの気持ちを吐露するシーンが切なくて泣いてしまいました。大好きです。

淫月

絶版でネットではプレミアがついてしまっているのですが、古書市で偶然出会いまして購入。
短編7つ+長編1つです。

同性愛者の晩年を描いたものが多めです。時期的に福島さんもそれくらいの年齢のため、自伝風な印象も受けます。
舞台も地元・熊本、九州が多いです。年上好き・肥った人が好きな登場人物も多い印象。
ですが突然奇妙なことが起ったり、転生したりするので、現実と虚構入り乱れな感じです。

年上に無理矢理されちゃうシーンがいくつかあるので、苦手な方はご注意ください…

文章は分かりやすくて読みやすいです。熊本弁が出てきますが、注意書きがついています。
長編は登場人物のメモを取った方が良いです。

奇腹譚

肥った年配男性×若者

インドア大学生×日焼け田舎少年

晩夏

妻子不在時に羽を伸ばしたい男×未経験学生

陽炎

大学老教授×純朴そばかすタクシー運転手

冬野

白血病で亡くなったイケメン同僚×最後まで気持ちが言えなかった男

逝春

小説家になるために57歳で退職した男×藤蔓のように絡みついてくる青年

淫月

長編。天才画家が同性愛を知り、男をモデルに絵を描くなかで、自分の中から湧き出る熱と葛藤する。
年配男性と青年カップルも登場し、切ないです。

飛魂抄

有名な先生Y×昔Yのもとで書生をしていた男