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野川

読書感想文の課題図書にもなったという本作。
中学生の大人にも子供にもなりきれない、微妙な心情が描かれています。
課題図書といえど、テーマは事業失敗・離婚・自殺など重めのものも含まれます。そこに、新聞部で飼っている鳩や武蔵野の自然などが絡み合うことで、最後は希望が持てるような印象です。学生さんがこれを読んで、どんな感想を書くのか気になります。

学生の課題図書ではありますが、長野さんのエッセンスが満載で、とても好きな作品になりました。

文庫の解説にもありますが、この時期の長野さんの作品は主人公の年齢が少年(義務教育までという縛りがあります/『絶対安全少年』参照)よりも上の年齢が多いのですが、本作は初期の作品に近いテーマ。問題を抱え季節外れの転校をしてきた、『新学期』『天然理科少年』に近い設定。
それらの初期作と違うのは、武蔵野という実在する場所が舞台ということ。武蔵野は長野さんの地元で、左近の桜シリーズなどでも度々登場します。もともと、初期の長野さんは実在する場所を舞台として配置するのを避けていたそうですが(その時の詳細を調べて書く必要があるため/ムック参照。白昼堂々の話のあたり)、近年の作品では地名をあげて書かれており、それが作家として正面から向き合っている姿勢の現れではないかと感じています。尊敬。

私の好きな登場人物は、吉岡先輩と河井先生。
二人が音和に贈った言葉のひとつひとつが刺さる。

以下、ネタバレあり

【登場人物】
井上音和(おとわ):都心から武蔵野に転校してきた。14歳。
吉岡祐二(ゆうじ):3年。新聞部の部長。5歳上の兄を自殺で失くしている。
藤倉淳也(じゅんや):新聞部。1年。小柄。
藤倉しのぶ:3年。淳也の姉。新聞部の副部長。
山田:新聞部。2年。
中村:新聞部。1年。

河井(かわい):国語教師。
音和の父:6歳上の兄の元で働く。

【鳩】
コマメ:音和になついている。飛べない。
ソラマメ:コマメの親。
モモ
シロ
チョコ

さまようまぼろし(ジョゼ)

ジョゼさんは別作品を友人から借りて知ったのですが、それがまぁ素晴らしく、こちらの作品も…
本作もとても良かったです…!!

静かに進んでいく物語の中に、あたたかさや切なさがありました。
一見何を考えているか分からない用務員さんの優しさよ…!!

エンジェルフェイスの兄弟が本当に美しくて、何コマか見惚れ過ぎて進みませんでした。

改造版 少年アリス

デビュー20周年記念の改稿版。
大筋は一緒なのですが、オリジナルの『少年アリス』を読んだことがある方にも読んで欲しいと思います。また違った感動がありましたので。

違うと感じる点は下記。
・文章の書き方が違う(ひらがな・カタカナを多用、等)
 →これについては、文藝で詳しいインタビューが。『新世界』を文庫にする際の作業がきっかけとなっているそう。
・心情表現が異なっており、登場人物が違った印象に。(特にアリスはこちらの方が大人に見えました)
・兄が取って来いと言ったアイテムが違う。そのことによる作用が素敵。
・終わり方が違う

悪魔にChic×Hack(種村有菜)

人間の少年と契約した悪魔の少女が、人間になりすまして願いを叶えに行くストーリーです。主人公のジゼルちゃんが健気で泣けます。

契約した少年・一立は、昔のような明るい少年ではなく、一匹狼のようになっていた。それは友人・世良との過去に原因があるらしく、願い事にも関係するようで…
一立くんも世良のことが大好きで泣けます。

イワンとイワンの兄

青空文庫で読みました。
出来が良く優しいお兄ちゃんと、出来が悪い弟のために、父親が残したものは…というお話。
ラストがなんてこったって感じです。

青い鳥少年文庫

前半は長野さんが撮影した写真(被写体も長野さんチョイス)と、後半は小説の二部構成です。
シリーズで下記計4冊で、お話は続きになっています。

①オルスバン
②ヒルサガリ
③オトモダチ
④ギンノヨル

長野さんのコレクションを楽しめるお写真がたくさん収録されており、世界観を楽しむには素晴らしいシリーズです。
古本でしか手に入りませんが、興味がある方はぜひ…
お話も少し切なくて、不思議で可愛くて、素敵です。

私が手に入れた四冊は、前の持ち主の方々(バラバラに購入したので複数)のおかげで、ペーパーも挟んでありました。
「青い鳥通信vol.1~4」では、写真に登場したアイテムを長野さん直筆のイラストと文章で解説がなされ、編集者のコメントもあります。
鳩山郁子さんからのプレゼントや、『碧空』が刊行されたときの編集者の方の熱狂が知れ、とても嬉しかったです。

以下、ネタバレあり

【登場人物】
ルリ:主人公の少年。自分がどこからやって来たのか分からない。→海鳥(ショアバード)
ピカピカ:父親。診療所を営んでいる。→カササギ?※「ピカピカ」はカササギの学名
雨宿(アマヤドリ):ケガをした星宿を助けるために、診療所を訪れる。→懸巣(カケス)
星宿(ホシヤドリ):飛行中にケガをしてしまい、雨宿に助けられる。→星烏
空知先生:大学病院で働く医師。
アリオト:サーカス団の少年。兄たちはドウベ・メラク・フェクダ・グレズ・ミザール・ベネトナーシュと、北斗七星に由来する。父の団長はポラリス(北極星)。→リンドウカケス
ソーイ:仕立て屋。
ケス:ルリの兄。

【キーワード】
煙草《蜜蜂印》《砂の茨(デザートローズ)》
銀ラムネ、虹の捕り物、孔雀ホテル、回転木馬、リンドウカケス、ウサギノミミ、ラビット・アイ、星イカ

長野さんの作品で、人間の姿になる鳥たちは多くいますが、今回は主人公も自覚は無いけれど鳥という気がします。
他の作品は、人間の少年が鳥たちと交流するという印象。

ルリとケスは兄弟で同じ鳥のようですが、名前からルリカケス?
鳥に全く明るくないのであれなんですが、奄美大島の固有種、海鳥かは不明…
でも南に住んでいるので、ともすれば…

今回も南に憧れる・南に還る要素がありますが、生物の本能としての”南”へ感情が向くような気もしてきました。

水迷宮

汪(うみ)の巻・瀧(たき)の巻の二巻。「みずめいきゅう」と呼んでいたら、「すいめいきゅう」が正しかったです。

銀河電燈譜」と同じ因果系のお話で、時代感は「雪花草子」です。銀河電燈譜には家系図がありませんでしたが、本作には家系図があります。読み仮名も難しいので助かります…
先祖が水の化身を怒らせてしまったために、その呪いが次世代に現れるお話です。世代によって起こるできごとや関係性が異なって面白いです。お耽美な驚きエピソードの数々…

【登場人物】
作成中
呪いが現れた人物、美少年整理

兄弟天気図

子供向けに書かれたものとのこと。今では使われなくなってしまった言葉がいくつか出てくるなど、古いものを大切にする長野さんの、子供へのメッセージのようなものが感じられます。
思春期の兄弟の気恥ずかしさなどが繊細に描かれていて、それに幼くして亡くなった兄の存在が加わり、切なくも温かいお話です。
ただ、伊之頭組の棟梁が湯屋で引き返したところが意味深で…これは…?

併録「あのころ、あのとき」は、長野さんご自身の体験かと思います。

【登場人物】
弟史(ちかし):中一。周りから「ちィ坊」と呼ばれるのを嫌がる。
兄市(けいいち):弟史とは2つ違いの兄。姉からは「兄(けい)ちゃん」と呼ばれている。
姉美(えみ):弟史とはひとまわり離れている姉。
弟介(だいすけ):姉美の次に産まれた子。6歳で病気で亡くなる。左の耳が悪かった。
大翼(だいすけ):弟史の甥っ子(姉美の子)。
弟史の祖母:8年前に亡くなる。東京生まれではないので、出身地の言葉を使っていた。
匠(たくみ):弟史の父。
真実(まこと):弟史の同級生。家は船宿。
一路(かずみち):真実の弟。一昨年産まれたばかり。
→兄弟で「真実一路」。
アツコ:伊之頭組の棟梁の猫。
知波:湯屋龍泉湯の娘。高校生。兄市の恋人。