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あほうがらす

「火消しの殿」「元禄色子」「男色武士道」が男色ということで…

特に「元禄色子」は、運命的で相思相愛で思わず涙が出る感動作でした。
これから父親とともに討ち入りに行く運命の少年武士と、かげま茶屋で評判の色子の恋…!!

ゴッホの犬と耳とひまわり

ゴッホのものとみられる文字が書かれた家計簿から、むかしの人々の来歴が紐解かれていく物語。

近年の長野さんの作品を読んでいると、「ゴッホ」「家計簿」と聞いただけでピンとくるかもしれません。
「ゴッホ」は『銀河の通信所』でも語られており、長野さんが敬愛する宮沢賢治との共通点が多い。
「家計簿」については、『あのころのデパート』などで、中原中也がフランスのデパートが配布していた家計簿に日記を書いていたという逸話があります。(その修繕作業の話から、『カルトローレ』が生まれる)
上記のほかにも、近年の長野さんの関心ごとが凝縮され、さらにゴッホの生涯などが追加されて、情報量が多い一冊という印象です。

そして、複雑な家系図…読み進めると人々が繋がっていきます。

以下ネタバレあり。読了後にご覧ください。

登場人物

【小椋家親族】
小椋弥也(はるや):わたし。通称「オグちゃん」。翻訳家。河島の元生徒。画家の母とふたり暮らし。80年代生まれ。
なつみ:妹。「なっちゃん」。商社のアートディレクター
すみれ:弥也の母。
耀(よう):弥也の父。フランス人の養父母に育てられたのでフランス国籍。亡くなっている。→ヨー
ユーリン(雨鈴):弥也の父の母。日本の商社で働く華人。→FruFru。Zの隠し子?
石川:弥也の父の実父。
→姉と弟の子がいて、弟はゴッホくんの前の飼い主。
小椋六郎(ろくろう):弥也の祖父。商社を経営していた。職人の家系。
こま子、ふき子、かな子:六郎の姉。
頭師(ずし)?勒郎(ろくろう):曽祖父。Zと子供時代からの友だち。

【河島家親族】
河島:文化人類学者。80歳。
素子(もとこ):河島の夫人。
海一(かいち):なつみの夫で、海三の従弟。
海三(かいぞう):河島の孫。助手。弥也の高校の同級生。千々和が好き?管理栄養士と調理師の免許を持つ。
種也(かずや):海三の父で、河島の長男。考古学者。
麗(れい):種也の妻。
珠七(みな):河島の三男の一人娘。茶道部。中学生。
周子(しゅうこ):珠七の母。弥也の交際相手。

【その他】
千々和(ちぢわ):若い画家で、書家としても活動。弥也の友人。父が筆跡鑑定師。
T:依頼人の七十代婦人。シジミの母。千々和や海三と気が合う。
Z(城三四/しろかずし):Tの祖父。経済人で翻訳家。
シジミ:古書商の呼び名。四十代くらい。
森口いづみ:資料館に異動した社員。仮名。夫はフランス人の微生物研究者。曽祖父が製本業。
→本名:小森いづみ
小森万里(まさと)、千里(ちさと):Zが留学する際に一緒だった兄妹。兄は画家志望。いづみの曽祖父の弟の子。
鹿内(しかうち):獣医。種也のハンター仲間。
久保:母の教会の奉仕仲間。
シュリ:なつみの友人で、古文書の学位をもつ書店員。祖父が台湾出身。
→祖父は絵本をつくった印刷所を営む

【動物】
ゴッホ:わたしの家の飼い犬。元の名前はアムス。
ドクター:鹿内先生の飼い犬。
アリス:鹿内先生の妹のクリニックの犬。

家系図

いつも以上に自信がないので参考まで…
六郎さんの姉三人は、スペースの都合上まとめさせていただきました。

45°ここだけの話

「読むエッシャー」という帯の宣伝文句のとおり、円環のような物語が9つ収められた短編集。
最後まで読むと「そうだったのか!」と唸るものばかりです。題名などから難しい内容なのかと思っていましたが、すらすら読めます。

以下、ネタバレあり

11:55

南谷真尋(なやまひろ):私。四十すぎ?
川上一彦(かわかみかずひこ):事件の首謀者。完璧な風貌。四十がらみ。
呉服小帆(くれはちさほ)クレハチ:私の雇い主。女性。三十歳。
→南谷は小説家?で、カフェにいた男女を妄想の材料にして、原稿を完成。本当の雇い主に送る。

45°

雨宮(あめみや):三十歳の誕生日。
浜田:ステンカラー人
カタロギ:浜田を呼びつけた
安保(あんぽ):浜田と組んでいたアドバードの社員。
→浜田とカタロギは同一人物?

/Y

志津(しづ):鳥類の研究者だったが、認知症に。
十市(じゅういち):息子。
ルミ子:十市の異母姉。
→志津には2人の子供がいたが、父親が違う。十市はお弁当屋の娘に恋をするが、実は異母姉だった。それが原因かは不明だが、十市は飛び降り命を絶つ。

守一(もりかず)
ホシノソラ:守一が電車で一緒になった子ども。
コガユウスケ:守一が電車で一緒になった子ども。
星野降里(ホシノフルサト):守一の友人。
ホシノナギサ:フルサトの双子の妹。
→フルサトとナギサは双子?その父も双子でよく入れ替わっていた?片方を埋める…??

+-


日奈田百(ひなたあきら):カコの服を借りて着るようになる。
カコ:個人商店の娘。日奈田のはとこ。
チロ:カコの弟。
→日奈田とカコが入れ替わり。カコは母の前でチロになる。

W.C.

妙子(たえこ)
貴時(たかとき):妙子の夫。
藤真紀江(まきえ):旧姓は鴨足(いちょう)。中二のクラスメイト。
スミレ:藤の娘。

リサ:持ち家を夢見ていた女性。
遼一(りょういち):リサの夫。
谷村六実(たにむらむつみ):リサたちの貸家の住人。
→リサ=遼一。六実は遼一の元彼女だが、遼一がリサになるために男になる決意を

×

一川春雪(いちかわはるゆき):セレモニープロデュース勤務。
額賀(ぬかが):女社長。
真矢(まさや):春雪とそっくり。
→額賀が春雪を産み、夫と別れた時に春雪は養子に出される。額賀と春雪は男女として出会い、入籍(母子となる)。
→ウソで、真実は不明?

P.

父:部品の設計技師。
姉:生得の性は女ではない。
義兄:姉の夫。仕事中に行方不明に。
私:ピース、飼い犬。
ウサギ:ゲームクリエイター

デカルコマニア

SFの長篇。架空の地名や動物などが登場します。
時間旅行ととある一族の歴史がテーマなので、年表と家系図を整理しながら読むことをオススメします。
章ごとに時代と語り部が違い、意識して読まないと分からなくなりそうでした…

ですが、後半になると人物たちが繋がっていき面白いです。
この時期の長野さんの作品の複雑さが始まっていると感じました。

男女たちが運命的な出会いを繰り返しますが、ひとりの美少年がかき回すのが長野さんっぽいな~と思います。笑

※以下ネタバレありますので、読了後に見てください※

章立て

①『デカルコマニア』について ソラの説明
②『A』について シリルの説明 →Aはアルク
③『R』について ミロルの説明 →Rはロマン=レモン=ロマネス

ソラとレカが未来の政府から逃れるために、過去で家庭を築く。
レモンは兄弟を取り返すべく、事故にあったふりをして双子のもうひとりを過去に呼びよせた?

登場人物

☆ロマン=レモン 以下、すべて同一人物の記載がある。
①ロマン(ロマネアルド):ナウシストのクラスに転校してきた。13歳。養父と暮らす。顔が整っている。ハニーブロンドの髪、翠緑色(エメラルド)の瞳。オリゾン王の息子という。
②レモン・ドロミュー:24歳。腕の良い金工師。美貌で女癖が悪い。ドロミュー家の養子。王子(王女)に気に入られている。
 →シリルの伯父として登場
③オレオ:レモンの友だち。アメリカの工科大学の院生。
④クリクラム:アイコッドの研究者。外国人。黒髪、黒いメガネ。
⑤ロレ:アモルの家庭教師。20歳くらい。
⑥スワンスオン:旅する芸人の男。オルニカが上手い。髪が真珠色。
⑦ロマネス:奇術師。

☆アルク(アルクノア)・ランダー:囚人。クラブツリー座の役者。24歳。婿養子の祖父の姓を名乗っている。

ナウシスト:鳥類図鑑というあだ名。2つ違いの姉がいる。
ユリス・ドラモンテ:ナウシストの妻。デカルコシステム開発メンバー。
ソラ・ドラモンテ:ナウシストの息子。アルクの父。
レカ・バッサー(先生):ICODのソラの先生で、のち妻になる。アルクの母。
シリル:14歳。オルニカが得意。ソラの孫で、アルクの息子。
ミロル:シリルの弟。
キャッスル先生:シリルの担任。のちの妻。
グリン:伯父のハウスキーパー。
D卿:レカが働く屋敷の主人。=アモル・ドラモンテ:D家の御曹司。ロマンに恋する。幼い頃は金色の髪を伸ばしていた。
カロス:灯台守→遠縁のロマンが泊まっている
ドーラ:カロスの妻。
マダム・デボン:サヴィの店にいる占い師。→アイコッドの初期研究者。レカの母。
ソランジ:D卿(アモル)の末息子。ロレの婚約者。
トマソ:レカがロッジに住んでいる時の庭師。→ドラモンテの直系の孫
ロアン夫人:D卿の家政婦。レモンドーナッツが得意。
フランシスカ:アルクの大伯母。(祖父の姉)
ルビ(ルビアネッサ):アルクの妻。
ペドラドラ:ルビの父。D卿と知り合い。
シルヴィオ:ルビの兄。
ダビド:ミロルのクラスメイト。
エルレイ:父のドーナッツ屋の留守番役。
ルル:ミロルの友だち。

マグピー:アルクの劇団の座長。
バロッカ:首相。アイコッドの理事を兼任。
リド:レモンの兄。
オリゾン王:架空の人物といわれる。真珠の髪。オルニカを持つ。
サヴィ:手芸店
エレン:ミロルの妻。
カイロ:1997年シトラスカ湾に流れ着く。バロッカの再婚者の末息子。ロマネスに恋する。
エレノアル:先生。カイロの娘のひとり。

家系図

年表

1901年:カロスのところにロマンが泊まる。11歳。
1904年:アモルが寄宿学校へ。ロレが海難事故。
1942年:ソランジが軍へ招集。
1972年:レカがデカルコで到着。双子(レモン・アルク)が生まれる。
1977年:カイロが湾に辿り着く。
1983年:D卿は灯台横のロッジで暮らす
1983年:ルビがロマンと出会う
1985年10月24日:ナウシストとロマンが島に着く
1996年8月:レモンの船が姿を消す。→アルクがデカルコで辿り着く。
1999年:シリル生まれる
2013年3月:シリルが作文を書く。D卿は67歳
2023年:ミロルがカイロと出会う
2050年:アイコッド開設。
2170年:ナウシスト生まれる
2182年:ナウシスト12歳。
2196年:D卿生まれる
2210年10月:ソラがデカルコを書く。
2210年:カイロが生まれる。
2213年:王国千年
2220年:ソラとレカが結婚
2222年:柩が流れ着く、アルク生まれる。
2230年:カイロがデカルコを発進させる
2246年6月:アルクが収容される。

地名

シトラスカ湾:現シビラベイ周辺
オルトラノ:ポルトラノを含む広大な連合体の名称。人工陸地と周辺国を含む。
ポルトラノ:海面上昇で国土を減らした海洋国。
ポルトロ:ポルトラノの首都。
ドラモンテ島:ポルトラノにある島。幽霊島と呼ばれる。
バルビラス半島:21世紀の終わり頃、海面上昇によりほぼ姿を消した半島。
M国:ロマンがいた国。
マルバロ:ポルトロからもより。
モレルノ海岸
マルナ市:ルビの住む街。島。

用語

ICOD(アイコッド):時間旅行を可能にする装置を研究。《デカルコ》と呼んでいる。
マシュマロデイ:秋の収穫を祝う祝祭。
ロトル:交通機関。
アラスカ:大きい書店。
サンド・ファウンテン:広場。
コロンビエラ:鳩時計つきの帽子
ハーバーランド:遊園地?
グラフィコ:書かれたもののデータベース
鳩小屋:書類だな、監獄、墓場のこと。
アクアノート(船外技術者):火星探査に携わる
ポルトロ:青黒い石。それから作る絵の具の色。
シアノピカ・シアナ:青い翼の鳥
マグピー:魔よけの羽
灯台:D卿のもの

受け継がれるもの

①SとRの指輪→ソラとレカの頭文字。
ソランジが父アモルに託す
ソラが少年から片割れをもらう
アルクが父から片割れをもらう

②港町の絵
レカが持っていた
アルクが父と住んだ家にあった
ナウシストがロマンと行った家にあり、ロマンが盗む

③ボート
ロマンがつくったブランコ
ソランジが設計
双子のひとりを水葬
ルビが拾う
ナウシストとロマンが乗ったボート
シリルの伯父の椅子

アオイガイ
メレンゲと小鳥で飾った貝の船
タコブネ、紙の船
ソランジが設計

④本
オリゾン王の物語
ソランジが船の参考にした
ソラが書いたデカルコ

夜の姫僕(真崎総子)

ぶっきらぼう皮膚科医の男と、ずっと好きな人に執着している男子の恋。とても可愛いです。
ゆるい感じで進みますが、皮膚科医の先生が独占欲を出してきたり、別の二人も発展しそうだったりと、ドキドキな展開もあり楽しかったです。

KCデザートから出ているので、マンガでカテゴリ分けしています。

左近の桜シリーズ

魂魄系の和風ファンタジー。四作目は『銀河電燈譜』『水迷宮』のような因果系の雰囲気もあります。
結局、全容を把握するにはどう読んでも頭数が足りないようです…

三作目まではさほど難しくないように思いますが、四作目が長野さんのなかでも難解度が高いです。文藝のインタビューで「新世界を読み返したら簡単すぎた」とおっしゃっていたので、そこから難易度が上がっている気が私はしています。

シリーズの順番

①左近の桜
 桜蔵16歳・高校二年。

②咲くや、この花

③さくら、うるわし

④その花の名を知らず
 桜蔵15歳・中学三年(祖父の三回忌)の回想。

登場人物

左近家

左近桜蔵(さこんさくら)︎︎ ♀:16歳/高二(一作目)。文系。死人と交わることができる。3月生まれ。
千菊(ちあき)♂:弟。中一(一作目)。
葉子(はこ):母。女将。
日子(ひなこ):母方の祖母。
辰彦(たつひこ):母方の祖父。ケモノに詳しい。柾の師匠。左近へ婿養子。桜蔵と千菊が通う高校の理科教師で、柾も卒業生。理科部。
桜生(さくらお):葉子の兄。拾い子。望月の養子になって家を出た。→望月(もちづき):質屋・八疋(はちひき)、二十代の若い男。柾の研修医時代の恋人で、今も引きずっている。
川路(かわじ):大叔父。祖母の弟。二十歳くらいに病没。
左近伊吹(いつき):日子の大伯父。黒髪峠で行方不明。=神岡茂:登山中に記憶を無くした。白鳥家の番頭となる。
芳子(かほるこ):伊吹の妹。
英尾(ふさを):芳子の娘。日子の母。
左近永門(ひさと):幸の夫。戦地へ行ったが帰還。

井川清志(いがわきよし):番頭。
茨(うばら):井川の母。産婆。
佐久間功(さくまこう):板前。四十代。十五歳のときに、番頭の母親が遠縁といって郷里から連れてきた。今も番頭の家で暮らす。
菊政(きくまさ):包丁研ぎ師。
シノブ:菊政の孫。→雨彦が宿った。佐久間を誘う。

白鳥家

柾(まさき)♂:母の夫。本妻とは子供を持たない約束。医者。旧姓白鳥。(女)を育てるのが上手い。四十歳すぎ。
遠子(とおこ):柾の正妻。母は産科の医師。
一師(かずし):父方の祖父。白鳥という姓をきらって、何人目かの妻の旧姓を名乗った。
師(つかさ):曽祖父。三度結婚、一男三女。姉妹の母は一緒だが、父は違う。辰彦の恩師。
幸(ゆき):江子と取り違えられた白鳥家の長女。
白鳥二紗(ふさ):大叔母。祖父の異母妹。
沖子(なかこ):二紗の母。旧姓白。父親の旧姓は樋口。
早久也:柾の従弟。一師の妹の息子。

白家

白清子(つくもさやこ):父方の祖父の縁者。祖父の妹。大叔母を名乗る。
白伸(つくものぼる):旅館三つ葉の息子?白鳥家の令嬢と婚約。
淳一(じゅんいち):女将の父親。
高見江子(たかみのぶこ):伸の伯母。
真央(まなか):江子の息子。
淳也(じゅんや):三つ葉の息子。

井茂治之(いしげはるゆき):白毛。茶人。永門と詰襟を連れていく。井茂は養家、父親は神岡。
早門(はやと):ハルエの元夫。遠子の同級生。白毛。

沖家

沖(おき):高校OB会の理事。自動車修理工場。
万智(まち):谷村の叔母。
千弥(ゆきや):万智の下の兄。茶碗ざくろを取り出そうそして、不発弾に逢う。
一都(かずと):万智の上の兄。千都子の父。永門の同級生。療養所にいた。
谷村千津子(ちづこ):沖の姉。沖モータースの事務員。

乾申彦(いぬいのぶひこ):一師の先輩。沖の従弟?桜蔵の大伯父。母方の祖父の兄。左近家の井戸の番人。→日子と縁談があったが、すでに白家の娘と子があった。清子?

樋口温門(はると):巨石があった商屋の姓。沖子の父親。
水門(みなと):温門の弟。永門の父親。

西方日帆(にしかたかほ):不動産屋。遠子に似ている。
一序(かずのぶ):日帆の父。
紅江(あきこ):日帆の従姉。

ハルエ:遠子の同級生。多仲亭の娘。早久也と再婚。
白鳥ヨハン:ハルエの息子。=シラカワヨフネ:学生。

桜蔵の関係者

真也(まや):桜蔵の一級上の女ともだち。予備校に通っている。医学部志望。両親は遠子と古い付き合い。
久生(ひさお):大柄な桜蔵の級友。理系。
隼人(はやと):久生の犬。
森本里(さと):久生が連れている小柄な女子。

柾の関係者

浜尾一史(はまおかずふみ)♂?:宿の常連客。社会心理学者。37~8歳。妻子持ち。柾は学生時代から知っている。
浜尾芳(かおる)︎︎ ♀:浜尾の従弟。十七歳で亡くなっている。浜尾の最初の女で、柾も知り合い。
清千舟(すがちふね)♂:三十代半ば。教授。桜蔵の担任、書字学研究室。柾の知り合い。妹と弟がいる。
日文(ひふみ):清の異母妹。
チャロ:柾が桜蔵に贈った犬のぬいぐるみ。Cのタグがある→千早の飼い犬。
船田千早(ふなだちはや)♀:医院の息子。柾の昔の女で、チャロと呼んでいた。
石堂加奈子(いしどうかなこ)
マナ:加奈子の娘。
チャイ:加奈子の飼い犬。

上原家

上原司(つかさ):婿入りした男。
弥子(ひろこ):司の娘。
弥(はるや):高三の司の義弟。どちらもいける。工学部志望。→蜃が乗り移る
門倉(かどくら):医師。

緑の月関連

関谷孝三郎(せきやこうざぶろう):三男。
洋二郎(ようじろう):孝三郎の次兄。頬に傷がある。
慶子(けいこ):孝三郎の姉。
佳央(よしお):慶子の息子。
日野千可琉(ひのちかる):詩集の作者。二十歳にならず戦死。姉の婚約者を奪ったことを告げ口される。
千波琉(ちはる):千可琉の姉。→真也の母方の曾祖母。
市川(いちかわ):関谷の運転手。
シュガー:関谷の猫。

その他

羽ノ浦昆(はのうらこん):千菊の担任。理科教師。養父が亡くなった?分厚い眼鏡をかけている。酒を飲むと人格が変わる。浜尾の知り合いが養子で亡くなった男と瓜二つ。
六月一日晴(クサカキヨシ):蝶捕り師。
萬来(うるき):学校の隣のうるさい小金持ち。
梶岡(かじおか):千菊の同じ組の祖母。
横笛:遠子が呼んだ茶人。

ざくろ・しろうづ・あけび

五十年前に亡くなった森:桜蔵は一師と行った

黒髪峠:白鳥家が所有する山の中。
巌のひび割れのなかに蛇黒(ざくろ)と白貴(しろうず)が棲み、魄を食べて百年生きる。

〈三つ葉〉みつは
もとは蔵元だったが、今は宿になっている。
蛇黒というお酒を造っていた。
幸と思われる女の祖父の家は醸造家

イモンジの家の焼け跡:アケビ、頭の無い白骨
→前の日に〈蛇黒〉を買い求める

蛇黒(ざくろ)
・黒い石榴
・お酒
 イモンジが買い求めた
・茶碗
 幸が持ち出したまま行方不明
 沖家の庭
 清子を名乗る女が探していた
 空の函が白鳥家にあった

白貴(しろうず)
・白い石榴
・お酒
 湧き水を髑髏で濾す
・茶碗
 桜蔵が電車に乗った際に拾う
 白鳥家の婚約祝いに登場
 江子の息子の真央が持ち出して行方不明になる

黒白の石榴は実をつけない→男の化身

朱薇(あけび)
・茶碗
 紅麴。
 乾の家にある
・三百年の樹
 イモンジの家
 中華料理屋
 ミナトビル
・左近家メス、柾の家オスで、現在は千菊が受粉
 →女系の左近家と白鳥家のつながり?

巨石
・師が三陸の峠から持ってきた→白鳥家の墓となる
 黒い石榴が植えられている
・多仲亭の紅吹
・沖家の庭
・乾家の石神

キーワード

女性は現実的なので魂をつかめない
魂は天へ、魄は地へ

現実の人と交わることで浄化される

風はや(ちはや):京都の紙卸売問屋。
枇杷:天神さま
黒い蝶:転写する→魄へ転写された
玉の緒:タマシイを繋ぐ紅い糸。
白雪コウを初雪に埋めると、タマシイが凍って結晶になる
ハマグリ:蜃。虹を吹く。
黒面(クロツラ):屍を喰う冥府の犬。
雨彦(あまびこ):ヤスデ。
タマシイを喰う鳥
蛟(みずち)
ギョク:未練があると重くなる
浄玻璃:罪を映す
カワホリ:ヌケガラの仕分けをする
石榴は魄で育つ
鵺(ぬえ):祖母の葬式に現れる。呪いを解くために黒い髪が必要。曾祖母の夫?が心を奪われたため封印された。
祖母が鏡を埋めた→水琴窟
ジャコウアゲハ
クチナシ:『箪笥のなか』と同じ説明

祖母の兄(大伯父):桜の季節に養子にきた
サネカズラ:あの世で逢う

辰⇔戌
☆左近解説境界があいまい

蛇の女

・左近家は女系(伊吹が行方不明になり、芳子が婿をもらう)
・女は女役のことではないらしい
・蛇の女は人間のからだを借りないと生まれない

『あめふらし』のさゆりも、女の躰で陸にあがって出産する蛇という話がありましたが、
蛇は女の躰でないと子を産めず、それを重宝がっている蛇性の家系?
桜蔵は女の蛇で、清子もうろこのようなものが見えていた。

蛇黒(ざくろ)と白貴(しろうず)
黒い石榴と白い石榴の異名でもあり、実をつけないことから男同士が絡み合っていることをほのめかしている?
→オスの蛇ならば、女のからだがないと子がつくれない

作中で柾のように男の恋人がいると思われるのは
・白家の伸、高見の真央(心中)
・井茂治之、左近永門、学生服の青年?
・桜生

概算年表

四作目の概算です。おおよそ目星をつけるためのもので、正確ではないです…

1881年:伊吹生まれる
1898年:伊吹が消息不明
1914~1915年:英尾11歳、母が伊吹を街で見る
1923年:江子と幸が取り違えられる
1934年:一師が生まれる
1942年:十六夜の茶会(幸、治之、永門、青年、老人)
1947~1948年:清子生まれる?江子が東京で伊吹を見かける。
1947年:半夏夜の茶会(申彦、千弥、淳一/永門)
1964年頃:柾生まれる
1977年:夜船で伸と真央が心中
2007年:江子が亡くなる?清子は58~9歳のはず。

家系図

手書きですみません…

※桜蔵の生い立ちのヒントのようなもの※
柾の祖母の着物を仕立て直した服を着る女性:顔が桜蔵に似ている。好きな男が桜生に夢中になり、カッとなって殺してしまった。男のときは警察官だった。
左近永門:沖家の人たちが桜蔵に似ているという。
「蔵」は醸造家?と聞かれていた→白家はもともと酒蔵で、左近伊吹(神岡茂)が仕えていた。

大元を辿れば左近家っぽいものの、永門が最終的にどうなったか(幸と婚約して、戻ってきたときどうしたか)、子供はどこにいるのかが不明なのでここかもしれないと思いつつ…

※幸の子供※
幸は永門と婚約していたけれども、恐らく白家の男との子を身ごもっている。男と交わった後に自分が白鳥ではないと気付いたのか、「因果の子」と云っている。男と幸は血が繋がっていて、おろそうと思ったが治之が引き取ると云っている?
本当に引き取って育てたかは不明。

・最後に乾が言っていた愛人になりすましている男は?
 →家系図的には一師がおさまりがいいんですけれども、出てくる女が少ない…
・乾の妻子
・十六夜の茶会にいた青年
 →治之が永門と一緒に連れて行こうとした詰襟のこと?

カルトローレ

さっぱりした感じを受けるファンタジーです。
これまで長野さんのSF・ファンタジーというと、「自分はどこから来たのか」を人物たちが思い悩み、脱出しようとする(『テレヴィジョン・シティ』など)という流れでしたが、本作は「自分はどこから来たのか」を知らない自覚はありつつも、それを殊更問題にするわけでもなく、日々の暮らしを大切にするという印象。
水は掘らないと出てこない砂漠という舞台や、度々登場する食べ物、受け継がれる編み物や刺繍が、人々の丁寧な暮らしを爽やかで穏やかな印象にしていると思います。今までの長野さんの作品より、湿度が少し下がった感じがしました。

かつ、様々な謎が散りばめられつつも、核心はつかない。穏やかな日常に戻っていく。人物たちの感情も(抑制されているだけかもしれませんが)動きが少ない。それが心地いいので、とても好きな作品でした。

以下ネタバレあり

【登場人物】名前は通称
タフィ:《船》で生まれる。模様を瞬時に記憶できる。胸に聖なる木の刺青がある。旅人が鳥をかきたした(タッシル語で「王をつぐ者」)。→後継者
コリドー:《船》出身。地区の担当官。
年少のワタ:青い外衣を着て、髪を伸ばしている。「小さい子」と呼ばれる特別な存在。
エルジン:元検疫官。筋肉質。蝶やコウモリが嫌い。植物が発する何かを音のように聞いている→コリドーの弟?左手の薬指と小指のあいだから双葉が出て切開した。
アマリア:視察官。
ハイムーン卿:屋敷に住むご隠居。
オルヴィエ:調律師を名乗る男。珍しい黒服を着ている。
エエテル:製本組合の若い男に降りた。
メルレット:ハイムーン卿の家政婦。
メイズ:工房のあるじ。左手の甲に刺青、首飾りをしている。=タフィが幼い頃一緒にいた旅人で、コリドーの弟とすり替えられた子の父親。シャンマノ:縫師。刺青がある。
クロム:編み機を売る商人。
コルドネ:地質調査員を名乗る男

☆白檀の香りがする
《船》が発見される前に降りた異端の人々?子供のすり替えを行っていた。
白い旅人=メイズ:白檀の香り→タフィを灰色の景色(誰かを待っていた)へいざなう
列車で一緒になった中年男
コリドーの年長の友人=メイズ:植物状態の子ども(=コリドーの弟。治すために首飾りをする)がいた。

【動物、植物】
角牛
ゴシキ鳥:紫色で縁起のいい鳥
アンゲル:翼のひろい鳥。
アルム:火をおこす紅い蛇
火喰鳥:火を食べる
シイス:日誌から咲いた花。ワタによると、婚礼の晩に新郎新婦に贈る。《船》の花。
ハトラ:製本組合の若い男が連れている犬。

【種族、役職】
ワタ:政庁から水の管理を任されている役職。外衣を着て顔は隠している。家族ごとに紋様が異なる。名前は身内にしか明かさない。水を自在に操る、与えたものは親和して快楽を得る。かつては谷に住んでいた。別の何かを探していた副産物として、水脈を探し当てるのではとコリドーはいう。
オタ・パル:紙漉き職人
マチェ:後継者。正式な紋章を見ることができる。年少のワタに降りた。→タフィは「マチェ」の名を聞くとトゲが痛むような気持ち。「マチェのための」という図案集がある。
チツァ:髪という意味。マチェの婚約者。アマリアに降りた。
縫師:ワタたちの伝統的な紋様を縫う。

【キーワード】
季節によって現れる湖
髪を切らない
名前を知りたい
ローズマリー:弔いの香り
麝香:雨の匂い
夏至祭
虹玉子
ハミ
コンパスローズ

《船》

7年前に発見され、地上に降りる
友好的
睡眠期がある
適応化教育を受ける
名前は無く、番号しか持たない
人数制限があるため、生殖は管理されている→地上の子供とすりかえが行われていた
適応化の過程で、聴力を奪われる⇔ワタやエルジンは聴覚に優れる

〈家族〉

航海士、海図室に入れる。
全員が血縁者で、男子は身体的な特徴(左手に第6の指がある)を持つが、下船のさいに切り落とした。
→タフィが最後に思い出した話とリンクする。《船》に人々が住み始めたきっかけになった、左手からつる草を芽吹かせた人物の末裔が〈家族〉?

コリドーは〈家族〉であり、十四歳で家出(地上に降りる)。
弟がいたが、地上の子供とすり替えられ行方不明。
→家出先の海辺の家にいた、植物状態の人物が弟であった=エルジン

エルジンは木管編みの記号(kを含む記号)を用いることからも、〈家族〉であると考えられる。

コリドーの足首の刺青は蛇に咬まれた=家出したときのもの?

人格が乗り移る

タフィの家を訪れた人々には、別人格が宿ることがある。つる性の植物に同調している。タフィは耐性があるのか、何も起こらない。

マチェ:後継者。正式な紋章(編み機のカタログのものに似ている/碇と蛇と船)を見ることができる=見ると地が動く。(ワタはこれを風穴で教えられた)年少のワタに降りた。
チツァ:髪という意味。マチェの婚約者。アマリアに降りた。
エエテル:製本組合の若い男に降りた。

白い色

・年少のワタの髪の色
・旅人:白毛、貝殻の首飾り
・白い家
・鳥の羽
・白い花
・鳩
・白い外衣:女性の着るもの
・白い虹=蛇の化身として尊ばれる。
・白い蛇→ワタが戯れていた。船の惣領の服。

白い紙を漉く土地、糸も白い。鳥の言葉を操る

<図案室>

・選ばれたもののみが入ることができる?ワタは遠くから見ることしかできなかった。座長に似た女は入ることが出来る。
・《船》のなかと云われた

灰色の景色

タフィは白檀の香りが灰色の景色(冬)に結びつく。
タフィは灰色の景色で人を待っていた。
→白檀の香りは異端分子の人たちの香りとされ、《船》と地上の子をすり替えていた。タフィもその一人かもしれない。地上で過ごした記憶を失くしただけで、もとは地上の子・父親はメイズ?
白毛の人は、タフィの髪がやがて銀色になり、《船》をおりたら会いに来いと云っていた。

ワタが夏至祭で「かぎ針で糸を編み…」
「金の糸でへりをかがり…」:船の始まりの伝説のようなもの。痕跡を残さないために、文字ではなく模様で伝言する。

メルカトル

捨て子で孤児院で育ったリュスが、次々と不思議な人物に逢い、その中でリュスの過去も明らかになっていく。
最後にどんでん返しがすごい勢いでやってきます。

「匂い系」のタグをつけましたが、ふんわりそういう描写や記述があるだけで、いつもより薄めです。女性が次々出てきますが、それがポイント…

※以下登場人物のメモですが、読了後にご覧ください。

【登場人物】
リュス・カルヴァート:収集館の受付。17歳。伊達メガネ。6/21生まれ(仮)。自分の感情を出さない。最後に泣いたのは12歳。琥珀黄(アンバー)の目、コーヒー・ブラウンの髪。

☆メルカトル家
レオニ・A・メルカトル:〈お偉いかた〉。地図研究が趣味の老紳士。→祖父。探偵事務所の所長。
エルヴィラ・モンド:30代過ぎの女性。女優と同じ名前。→リリアン・ブラウンという女刑事?
 →実は探偵事務所に所属、女優。以下すべて同一人物
 イーラ・アウリケ:リュスと契約=エルヴィラ・モンド(女優):ナイルブルーの目、ハニー・ブロンド
 ショールの貴婦人:広場にいるおばあさん
 ハナ夫人:女主人の知り合い。
 エトナ夫人:ハナ夫人の義母。
ダナエ・ルーター:ドラッグストアのアルバイト。母親は不倫、父親は男好きかも、弟は摂食障害。
 →ルゥルゥ:若者に人気のモデル。
ミロル:真珠色の髪の少年。
ニキ氏:アパート2階の住人。三文文筆家。→ニコラ・ルーター、映画監督
ミネルヴァ:?
メダイヨン夫人:地図収集館の常連。→祖母。

トゥランプ・シュガースプーン:イーラの過去を知るという人物 →?

エルネスト:観光ガイド
アークライト:事務局長。妻に先立たれ、娘と暮らす四十男。

ガスパール:ミロルの黒猫。
エクレヤ:アパートの女主人の飼い猫。

ポラーノ兄弟・:海運王。ミロナ地図収集館の創設者
ゲラルドゥス・メルカトル:実用的な地図を制作した
マルコ・ポーロ

【キーワード】
ミロナ:地図制作で栄えた港町

ガーデニアの匂い
黒百合
左手の小指が長い:リュス、エルヴィラ、メルカトル

僕の背中と、あなたの吐息(いき)と

元教師と生徒のカップル。同棲していて、教師は退職してバーテンダーに、生徒はフリーのデザイナー(バーも少し手伝う)。
長年付き合う中で、相手のことを知ったり分からなくなったり、愛し合っていてももどかしさや切なさを感じます。

沢木まひろさんを三作連続で読んだのですが、どの作品も女性キャラが素敵で、本作も光ってました。